杖くんと七歳の魔法使い ~深淵から帰還した少年は、今日もみんなの笑顔を守る~   作:redhot

117 / 241
杖くんと七十二の魔神

基地の地下実験室は、いつもより静かで、淡い魔力の光が漂っていた。

トオルは杖くんを膝に置き、机の前に座っていた。

そこに、いつの間にか現れていたのは――ソロモンの七十二の魔神たちだった。

害意も悪意も一切ない。

だから、トオルと杖くんが張った「害意排除の結界」は、一度も発動しなかった。

魔神たちは、静かに、しかし自然にトオルの周囲に集まり、知識を語り始めた。

トオルは目を丸くして、魔神の一人――小さな角を持つ少年のような姿の魔神――に尋ねた。

「みんな……召喚していないのに、どうして人間界に?」

魔神たちは互いに視線を交わし、代表らしい黒いローブの魔神が、穏やかな声で答えた。

「汝の魔力は、悪魔にとって何物にも代えがたい甘露だ。

それを貰えるのなら、知識を与えても損はない。

それに……ダンジョンは、悪魔ですら計り知れない深淵。

汝といれば、その秘密を知れるかもしれない。

魔力と知識欲で協力するのだ。

汝には我々が持つ知識や力を。

我々は魔力と深淵の知識。

悪くない取引だ」

別の魔神が、静かに付け加えた。

「しかも……人間界に勝手に現れる事に煩いルシファーやサタンも、何故か沈黙している。

これは、汝の存在が特別だという証拠だろう」

トオルは少し考えてから、優しく微笑んだ。

「うん……みんなの知識、僕に教えてくれるの?

僕も、みんなに魔力を分けてあげるよ。

ダンジョンの秘密を一緒に知りたい……」

魔神たちは、満足げに頷いた。

その日から、実験室は新たな知識の渦に包まれた。

魔神たちは、古代の秘術、魔界の法則、召喚の極意を次々と語り、トオルはそれを驚くべき速さで吸収していった。

杖くんは、トオルの隣で静かに見守りながら、時折くすくすと笑う。

『トオルちゃん……魔神たちまで、あなたの優しさに惹かれてるわ。

ルシファーやサタンが黙っているなんて……本当に不思議ね』

トオルはノートに書きながら、目を輝かせた。

「みんな、ありがとう。

これで、もっとみんなを守れるよ」

魔神たちは、トオルの純粋な笑顔を見て、静かに頭を下げた。

「汝は……本当に特別だ」

基地の外では、雪が静かに降り続いていた。

ガンダムとザクが広場に立ち、犬型ゴーレムたちが山を守り、エルフの戦士たちが訓練を続ける。

ソロモンの七十二の魔神たちは、トオルの元に集まり、知識を分け合いながら、ダンジョンの深淵を見つめていた。

人類史上最大の魔法使いは、七歳の心で、魔界の叡智すら、静かに取り込み続けていた。

霧の港町は、少年の優しさと、魔神たちの影に包まれながら、輝き続けていた。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。