杖くんと七歳の魔法使い ~深淵から帰還した少年は、今日もみんなの笑顔を守る~   作:redhot

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杖くんと妖精王の贈り物

岩内自衛隊基地の地下実験室は、妖精の淡い光と古い魔力の残響に満ちていた。

オベロンとティターニアは、トオルの前に跪いたまま、ゆっくりと顔を上げた。

妖精王オベロンは、金色の髪を優しく揺らし、穏やかでありながら威厳のある声で言った。

「我が主、トオルよ。

あなたに、妖精の国にいる凄腕のドワーフを紹介したい」

ティターニアが、銀色の髪を月光のように流しながら、優しく続けた。

「北欧神話に伝わる魔剣ティルフィングを鍛えた、伝説のドワーフたちです。

かの者たちなら、あなたの力となるでしょう。

もちろん、剣に呪いを施さないよう、しっかりと命じておきます。

そこは、どうかご安心を」

トオルは目を丸くして、杖くんを抱きしめたまま聞いた。

「ティルフィング……?

あの、すごく強い剣を作ったドワーフさんたち?

僕に、会ってくれるの?」

オベロンが、静かに微笑んだ。

「ええ。

あなたが妖精の王と女王に認められた今、彼らも喜んであなたに仕えるはずです。

彼らの鍛える剣は、ただの武器ではない。

主の心を映し、守るための刃となるでしょう」

ティターニアが、優しく付け加えた。

「呪いの部分は、私たちが厳しく禁じます。

あなたのような純粋な心を持つ主に、呪われた剣など相応しくありませんから」

トオルは、少し考えてから、にっこりと笑った。

「うん……ありがとう、オベロンさん、ティターニアさん。

ドワーフさんたちに会えるの、楽しみだよ。

僕の力になってくれるなら、嬉しいな。

みんなを守るために、いい剣が作れたらいいね」

杖くんが、トオルの肩に手を置き、くすくすと笑った。

『ふふ、トオルちゃん……妖精王自らが、伝説のドワーフを紹介してくれるなんて。

あなたは本当に、特別な存在になったのね。

ティルフィングを鍛えたドワーフたち……あの時代でも最高峰の職人たちよ。

きっと、素晴らしい剣を作ってくれるわ』

オベロンが、優雅に立ち上がり、右手を胸に当てた。

「では、近いうちに彼らを呼びましょう。

我が主の元へ、妖精の国より招待いたします」

ティターニアも立ち上がり、優しく頭を下げた。

「どうか、彼らの技を、あなたの優しさと共に、世界を守る力に変えてください」

その瞬間、部屋の空気がふわりと甘く香り、妖精の光が一層強く輝いた。

スプリガン、ピクシー、ティンカーベルたちも、静かに喜びの光を放っていた。

トオルは、みんなの温かさに包まれながら、杖くんをぎゅっと抱きしめた。

「うん……僕、がんばるよ。

ドワーフさんたちと一緒に、みんなを守る剣を作りたい」

杖くんが耳元で優しく囁いた。

『トオルちゃん……妖精の王と女王が、あなたのためにここまでしてくれる。

これは、本当に光栄なことよ。

これからも、あなたの純粋な心が、たくさんの仲間を呼び寄せるわ』

実験室の光は、ゆっくりと収まっていった。

しかし、トオルの周囲に集う精霊と妖精の数は、さらに増えていた。

九歳の少年は、妖精王の贈り物を胸に、静かに、しかし確かに、新たな力を迎え入れようとしていた。

人類史上最大の魔法使いは、妖精の誓約と、伝説のドワーフの技を、優しい心で繋ぎ始めていた。

霧の港町は、少年の光と、妖精の古い約束に包まれながら、輝き続けていた。

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