杖くんと七歳の魔法使い ~深淵から帰還した少年は、今日もみんなの笑顔を守る~   作:redhot

143 / 241
杖くんと神剣の誕生

岩内自衛隊基地の特別鍛冶場は、炉の炎が静かに収まった後も、熱気と神々しい光に満ちていた。

ドワーフたちと人間の刀鍛冶たちが、息を詰めて中央の台を見つめていた。

そこに横たわるのは、二本の剣だった。

一振りは銀色の輝きを放ち、もう一振りは淡い金の光を湛える。

二本で一対の姉妹剣。

刃文は星の軌跡のように流れ、柄にはルーンがありったけ刻まれ、鍔には妖精の翼とドワーフの山の紋が融合した美しい意匠が施されている。

あまりに美しく、神々しい姿に、誰もが言葉を失った。

ドワーフの長、バルドゥールが、髭を震わせながら低く呟いた。

「……一生に一本打てるかどうかの傑作だ。

ミスリルとオリハルコン、老竜の骨、妖精の銀糸……すべてを注ぎ込んだ。

これ以上の剣は、もう二度と打てんかもしれん」

人間の刀鍛冶たちも、ただ呆然と立ち尽くすばかりだった。

村正の末裔が、震える声で言った。

「こんな……神々しい剣を、俺たちは見たことがない……」

その時、トオルが静かに鍛冶場に入ってきた。

九歳の少年は、杖くんを抱きしめながら、ゆっくりと二本の剣に近づいた。

トオルは、そっと右の剣に手を伸ばした。

瞬間、剣が応えるように光り輝いた。

銀と金の光が交差し、トオルの小さな手に優しく溶け込むように馴染む。

真の所有者を認めた証だった。

左の剣もまた、同じように輝き、二本が姉妹のように呼応した。

トオルは、目を細めて剣を見つめ、優しく微笑んだ。

「きれい……

僕、この剣を『エウレカ』って名付けるよ。

姉妹剣エウレカ……一緒に、みんなを守ろうね」

その名を聞いた瞬間、二本の剣に宿る精霊が目覚めた。

まだ無垢で純粋な、幼い光の精霊たち。

銀の剣の精霊が、淡い光の姿でトオルの頰にそっとキスをした。

金の剣の精霊も、もう片方の頰に優しく触れた。

まるで祝福するように。

トオルは、くすぐったそうに笑った。

「えへへ……ありがとう」

その瞬間、鍛冶場全体に幻想的な祝福の調べが響き渡った。

妖精たちが楽器を奏で、ピクシーが鈴の音を、ティンカーベルが軽やかな歌を、

スプリガンたちが低く荘厳な調べを、

光と闇、雷と雪の精霊たちがハーモニーを重ねる。

十二天将の少女たちも、静かに手を合わせ、祝福の歌を捧げた。

神剣の誕生を祝う、妖精と精霊たちの幻想的な調べが、自衛隊基地全体に響き渡った。

基地の隊員たちも、思わず足を止め、空を見上げた。

煉獄杏寿郎が、広場で大声を上げた。

「うむ! すごい光と音だ!

トオル、お前の剣が生まれたのだな!」

胡蝶しのぶが、優雅に微笑みながら、

「ふふ……神剣エウレカ……トオルくんの優しさが、こんな美しい剣を生んだんですのね」

トオルは、二本の剣を胸に抱き、みんなの祝福の音に包まれながら、静かに言った。

「エウレカ……一緒に、がんばろうね」

杖くんが、トオルの耳元で優しく囁いた。

『トオルちゃん……神剣が誕生したわ。

あなたのために、妖精とドワーフと精霊が、心を込めて作ってくれたの。

これで、また新しい力が、あなたの味方になったわね』

鍛冶場の光は、ゆっくりと収まっていった。

しかし、トオルの手の中の二本の剣は、静かに、しかし確かに輝き続けていた。

人類史上最大の魔法使いは、九歳の心で、新たな神剣を、優しく受け入れていた。

霧の港町は、少年の光と、神剣の誕生を祝う幻想的な調べに包まれながら、輝き続けていた。




長かった序盤も終わりました。
トオルと杖くん。そしてエウレカ。
この小説を書く時にはこのイメージしかなかったです。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。