杖くんと七歳の魔法使い ~深淵から帰還した少年は、今日もみんなの笑顔を守る~ 作:redhot
基地の地下実験室は、いつもより静かで、淡い魔力の光が漂っていた。
トオルは杖くんを膝に置き、机の前に座っていた。
そこに、いつの間にか現れていたのは――ソロモンの七十二の魔神たちだった。
害意も悪意も一切ない。
だから、トオルと杖くんが張った「害意排除の結界」は、一度も発動しなかった。
魔神たちは、静かに、しかし自然にトオルの周囲に集まり、知識を語り始めた。
トオルは目を丸くして、魔神の一人――小さな角を持つ少年のような姿の魔神――に尋ねた。
「みんな……召喚していないのに、どうして人間界に?」
魔神たちは互いに視線を交わし、代表らしい黒いローブの魔神が、穏やかな声で答えた。
「汝の魔力は、悪魔にとって何物にも代えがたい甘露だ。
それを貰えるのなら、知識を与えても損はない。
それに……ダンジョンは、悪魔ですら計り知れない深淵。
汝といれば、その秘密を知れるかもしれない。
魔力と知識欲で協力するのだ。
汝には我々が持つ知識や力を。
我々は魔力と深淵の知識。
悪くない取引だ」
別の魔神が、静かに付け加えた。
「しかも……人間界に勝手に現れる事に煩いルシファーやサタンも、何故か沈黙している。
これは、汝の存在が特別だという証拠だろう」
トオルは少し考えてから、優しく微笑んだ。
「うん……みんなの知識、僕に教えてくれるの?
僕も、みんなに魔力を分けてあげるよ。
ダンジョンの秘密を一緒に知りたい……」
魔神たちは、満足げに頷いた。
その日から、実験室は新たな知識の渦に包まれた。
魔神たちは、古代の秘術、魔界の法則、召喚の極意を次々と語り、トオルはそれを驚くべき速さで吸収していった。
杖くんは、トオルの隣で静かに見守りながら、時折くすくすと笑う。
『トオルちゃん……魔神たちまで、あなたの優しさに惹かれてるわ。
ルシファーやサタンが黙っているなんて……本当に不思議ね』
トオルはノートに書きながら、目を輝かせた。
「みんな、ありがとう。
これで、もっとみんなを守れるよ」
魔神たちは、トオルの純粋な笑顔を見て、静かに頭を下げた。
「汝は……本当に特別だ」
基地の外では、雪が静かに降り続いていた。
ガンダムとザクが広場に立ち、犬型ゴーレムたちが山を守り、エルフの戦士たちが訓練を続ける。
ソロモンの七十二の魔神たちは、トオルの元に集まり、知識を分け合いながら、ダンジョンの深淵を見つめていた。
人類史上最大の魔法使いは、七歳の心で、魔界の叡智すら、静かに取り込み続けていた。
霧の港町は、少年の優しさと、魔神たちの影に包まれながら、輝き続けていた。