杖くんと七歳の魔法使い ~深淵から帰還した少年は、今日もみんなの笑顔を守る~   作:redhot

132 / 241
杖くんと深淵の食卓

夏の岩内自衛隊基地は、トオルが探索から帰還するたびに、まるで小さな祭りのような賑わいを見せていた。

九歳になった少年は、収納魔法から次々と不思議な食材を取り出し、みんなの前に並べる。

そのたび、基地の食堂は驚嘆と笑顔に包まれた。

「今日も、すごいものがたくさん……」

トオルは杖くんを抱きしめながら、照れくさそうに笑った。

まず取り出したのは、100階以降の採掘場で発見した「餅石」だった。

表面は石のように固いが、割ってみると中は真っ白で、もちもちとした食感。

きなこをまぶした「きなこ餅石」、あんこが入った「餡子餅石」、ごま味の「ごま餅石」……種類は豊富で、冷蔵庫に入れておくと数日間、焼きたての柔らかさを保つ。

胡蝶しのぶが一口食べて、目を細めた。

「ふふ……本当にもちそのもの。

トオルくん、これだけでおやつがいくらでも作れますわね」

次は20階以降の草原階層で採れた「ベーコンの葉」。

葉の形は普通の草だが、噛むと高い脂肪分と適度な塩分が広がり、そのままでも立派なベーコン。

トーストに挟めば朝食の定番になった。

「これ、焼かなくても美味しい……!」

炭治郎が驚きの声を上げ、みんなが頷いた。

さらに「バナナきゅうり」。

房になって育つ瓜科の植物で、一房に十数本。

バナナのように甘く、しかし食感はきゅうりに近く、栄養価も通常のきゅうりの数倍。

子供たちに大人気だった。

「甘くてシャキシャキ!」

みゆきのような声が、基地の子供食堂から聞こえてきた。

「サーロインキノコ」は、肉厚で焼くとサーロインステーキそのものの味と香り。

「チーズラビット」は全長180cmの巨大な兎で、肉がチーズのように濃厚で伸びる。

「酒ヤシの実」は割ると中から甘いお酒が溢れ、度数はかなり高いため、大人だけが楽しむ特別なデザートになった。

50階以降の「フライヤダック」は、骨まで柔らかく揚げて食べられ、捨てる所のない完璧な食材。

海の階層で採れる「ホネナシサンマ」は、骨が一切なく、脂がのった身を頭から丸ごと食べられる至高の魚。

トオルが持ち帰るたび、食堂は歓声に包まれた。

そしてトオルが新たに発見した「ダンジョン米」と「ダンジョン小麦」。

これは彼のオリジナル発見で、荒れた土地ほどよく育ち、味も食感も普通の米や小麦と全く同じ。

基地の空き地に少し植えただけで、すぐに実り、食糧自給の可能性を示した。

煉獄杏寿郎が、サーロインキノコのステーキを頰張りながら大声で笑った。

「うむ! トオル、お前の探索は毎日がごちそうだぞ!

これで基地の飯が、世界一美味しくなった!」

胡蝶カナエが穏やかに微笑み、

「あらあら、チーズラビットもホネナシサンマも、こんなに美味しいなんて……

トオルくん、ありがとうね」

トオルはみんなの笑顔を見て、胸がいっぱいになった。

「みんなが喜んでくれるなら……僕、もっと探してくるよ。

ダンジョンには、まだまだ不思議なものがたくさんあるんだ」

杖くんが耳元で優しく囁いた。

『トオルちゃん……あなたが持ち帰る一つ一つの食材が、みんなの笑顔を作ってるわ。

深淵の食卓は、あなたの優しさでいっぱいね』

基地の外では、夏の風が吹いていた。

ガンダムとザクが丘の上に立ち、犬型ゴーレムたちが山を守り、エルフの戦士たちが訓練を続ける。

トオルは、毎日変わるダンジョンの恵みを、ただ「みんなの為に」と持ち帰り続けていた。

人類史上最大の魔法使いは、九歳の心で、深淵の味覚を、静かに地上へ届け続けていた。

霧の港町は、少年の優しさと、不思議な食卓の香りに包まれながら、輝き続けていた

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。