杖くんと七歳の魔法使い ~深淵から帰還した少年は、今日もみんなの笑顔を守る~   作:redhot

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杖くんと消えた影

岩内町の銀行支店は、毎週のように億単位の入金通知に頭を抱えていた。

トオルがダンジョンから持ち帰る素材と食材の対価は、もはや地元の小さな銀行では処理しきれないほどの巨額になっていた。

地元のヤクザ組織が、かつてのように「場所代」や「保護料」を要求してくるはずだった時代は、とうに終わっていた。

相手は自衛隊と日本政府。

恐喝するにしても、相手が悪すぎる。

ならトオルの家族を標的にしようとした者もいた。

しかし、佐藤家の周囲には常に警察と自衛隊の護衛がついていた。

武闘派で知られるヤクザであっても、銃火器と特殊部隊を相手に勝てるはずがなかった。

商店や飲食店に「みかじめ料」を請求しようとしても、

「トオルくんの町だ。手を出せば自衛隊が来るぞ」

という噂が瞬く間に広がり、誰も近づかなくなった。

結果、トオルの町からヤクザの影は完全に消えた。

裏では、日本政府が全国の大中小を問わず、すべての暴力団組織に一通の手紙を送っていた。

内容は極めて簡潔だった。

「佐藤トオルに手を出そうとしたら、自衛隊を派遣する。

この言葉の意味は理解できるな?

こちらは本気だ。」

手紙は、風組の組長宛にも、

月輪会の宮本会長宛にも、

関西天豪会の城光組組長宛にも、

関東無双山一家の鷹十組本部長宛にも、

そして関東最大の広域指定暴力団・東城会の会長代行宛にも、

極秘ルートで確実に届けられた。

風組の組長は手紙を読み終えると、苦笑しながら部下に言った。

「自衛隊を相手に喧嘩売る気はねえよ……

金の卵を産む鳥を殺す馬鹿は、いねえ」

月輪会の宮本会長は、手紙を燃やしながら静かに呟いた。

「ロケマサみたいな馬鹿でも、こんな相手には手を出さねえな……」

関西天豪会の幹部たちは、会議室で顔を見合わせ、ただ黙って頷いた。

関東無双山一家の速水本部長は、手紙を睨みながら煙草をふかした。

「東城会も同じだ。

桐生の親父さんなら、絶対に手を出さねえよ」

東城会の会長代行は、手紙を丁寧に封筒に戻し、部下に命じた。

「トオル・サトウの名前は、一切口にするな。

関東の縄張りから、岩内関連の話はすべて消せ」

こうして、トオルの町からヤクザは完全に姿を消した。

トオルは、そんな裏の動きなど知らずに、基地の食堂でみんなと一緒に食事をしていた。

九歳の少年は、杖くんを抱きしめながら、優しく笑う。

「みんな、元気だね……僕、もっと採ってくるよ」

胡蝶しのぶが優雅に微笑み、

「ふふ……トオルくん、あなたの存在が、町の治安まで変えてしまったんですのね」

胡蝶カナエが穏やかに頷き、

「あらあら、ヤクザさんたちも、さすがに自衛隊相手には手を出せないわよね」

炭治郎が静かに、

「トオルくん……お前のおかげで、みんな安心して暮らせるよ」

トオルは少し首を傾げた。

「え? 何かあったの?」

煉獄杏寿郎が大声で笑い、

「うむ! 何もなかったからこそ、平和だ!

お前はただ、笑顔でいればいい!」

杖くんが耳元で優しく囁いた。

『トオルちゃん……あなたの優しさが、町から悪い影を全部追い払ったわ。

金の卵を産む鳥を、誰も殺せないのよ』

基地の外では、夏の風が吹いていた。

ガンダムとザクが丘の上に立ち、犬型ゴーレムたちが山を守り、エルフの戦士たちが訓練を続ける。

トオルの町は、少年の存在一つで、ヤクザの影すら寄せ付けない平和な場所になっていた。

人類史上最大の魔法使いは、九歳の心で、世界の欲望を、静かに遠ざけ続けていた。

霧の港町は、少年の優しさと、守られた平和に包まれながら、輝き続けていた。

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