杖くんと七歳の魔法使い ~深淵から帰還した少年は、今日もみんなの笑顔を守る~ 作:redhot
岩内自衛隊基地の特別鍛冶場は、炉の炎が静かに収まった後も、熱気と神々しい光に満ちていた。
ドワーフたちと人間の刀鍛冶たちが、息を詰めて中央の台を見つめていた。
そこに横たわるのは、二本の剣だった。
一振りは銀色の輝きを放ち、もう一振りは淡い金の光を湛える。
二本で一対の姉妹剣。
刃文は星の軌跡のように流れ、柄にはルーンがありったけ刻まれ、鍔には妖精の翼とドワーフの山の紋が融合した美しい意匠が施されている。
あまりに美しく、神々しい姿に、誰もが言葉を失った。
ドワーフの長、バルドゥールが、髭を震わせながら低く呟いた。
「……一生に一本打てるかどうかの傑作だ。
ミスリルとオリハルコン、老竜の骨、妖精の銀糸……すべてを注ぎ込んだ。
これ以上の剣は、もう二度と打てんかもしれん」
人間の刀鍛冶たちも、ただ呆然と立ち尽くすばかりだった。
村正の末裔が、震える声で言った。
「こんな……神々しい剣を、俺たちは見たことがない……」
その時、トオルが静かに鍛冶場に入ってきた。
九歳の少年は、杖くんを抱きしめながら、ゆっくりと二本の剣に近づいた。
トオルは、そっと右の剣に手を伸ばした。
瞬間、剣が応えるように光り輝いた。
銀と金の光が交差し、トオルの小さな手に優しく溶け込むように馴染む。
真の所有者を認めた証だった。
左の剣もまた、同じように輝き、二本が姉妹のように呼応した。
トオルは、目を細めて剣を見つめ、優しく微笑んだ。
「きれい……
僕、この剣を『エウレカ』って名付けるよ。
姉妹剣エウレカ……一緒に、みんなを守ろうね」
その名を聞いた瞬間、二本の剣に宿る精霊が目覚めた。
まだ無垢で純粋な、幼い光の精霊たち。
銀の剣の精霊が、淡い光の姿でトオルの頰にそっとキスをした。
金の剣の精霊も、もう片方の頰に優しく触れた。
まるで祝福するように。
トオルは、くすぐったそうに笑った。
「えへへ……ありがとう」
その瞬間、鍛冶場全体に幻想的な祝福の調べが響き渡った。
妖精たちが楽器を奏で、ピクシーが鈴の音を、ティンカーベルが軽やかな歌を、
スプリガンたちが低く荘厳な調べを、
光と闇、雷と雪の精霊たちがハーモニーを重ねる。
十二天将の少女たちも、静かに手を合わせ、祝福の歌を捧げた。
神剣の誕生を祝う、妖精と精霊たちの幻想的な調べが、自衛隊基地全体に響き渡った。
基地の隊員たちも、思わず足を止め、空を見上げた。
煉獄杏寿郎が、広場で大声を上げた。
「うむ! すごい光と音だ!
トオル、お前の剣が生まれたのだな!」
胡蝶しのぶが、優雅に微笑みながら、
「ふふ……神剣エウレカ……トオルくんの優しさが、こんな美しい剣を生んだんですのね」
トオルは、二本の剣を胸に抱き、みんなの祝福の音に包まれながら、静かに言った。
「エウレカ……一緒に、がんばろうね」
杖くんが、トオルの耳元で優しく囁いた。
『トオルちゃん……神剣が誕生したわ。
あなたのために、妖精とドワーフと精霊が、心を込めて作ってくれたの。
これで、また新しい力が、あなたの味方になったわね』
鍛冶場の光は、ゆっくりと収まっていった。
しかし、トオルの手の中の二本の剣は、静かに、しかし確かに輝き続けていた。
人類史上最大の魔法使いは、九歳の心で、新たな神剣を、優しく受け入れていた。
霧の港町は、少年の光と、神剣の誕生を祝う幻想的な調べに包まれながら、輝き続けていた。
長かった序盤も終わりました。
トオルと杖くん。そしてエウレカ。
この小説を書く時にはこのイメージしかなかったです。