杖くんと七歳の魔法使い ~深淵から帰還した少年は、今日もみんなの笑顔を守る~ 作:redhot
基地の地下実験室は、雪の降る外の寒さを忘れるほど、淡い光と魔力の残響に満ちていた。
トオルは十二天将の少女たちに囲まれ、目を輝かせて座っていた。
黒髪の少女(子・青龍)が、静かに古い巻物を広げる。
金髪の少女(丑・白虎)が、穏やかに説明を始める。
「トオル様……安倍晴明様が使われていた陰陽術です。
式神の召喚、方術、護符、占術……すべてをお教えします」
トオルは杖くんを膝に置き、大きく頷いた。
「うん……教えてください!
僕の魔法とは違う系統の技術……すごく興味があります!」
十二天将は、互いに顔を見合わせた。
安倍晴明から「稀代の天才」と聞いていた彼女たちだが、トオルの吸収力は予想を遥かに超えていた。
最初は基本の陰陽五行から。
トオルは一言で理解し、すぐに模倣した。
次に方術。
さらに護符の作成。
占術の応用……。
わずか数日で、トオルは陰陽術を自分の魔法に織り交ぜ始めた。
ある夜、実験室でトオルは両手を広げた。
掌から青白い光が溢れ、陰陽の陣が浮かび上がる。
「これ……晴明さんの術と、僕の召喚魔法を組み合わせたら……」
光が爆ぜ、十二天将の強化版式神が現れた。
より強力で、トオルの意志に忠実な存在たち。
十二天将の少女たちは、息を飲んだ。
「これは……!」
黒髪の少女が、震える声で言った。
「安倍晴明様から稀代の天才と聞いていましたが……これほどとは。
わずか数日で、陰陽術を自身の魔法に発展させるなんて……」
金髪の少女も、目を細めて微笑んだ。
「トオル様……あなたは、本当に特別です。
私たちも、驚きを隠せません」
トオルは少し照れくさそうに笑った。
「みんなが教えてくれたおかげだよ。
これで、もっとみんなを守れるよね」
十二天将の少女たちは、静かに頭を下げた。
「はい……トオル様。
私たちは、あなたの力になります」
その後、トオルは学んだ陰陽術を一冊の本にまとめた。
タイトルは『陰陽魔法集成』。
トオルの字で丁寧に書かれ、図解も少年らしい柔らかなタッチで描かれている。
内容には、既に失われたはずの技術――安倍晴明の秘伝、式神の高度な制御法、陰陽の融合術――が大量に記されていた。
この本は、すぐに皇室、自衛隊、日本政府に渡された。
天社土御門神道本庁の管長は、本を受け取り、震える手でページをめくった。
「……これは……既に遺失した技術ばかり。
陰陽道の奥義が、こんな形で蘇るとは……」
皇室では、天皇が本を手に取り、静かに目を細めた。
「トオル君……また、奇跡を起こしてくれたか」
政府は本を極秘に研究し、陰陽術の応用を検討し始めた。
自衛隊も、トオルの魔法と陰陽術の融合を訓練に取り入れ始めた。
トオルは、実験室で杖くんを抱きしめながら、優しく笑った。
「みんなの役に立てたらいいな……」
杖くんが耳元で囁いた。
『トオルちゃん……あなたは、失われた技術すら蘇らせるわ。
陰陽道の管長さんも、きっと感謝してる』
基地の外では、雪が静かに降り続いていた。
ガンダムとザクが広場に立ち、犬型ゴーレムたちが山を守り、エルフの戦士たちが訓練を続ける。
トオルは、陰陽術を自分の力に変えながら、ただ「みんなを守りたい」と願い続けていた。
人類史上最大の魔法使いは、七歳の心で、失われた技術を、静かに蘇らせ続けていた。
霧の港町は、少年の光と、古の術の残響に包まれながら、輝き続けていた。