杖くんと七歳の魔法使い ~深淵から帰還した少年は、今日もみんなの笑顔を守る~   作:redhot

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杖くんと陰陽の限界と皇室の祈り

天皇は静かに目を閉じ、宮内庁の側近に穏やかだが重い声で尋ねた。

「天社土御門神道本庁に、佐藤トオル君への協力が可能か、問い合わせてくれぬか。

陰陽道の術で、何か支援できることはないだろうか……」

側近は深く頭を下げ、すぐに連絡を取った。

数日後、土御門神道本庁の管長が皇居に参内した。

管長は白髪を束ね、黒い法衣に身を包み、厳粛な表情で天皇の前に進み出た。

「陛下のご心遣い、痛み入ります。

しかし……申し上げにくいことながら、ダンジョンの深淵は、陰陽道の知識では戦う術がございません」

天皇は静かに目を上げた。

「かつての安倍晴明や蘆屋道満ならば……?」

管長は深く頭を下げ、言葉を続けた。

「はい。もし彼らが現代にいたならば、あるいは……

十二神将を従え、十二天将の力を借り、式神の大軍を繰り出せば、三十階程度までは対処できたやもしれません。

ですが、今の陰陽道には、そこまでの力は残っておりません」

管長はさらに言葉を重ねた。

声は静かだが、悔しさが滲んでいた。

「ダンジョンにいるゴブリンシャーマンの火球一つとて、人類の術では対抗するのが難しいのです。

陛下、火球はトオル君にとっては初級魔法と申しておりましたが……それは彼が規格外なだけです。

人類が魔法という技術を失い、科学を手に入れた今、火球レベルの術を使える術者は、世界に百人もおりません。

中世の時代でも、百を超えることはなかったと存じます」

天皇はゆっくりと頷いた。

「裏高野や、他の退魔組織でも……難しいか」

管長は苦しげに顔を伏せた。

「はい。

役小角の前鬼・後鬼、晴明の十二神将……歴史に名を遺す術師ならば、何かしらの解決策はあったやもしれません。

しかし現代では、呪術は衰退していくばかりです。

元々が扱える存在が極めて限られた技術であったため、技術も散逸し、継承も途絶えがちです。

平安の全盛期ならばまだしも……今は、陰陽道の名を借りた儀式が精一杯でございます」

天皇は静かに目を閉じた。

しばらくの沈黙の後、穏やかだが力強い声で言った。

「そうか……。

ならば、トオル君に頼るしかないのだな。

彼はまだ八歳の子どもなのに……」

管長は深く頭を下げた。

「陛下のお気持ち、痛み入ります。

私どもも、陰陽道の術で少しでもお役に立てるよう、祈りを捧げることしかできません。

トオル君が無事に帰ってくることを……日々、祈っております」

天皇は静かに頷き、窓の外の庭を見つめた。

「あの子の笑顔が、守られるように……」

管長が退出した後、天皇は側近に静かに命じた。

「トオル君の活動を、可能な限り支えるよう、政府に伝えてくれ。

彼が一人で戦っていることに、心を痛めていると……」

側近は深く頭を下げ、退出した。

皇居の庭では、秋の風が静かに吹いていた。

天皇は、遠く北海道の少年を想いながら、ただ祈るしかなかった。

トオルは、そんな天皇の想いを知らずに、基地の食堂でみんなと一緒に食事をしていた。

七歳の少年は、杖くんを抱きしめながら、優しく笑う。

「みんな、元気だね……僕、もっとがんばるよ」

杖くんが耳元で優しく囁いた。

『トオルちゃん……天皇陛下も、あなたのことを想ってくださってるわ。

あなたの優しさが、皇室まで届いてるのよ』

基地の外では、秋の風が吹き続けていた。

ガンダムとザクが丘の上に立ち、犬型ゴーレムたちが山を守り、エルフの戦士たちが訓練を続ける。

陰陽道の管長は、帰路につきながら、静かに呟いた。

「トオル君……どうか、無事で……」

人類史上最大の魔法使いは、七歳の心で、日本という国の祈りを、静かに背負い続けていた。

霧の港町は、少年の光と、皇室の静かな想いに包まれながら、輝き続けていた。

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