杖くんと七歳の魔法使い ~深淵から帰還した少年は、今日もみんなの笑顔を守る~ 作:redhot
東京・永田町の官邸地下会議室は、重い静けさと興奮が混じり合った空気に包まれていた。
中曽根康弘総理大臣が、報告書を手に取りながら、ゆっくりと口を開いた。
「エルフの次は……ドワーフか」
防衛庁長官が、深く息を吐いた。
「はい。
妖精王オベロンと妖精女王ティターニアが推挙した、伝説のドワーフ鍛冶師たちが、トオル君のために剣を鍛えているそうです。
ミスリルとオリハルコンを素材に、トオル君専用の剣を……」
外務大臣・安倍晋太郎が、苦笑を浮かべながら言った。
「科学の時代に、何故か神話の時代も訪れたようだな。
エルフが地上に暮らし、ドワーフが剣を打つ……
まるでファンタジー小説の世界だ」
文部大臣が、資料をめくりながら呟いた。
「しかも、トオルの結界に排除されていないということは……
彼らに悪意や害意は一切ないのでしょう。
むしろ、トオル君の純粋な心に惹かれて、自ら仕えることを望んでいるようです」
総理は、窓の外の夜景を見つめながら、静かに言った。
「新しい時代が来ているのかもしれない。
人間だけではない、多様な種族が共存する時代……
トオル君は、その象徴なのかもしれん」
会議室に、短い沈黙が落ちた。
一方、各国の諜報員たちも、岩内基地に潜入した者たちから届いた情報を、本国に慌ただしく報告していた。
アメリカCIAの報告書にはこう書かれていた。
「妖精王オベロンおよび妖精女王ティターニアが、トオル・サトウに忠誠を誓った模様。
さらに、北欧神話に登場するドワーフ鍛冶師集団が基地内に到着し、ミスリルおよびオリハルコンを用いた専用剣の製作を開始。
トオルの魔力結界は一切反応せず、悪意の不存在を確認。」
ソ連KGBは、より簡潔に報告した。
「エルフに続きドワーフがトオルに協力。
神話的存在の現実化を確認。
日本政府の影響力拡大の可能性大。」
イギリスMI6の報告書には、こう記されていた。
「トオル・サトウの周囲に集う存在が、さらに増大。
妖精王・女王およびドワーフ鍛冶師の存在は、既存の諜報網では予測不能。
トオルの影響力は、国家を超えた領域に達しつつある。」
中国の情報機関も、似たような内容を本国に送っていた。
「神話の種族が現実に出現し、トオル・サトウに忠誠を誓う。
これは、単なる個人の力ではなく、新たな時代秩序の萌芽である可能性あり。」
岩内基地では、そんな世界の動きを知らずに、トオルがいつものように食堂でみんなと食事をしていた。
九歳の少年は、杖くんを抱きしめながら、優しく笑う。
「ドワーフさんたちが、僕のために剣を作ってくれるんだって……
楽しみだな」
煉獄杏寿郎が大声で笑い、
「うむ! 妖精の王と女王が推挙したドワーフだぞ!
きっと、すごい剣ができるに違いない!」
胡蝶しのぶが優雅に微笑み、
「ふふ……神話の時代が、本当に訪れたようですわね。
トオルくん、あなたはもう、伝説の主人公ですわ」
胡蝶カナエが穏やかに頷き、
「あらあら、世界中の国々が、あなたのことを注目しているみたい。
でも、トオルくんは変わらず優しいままでいてね」
トオルは少し照れくさそうに笑った。
「僕、ただ……みんなを守りたいだけだよ」
杖くんが耳元で優しく囁いた。
『トオルちゃん……神話の存在たちが、あなたの元に集まってくる。
これは、あなたの心が呼んだ奇跡よ。
とても、素晴らしいことだわ』
基地の外では、秋の風が吹き始めていた。
ガンダムとザクが丘の上に立ち、犬型ゴーレムたちが山を守り、エルフの戦士たちが訓練を続ける。
ドワーフたちの鉄槌の音は、夜通し響き続け、
新たな伝説の剣が、静かに生まれようとしていた。
人類史上最大の魔法使いは、九歳の心で、神話の時代を、優しく迎え入れていた。
霧の港町は、少年の光と、古の鍛冶の響きに包まれながら、輝き続けていた。