杖くんと七歳の魔法使い ~深淵から帰還した少年は、今日もみんなの笑顔を守る~   作:redhot

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杖くんと冥府の混沌

、岩内は静かな雪の気配を帯びていた。

しかし、その穏やかな世界とは別の、幾つもの「滅びた地球」の冥府では、永遠のような混乱が続いていた。

冥界の広大な審判の間は、ありとあらゆる神話の冥府の神々が総出で埋め尽くされていた。

ギリシャのハデスは黒い玉座に座り、疲れ果てた顔でため息をつく。

エジプトのアヌビスは黄金の秤を何度も調整し、ヤマ神はインドの冥界から大量の巻物を抱えて駆けつけ、

北欧のヘルは冷たい視線を投げかけ、中国の閻魔王は苛立った様子で鬼卒たちを叱咤していた。

他にも、ケルトの死神、メソアメリカの死の神々、アフリカの祖霊の守護者……神話の数だけ冥府が存在し、すべての神々が一堂に会していた。

審判は、文字通り渋滞していた。

「次……次は誰だ……!」

ハデスが低い声で叫ぶが、死者の行列は果てしなく続き、魂の波が冥界の門を押し広げていた。

まだ死ぬ定めではない人間が、大量に死んでいる。

ダンジョンの怪物たちに引き裂かれ、スタンピードに飲み込まれ、異形の力に魂ごと腐食された者たち。

彼らの魂は、苦痛と絶望に歪み、冥界の空気をさらに重くしていた。

「世界の運命さえ滅びてしまった……」

アヌビスが、秤の上で魂を量りながら呟いた。

「輪廻転生をさせようにも、世界そのものが存在していない。

魂をどこへ送ればいい……?」

閻魔王が、鬼の軍勢を指揮しながら声を張り上げた。

「このままでは、冥界自体が崩壊する。

地球とは別の世界の神々に仲介を頼み、魂を移動させるしかないだろう。

異世界転生で被害にあった世界なら……受け入れてくれるかもしれない」

一柱の神が、疲れた声で提案した。

「水の女神アクアと、エリスなら……どうか?

あの二人は、異世界転生の被害者を積極的に受け入れているという報告がある」

別の神が、すぐに異を唱えた。

「いや、もっと確実な存在がいる。

The One Above All……マーベルの至高存在だ。

マルチバース全体を統べる彼なら、膨大な魂を受け入れる余地があるはずだ」

冥界の神々は、疲弊した顔を見合わせ、会議を続けた。

「アクアとエリスは、確かに慈悲深いが……人数が多すぎる。

The One Above Allに頼むにしても、彼は干渉を好まない。

魂の移動そのものが、宇宙の法則を歪める可能性もある……」

ハデスが、重い声で言った。

「だが、このままでは全ての魂がここで朽ちる。

我々は審判を続けるしかない。

しかし……限界だ」

冥界の空に、遠い慟哭が響いた。

死者の叫びと、神々の疲労が混じり合い、果てしない闇をさらに深くしていた。

一方、岩内の夜、トオルはベッドの中で穏やかに眠っていた。

杖くんは彼の胸元で静かに目を閉じ、銀髪を優しく揺らしていた。

しかし、滅びた世界の冥府では、神々はまだ、魂の行方を巡って会議を続けていた。

死の星となった地球の残響が、どこまでも広がっていく。

人類史上最大の魔法使いは、知らぬ間に、無数の滅びた世界の魂の叫びを宿し、

静かに、しかし確かに、唯一残された世界を守り続けていた。

霧の港町は、少年の光と、冥府の果てしない審判に包まれながら、

ただ一つの希望として、輝き続けていた。

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