杖くんと七歳の魔法使い ~深淵から帰還した少年は、今日もみんなの笑顔を守る~   作:redhot

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杖くんと二本の妹

岩内自衛隊基地の訓練場では、九歳のトオルが木刀を手に、真剣な表情で構えていた。

「トオルくん、まずは基本の足捌きからだ。

腰を落として、重心を低く……」

自衛隊の剣術教官が、丁寧に手ほどきを始めた。

トオルは一度聞いたことを決して忘れず、教えられた動きを即座に自分のものにした。

さらに、それを自分の魔法と組み合わせ、応用していく。

一日、二日……一週間も経たないうちに、トオルの剣の腕は目に見えて上達した。

教官たちが驚くほどだった。

新城直衛大佐は、その様子を静かに見守り、政府に正式な要請を出した。

「トオル君は基地内にいる自衛隊員の剣術を、すでにすべて吸収してしまいました。

ならば、古来から伝わる本物の剣術を学ばせたい。

二天一流、柳生新陰流、示現流、北辰一刀流などの師範代を、基地に派遣していただきたい」

政府は即座に了承し、全国から選りすぐりの師範代たちが岩内に集められた。

トオルは、戦国時代や幕末に活躍した剣術を、未知の技術として喜んで学んだ。

一度見た型を完璧に再現し、すぐに自分の魔法と融合させて昇華させる。

師範代の一人が、呆然と呟いた。

「……これは、ただの天才というレベルではない。

剣の神が降りてきたようだ」

トオルは毎日、汗を流しながらも、目を輝かせて稽古に励んだ。

そんなある日の夕方、訓練を終えたトオルが杖くんを抱きしめながら言った。

「杖くん、今日も楽しかったよ。

剣って、面白いね」

杖くんは、銀髪を少し揺らし、珍しく頰を膨らませてふてくされた。

『……トオルちゃん、僕よりも剣がいいの?』

その可愛らしい拗ねた声に、トオルは慌てて杖くんを抱き寄せた。

「違うよ!

杖くんは無二の存在だよ。

僕の最初で、ずっと一番大切な相棒。

剣は……僕の新しい妹達だよ。

エウレカも、杖くんも、みんな大切。

杖くんが一番だよ」

トオルは、杖くんの頰に自分の頰をくっつけて、優しく言った。

杖くんの機嫌は、すぐに直った。

銀髪を優しく揺らし、いたずらっぽく微笑んだ。

『ふふ……そうよね。

トオルちゃんは、ちゃんとわかってるわ。

新しい妹ができたからって、僕を忘れないでね?』

トオルは、にっこりと笑って頷いた。

「うん、絶対に忘れない。

杖くんは、僕の杖くんだもん」

その光景を、少し離れたところで新城直衛大佐が見守っていた。

彼は静かに微笑み、部下に言った。

「トオル君は、剣を学んでも、心は変わらないな。

それが、あの子の強さだ」

訓練場では、秋の風が優しく吹いていた。

ガンダムとザクが丘の上に立ち、犬型ゴーレムたちが山を守り、エルフの戦士たちが訓練を続ける。

トオルは、杖くんを抱き、エウレカの二本の剣を腰に差しながら、静かに空を見上げた。

「みんな……これからも、よろしくね」

九歳の少年は、剣術を学びながらも、

杖くんを一番に想い、優しい心を失わずに歩み続けていた。

人類史上最大の魔法使いは、新たな妹たちと、永遠の相棒と共に、

深淵への道を、静かに強く進み続けていた。

霧の港町は、少年の光と、神剣と杖の温もりに包まれながら、輝き続けていた。

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