杖くんと七歳の魔法使い ~深淵から帰還した少年は、今日もみんなの笑顔を守る~ 作:redhot
岩内自衛隊基地のトオルの寝室は、柔らかな朝日が差し込んでいた。
トオルはベッドの中で、八咫烏の姿をした小さな守護獣に寄り添うように眠っていた。
八咫烏はトオルの胸元に丸くなり、静かに寝息を立てている。
その時、部屋の空気がふわりと揺れた。
天目一箇神が鍛え上げた護符が、淡い金色の光を纏って、音もなくトオルの枕元に現れた。
それは小さな勾玉の形をした美しい護符で、中央に古い神紋が刻まれ、温かな神気が静かに脈打っていた。
八咫烏は薄く目を開けたが、護符に害意がないことを感じ取り、再び目を閉じた。
トオルの結界も、召喚獣たちも、一切反応しなかった。
ただ静かに、その贈り物を受け入れた。
朝が来て、トオルが目を覚ますと、枕元に不思議な輝きがあった。
「ん……?」
九歳の少年は、寝ぼけ眼をこすりながら手を伸ばした。
指先に触れた護符は、温かく、優しい力を感じさせた。
トオルはそれを両手でそっと持ち上げ、じっと見つめた。
「きれい……
誰かが、置いていったのかな?」
ちょうどその時、胡蝶しのぶと胡蝶カナエが朝の挨拶に来た。
二人はトオルの首から下がる新しい護符を見て、目を細めた。
胡蝶しのぶが、優雅に微笑みながら聞いた。
「ふふ……トオルくん、その護符は?
とても綺麗ですわね」
トオルは護符を大切そうに握りしめ、素直に答えた。
「うん……朝起きたら、枕元にあったの。
天目一箇神様がくれたんだと思う。
すごく温かくて、優しい感じがするから……
大切な宝物だよ」
胡蝶カナエが、穏やかに微笑みながら手を伸ばし、トオルの頭を優しく撫でた。
「あらあら……天目一箇神様ね。
トオルくんが大切にしてるの、伝わってくるわ」
その日の午後、トオルが護符を首から下げて基地内を歩いている姿が、自衛隊員たちの目に留まった。
噂はあっという間に広がり、基地を超えて政府関係者にも届いた。
永田町の官邸では、中曽根康弘総理大臣が報告を受け、絶句した。
「……天目一箇神が、直接、護符を?」
安倍晋太郎外務大臣も、目を丸くして言葉を失った。
「神々が……直接、トオル君に贈り物を……
しかも、八咫烏が寝ている間に、結界も召喚獣も反応しなかったというのか?」
防衛庁長官は、汗を拭いながら震える声で言った。
「これは……もう、神話の時代が完全に現実になったということです。
天目一箇神が、トオル君の心を守るために護符を鍛えた……
我々人間の常識では、もう追いつけません」
会議室は、しばらく重い沈黙に包まれた。
一方、トオルは護符を大切そうに胸に当てながら、みんなと一緒に食事をしていた。
「この護符、あったかいよ……
天目一箇神様、ありがとう」
杖くんが耳元で優しく囁いた。
『トオルちゃん……神様が、あなたのことを想って作ってくれたのね。
本当に、光栄なことよ』
胡蝶しのぶが優雅に微笑み、
「ふふ……トオルくん、その護符、とても綺麗ですわ。
大切にしてくださいね」
胡蝶カナエが穏やかに、
「あらあら、神様からの贈り物……トオルくんは本当に特別ね」
トオルは護符を握りしめ、にっこりと笑った。
「うん……僕、大切にするよ。
みんなと一緒に、幸せに暮らせるように……」
基地の外では、秋の風が優しく吹いていた。
天目一箇神の護符は、トオルの小さな胸で静かに輝き続け、
九歳の少年を守る、神々の温かな想いとなっていた。
人類史上最大の魔法使いは、神々の贈り物を胸に、静かに未来へ歩み続けていた。
霧の港町は、少年の光と、神々の遠い祈りに包まれながら、輝き続けていた。