杖くんと七歳の魔法使い ~深淵から帰還した少年は、今日もみんなの笑顔を守る~   作:redhot

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杖くんと深淵の恵み

岩内自衛隊基地の食堂は、いつものようにトオルが持ち帰った新鮮な食材で賑わっていた。

しかし、最近発見された食材たちは、どれもが一筋縄ではいかないものばかりだった。

まず、トオルが100階以降の採掘場で持ち帰った「餅石」。

石のように固い外見だが、割ると中は真っ白で、焼くと本物のもちのように伸びる。

きなこ餅石、餡子餅石、ごま餅石……種類も豊富で、高級和菓子店や料亭から「ぜひ使わせてほしい」と注文が殺到した。

次に20階以降の草原階層で採れた「ベーコンの葉」と「バナナきゅうり」。

ベーコンの葉はそのまま食べても脂がのって塩味が効いており、高級ホテルでは朝食の目玉メニューに。

バナナきゅうりは甘さとシャキシャキ感が絶妙で、子供向けの高級デザートとして人気を博した。

「サーロインキノコ」は、焼くと本物のサーロインステーキの味と香りがする希少キノコとして、一流フレンチレストランで「幻のキノコ」と呼ばれた。

そして最大の話題となったのが「チーズラビット」と「フライヤダック」だった。

チーズラビットは全長180cmの巨大な兎で、肉がチーズのように濃厚で伸びる。

しかし逃げ足が異常に速く、滅多に巣穴から出てこないため、トオルが捕獲した数頭分しか市場に出回らず、希少価値が跳ね上がった。

中華料理店や西洋料理のシェフたちが「ぜひ使いたい」と争奪戦を繰り広げ、一頭の値段は当時の高級車一台分に匹敵するほどになった。

フライヤダックは全長5mもの巨鳥で、骨まで柔らかく揚げて食べられる完璧な食材。

中華料理では丸ごと揚げて「北京ダック」の進化版として、西洋料理ではローストやシチューに。

レストラン同士の取り合いが激しく、予約が数ヶ月先まで埋まる事態となった。

さらに、トオルが新たに発見した「ダンジョン米」と「ダンジョン小麦」は、特別な存在だった。

見た目は普通の稲穂と小麦だが、荒廃した土地ほどよく育ち、味も食感も通常の米や小麦と全く同じ。

政府は早速、九州や東北の荒廃した農地で実験栽培を開始した。

結果は劇的で、わずか数ヶ月で豊かな実りを見せ、食糧自給率向上の希望として注目を集めた。

トオルは食堂で、みんなが喜ぶ姿を見て優しく微笑んだ。

「みんなが美味しいって言ってくれると、僕も嬉しいよ。

ダンジョンには、まだまだ不思議なものがたくさんあるんだ」

煉獄杏寿郎が大きな声で笑いながら、チーズラビットの肉を頰張った。

「うむ! このチーズのような肉は最高だぞ!

フライヤダックも骨まで食べられるなんて、素晴らしい!」

胡蝶しのぶが優雅に微笑み、

「ふふ……サーロインキノコもベーコンの葉も、どれも高級品ですわね。

トオルくん、あなたの探索が、日本中の食卓を変えていますのよ」

胡蝶カナエが穏やかに頷き、

「あらあら、ダンジョン米とダンジョン小麦は、荒れた土地を豊かにしてくれるんですって。

これから日本中の農地が蘇るかもしれないわね」

炭治郎が静かに、

「トオルくん……お前のおかげで、みんなが美味しいものを食べられる。

本当にありがとう」

トオルは少し照れくさそうに笑った。

「うん……僕、もっと探してくるよ。

みんなが笑顔になれるように」

杖くんが耳元で優しく囁いた。

『トオルちゃん……あなたが持ち帰る一つ一つの食材が、高級品として扱われて、世界を変えてるわ。

でも、あなたはただ「みんなが美味しいって言ってくれる」だけで満足なのね。それが一番素敵よ』

基地の外では、夏の風が吹き、ダンジョン米の試験田では緑の穂が揺れ始めていた。

トオルが発見した不思議な食材たちは、高級食品として日本中、そして世界中に広がりつつあった。

人類史上最大の魔法使いは、九歳の心で、深淵の恵みを、静かに地上へ届け続けていた。

霧の港町は、少年の優しさと、豊かな食卓の香りに包まれながら、輝き続けていた

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