杖くんと七歳の魔法使い ~深淵から帰還した少年は、今日もみんなの笑顔を守る~   作:redhot

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杖くんと天皇の願い

国会の衆議院予算委員会は、いつもより重い空気に包まれていた。

与党・自由民主党の幹事長・金丸信が、苦い顔で発言した。

「九歳の子供が、毎日ダンジョンの深淵に潜っている。

これは人道的にも、道義的にも、看過できない問題だ」

野党・日本社会党の委員長・石橋政嗣も、珍しく与党に同調した。

「確かに……正論です。

我々も、子供を戦場に送るような状況は、到底容認できません」

自民党の竹下登も、静かに頷いた。

「しかし……問題は、そこだ。

自衛隊の精鋭をもってしても、三十階が現在の限界。

それ以上は、トオル君しか探索できない。

ダンジョンのモンスターは、それほどまでに強大だ。

今、日本に選挙をしている暇はない。

目の前に脅威が蠢いている。

政治的空白を作る余裕すらない」

社会党の土井たか子も、声を低くした。

「政権交代を狙う暇など、ありません。

我々も、ダンジョン対策の具体的な政策を急がなければ……」

国会は、与野党問わず、トオルの存在を「必要悪」として認めざるを得ない状況にあった。

誰もが内心で胸を痛めながらも、現実を直視するしかなかった。

そんな中、宮内庁から政府に極秘の要請が届いた。

天皇陛下が、北海道岩内を訪問し、トオルを慰問したいというものだった。

総理大臣・中曽根康弘は、官邸で側近たちと顔をしかめた。

「陛下が……直接、トオル君に会いたいと?」

宮内庁長官が、慎重に答えた。

「はい。

護衛や警護は一切不要。

第一に、トオル君の邪魔をしないこと。

それが陛下のご意向です」

中曽根は、しばらく沈黙した後、静かに頷いた。

「陛下のお気持ちは、痛いほどわかる。

しかし……基地の警備体制を考えると……」

自民党の安倍晋太郎が、珍しく強い口調で言った。

「総理。

陛下のご意志を、軽んじてはなりません。

トオル君は、もう日本の宝です。

陛下が直接、労いたいとおっしゃるなら、我々は最大限の配慮をすべきです」

野党の社会党・村山富市も、静かに同意した。

「与野党を超えて、陛下のご意向を尊重すべきでしょう。

トオル君は、九歳の子供です。

政治がどうであれ、陛下の温かい言葉は、きっと彼の心の支えになるはずです」

結局、政府は天皇の訪問を極秘裏に準備することになった。

日程は、トオルの探索スケジュールに一切影響を与えないよう、細心の注意を払って調整された。

トオルは、そんな動きを知らずに、基地の食堂でみんなと一緒に食事をしていた。

九歳になった少年は、杖くんを抱きしめながら、優しく笑う。

「みんな、元気だね……僕、もっとがんばるよ」

煉獄杏寿郎が大声で笑い、

「うむ! トオル、お前はもう日本の希望だぞ!」

胡蝶しのぶが優雅に微笑み、

「ふふ……国会でも、あなたのことが話題になっているんですのよ。

でも、みんなあなたのことを心配しているんですわ」

胡蝶カナエが穏やかに頷き、

「あらあら、天皇陛下も、あなたに会いたいとおっしゃっているみたい。

嬉しいわね」

トオルは少し驚いた顔で、

「陛下が……僕に?」

炭治郎が静かに、

「トオルくん……あなたは、もう一人じゃないよ」

杖くんが耳元で優しく囁いた。

『トオルちゃん……日本中の人が、あなたのことを想ってるわ。

天皇陛下も、きっと温かい言葉をかけてくださる』

基地の外では、夏の風が吹いていた。

ガンダムとザクが丘の上に立ち、犬型ゴーレムたちが山を守り、エルフの戦士たちが訓練を続ける。

天皇の訪問は、まだ極秘のまま進められていた。

九歳の少年は、知らぬ間に、日本という国の最も高い祈りに包まれようとしていた。

人類史上最大の魔法使いは、九歳の心で、世界の重圧と優しさを、静かに受け止め続けていた。

霧の港町は、少年の光と、遠い皇居の想いに包まれながら、輝き続けていた。

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