杖くんと七歳の魔法使い ~深淵から帰還した少年は、今日もみんなの笑顔を守る~ 作:redhot
トオルが持ち帰ったミスリルで作られた試作車「ミスリル・ドリーム」のスペックが公表された瞬間、世界の自動車産業は凍りついた。
車両重量:従来鋼鉄車の約1/4(約300kg台)
衝突安全性:時速200km正面衝突でも乗員室ほぼ無傷(エアバッグ不要レベル)
燃費:市街地モードで従来車の3.5倍以上(リッター30km超)
耐久性:ミスリルボディのため、経年劣化ほぼゼロ。錆びない、へこまない、壊れない
加速性能:0-100km/h 2.8秒(スーパーカー並み)
価格(試作段階):約8,000万円(高級超高級車クラス)
これらの数値は、物理法則の限界を嘲笑うかのようだった。
従来の自動車工学では「不可能」とされてきた領域が、たった一つの素材で突破されたのだ。
ドイツのメルセデス・ベンツ本社では、技術者たちが試作車のスペックシートを前に呆然としていた。
あるベテランエンジニアが、震える声で呟いた。
「……これが本当なら、我々のSクラスはもう時代遅れだ。
重量が四分の一で、この強度……空力設計すら根本から見直さなければならない」
アメリカのフォードでは、幹部会議が緊急招集された。
CEOがテーブルを叩いて叫ぶ。
「日本にミスリルを輸入しろ!
いくらでも払う!
工場を日本に作ってもいい!
この技術を手に入れられなければ、十年後には市場から消えるぞ!」
イタリアのフェラーリ、ランボルギーニも同様だった。
「ミスリル・ドリーム」の燃費と安全性を前に、スーパーカーのコンセプト自体が揺らぎ始めた。
フランスのプジョー・シトロエン幹部は、ため息をつきながら言った。
「我々は環境規制で苦しんでいるのに……この車は燃費が三倍以上だ。
これが一般化したら、欧州の自動車産業は壊滅するかもしれない」
中国の新興自動車メーカーは、もっと直接的だった。
「日本政府に直談判だ。
ミスリル供給契約を結べなければ、中国市場での販売権を剥奪する」
各国企業は一斉に日本政府へ圧力をかけた。
「ミスリルの輸入を認めてほしい」
「優先供給契約を結びたい」
「技術提携をさせてくれ」
「日本に工場を建設するから、ミスリルを分けろ」
経済産業省は連日、各国大使館からの要請に追われていた。
担当官僚は頭を抱えながら呟く。
「トオルくんが採ってくる量は限られているのに……
これだけ各国が殺到したら、供給が追いつかない」
トオルは、そんな世界の動きを知らずに、基地の食堂でみんなと一緒に食事をしていた。
七歳の少年は、杖くんを抱きしめながら、優しく笑う。
「ミスリルで車ができたんだって?
みんなが、安全に運転できるなら……嬉しいね」
煉獄杏寿郎が大声で笑い、
「うむ! お前のミスリルが、世界の道を変えてるぞ!
事故が減って、みんなが笑顔になるんだ!」
胡蝶しのぶが優雅に微笑み、
「ふふ……各国が『もっとくれ』って騒いでるんですのよ。
トオルくん、あなたはもう世界の中心ですわ」
胡蝶カナエが穏やかに頷き、
「あらあら、ミスリル・ドリーム……素敵な名前ね。
トオルくんの優しさが、形になったのよ」
炭治郎が静かに、
「トオルくん……ありがとう。
これで、家族が車で出かけるのも、もっと安心できるよ」
トオルはみんなの笑顔を見て、胸が温かくなった。
「うん……僕、もっと採ってくるよ。
みんなが、もっと幸せになるように」
杖くんが耳元で優しく囁いた。
『トオルちゃん……あなたの優しさが、世界の道を変えてるわ。
ミスリルが、みんなの笑顔を運ぶんだよ』
基地の外では、秋の風が吹いていた。
ガンダムとザクが丘の上に立ち、犬型ゴーレムたちが山を守り、エルフの戦士たちが訓練を続ける。
ミスリル・ドリームの試作車は、テストコースを静かに走り続けていた。
その軽やかで、安全な走りは、世界を変える第二の波を起こそうとしていた。
人類史上最大の魔法使いは、七歳の心で、夢の自動車を、現実の希望に変え続けていた。
霧の港町は、少年の優しさと、鋼の奇跡に包まれながら、輝き続けていた。