杖くんと七歳の魔法使い ~深淵から帰還した少年は、今日もみんなの笑顔を守る~   作:redhot

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杖くんと竜の遺産

岩内自衛隊基地の地下格納庫は、連日のように世界中の視線を集めていた。

トオルが倒した老竜、壮年竜、成竜の遺体は、基本的に政府や自動車産業に卸されることになっていた。

鱗はミスリルに匹敵する強度と軽量性を持ち、骨はさらに硬く加工性に優れ、血や臓器に至るまで捨てる所が一切ない。

研究対象としても極めて貴重で、日本国内の大学や研究所はもちろん、アメリカのGMやボーイング、ヨーロッパのメルセデス・ベンツやエアバス、ソ連の軍需企業、中国の新興自動車メーカーまでもが、直接買い付けに訪れるほどだった。

ある日、格納庫にアメリカの自動車大手フォードの幹部がやってきた。

彼は老竜の鱗を手に取り、震える声で言った。

「これをボディに使えば……重量が四分の一で、強度は五十倍以上。

夢の軽量高強度車が、現実になる」

ヨーロッパの企業も、次々と代表を送り込んできた。

「ミスリルに次ぐ新素材だ。

一刻も早く供給契約を結びたい」

トオルは、そんな動きを知らずに、基地の食堂でみんなと一緒に食事をしていた。

七歳の少年は、杖くんを抱きしめながら、ぽつりと呟いた。

「僕、肉は安く卸したかったんだけど……他の畜産が衰退するって言われて、高級食材になっちゃったんだね」

煉獄杏寿郎が大声で笑い、

「うむ! お前の気持ちはわかるぞ!

だが、あの肉の美味しさは、普通の牛や豚じゃ太刀打ちできん。

高くても、みんなが争って買うんだから仕方ない!」

胡蝶しのぶが優雅に微笑み、

「ふふ……あばれうしどりや軍隊ガニも同じですわね。

トオルくんが安くしたいと思う優しさが、逆に価値を高めているんですのよ」

胡蝶カナエが穏やかに頷き、

「あらあら、血や臓器も、メフィストさんとトオルくんで薬に精製してるわよね。

あの薬も、世界の製薬会社が買い取りたくて仕方ないって聞いてるわ」

炭治郎が静かに、

「トオルくん……お前の肉や薬が、世界中の人を救ってるよ。

高くても、安くても、みんなが喜んでる」

トオルは少し寂しげに笑った。

「うん……僕、ただ、みんなが美味しく食べられればいいのに……」

老竜の血と臓器は、トオルとメフィストが共同で薬に精製していた。

癌治療薬、難病の再生促進剤、即効性の止血剤……どれもが、現代医学では再現不可能な効果を発揮する。

世界の製薬会社が、次々と買い取りを申し入れ、研究を進めていた。

トオルは、そんな世界の動きを知らずに、ただ「みんなが元気になってほしい」と、毎日ダンジョンを駆けていた。

杖くんが耳元で優しく囁いた。

『トオルちゃん……あなたの優しさが、世界の産業と医療を変えてるわ。

高くても、安くても、あなたの心は変わらない。それが一番素敵よ』

基地の外では、雪解けの風が吹き始めていた。

ガンダムとザクが丘の上に立ち、犬型ゴーレムたちが山を守り、エルフの戦士たちが訓練を続ける。

老竜の遺産は、世界中の企業と研究者を動かし続けていた。

人類史上最大の魔法使いは、七歳の心で、深淵の宝物を、ただ「みんなの為に」と届け続けていた。

霧の港町は、少年の優しさと、竜の遺産に包まれながら、輝き続けていた。

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