杖くんと七歳の魔法使い ~深淵から帰還した少年は、今日もみんなの笑顔を守る~ 作:redhot
岩内自衛隊基地の事務室から、深夜の電話が鳴り響いた。
本部以蔵は、受話器を握りしめ、静かに息を吐いた。
九歳の少年・トオルが、数日で自分が生み出した本部流柔術を完全に吸収し、さらに発展させていく姿を思い浮かべながら、彼はまず一本目の電話をかけた。
相手は、愚地独歩。
「愚地……久しぶりだな。
本部だ」
電話の向こうで、鋭い息遣いが聞こえた。
愚地独歩の声は、低く、抑揚の少ないものだった。
「……本部か。珍しいな。
何か用か?」
本部は、窓の外の夜の闇を見つめながら、ゆっくりと言った。
「北海道の自衛隊基地にいる少年……トオルという九歳の子供だ。
あいつは、俺が長年かけて修めた武芸を、わずか数日で物にした。
才能というものでは、あの範馬勇次郎に匹敵するか、それ以上だ。
最初は話半分で聞いていたが……古流剣術を数日で習得し、新たな剣術に発展させている。
もし興味があるのなら、来てみるといい。
恐ろしいものが見れるぞ」
電話の向こうで、愚地独歩の息がわずかに乱れた。
「……九歳で、範馬勇次郎並みだと?
本部、お前がそんなことを言うとはな。
……わかった。
近いうちに、そちらへ行く」
本部は、短く礼を言い、電話を切った。
次に、彼はもう一本の電話をかけた。
相手は、渋川剛気。
今度は、声に敬意を込めて丁寧に話した。
「渋川先生……お休みのところ申し訳ありません。
本部以蔵です」
渋川剛気の穏やかで、しかし力強い声が返ってきた。
「本部か。どうした?」
本部は、さきほどと同じ内容を、しかしより丁寧に伝えた。
「北海道の自衛隊基地に、トオルという九歳の少年がおります。
あの子は、私が長年かけて修めた武芸を、わずか数日で完全に吸収し、さらに発展させました。
才能という点では、範馬勇次郎に匹敵するか、それ以上かもしれません。
古流剣術を数日で習得し、新たな剣術にまで昇華させているのです。
もし先生が興味をお持ちでしたら、ぜひ一度お越しください。
恐ろしい才能を、直接ご覧になる価値があると思います」
渋川剛気は、しばらく沈黙した後、静かに答えた。
「……九歳で、そこまでか。
本部、お前がそこまで言うとはな。
わかった。
近いうちに、そちらへ伺おう」
本部は、深く頭を下げ、電話を切った。
受話器を置いた後、彼は窓の外の夜空を見上げ、静かに呟いた。
「あの少年……本当に、武の化け物になるかもしれない」
一方、トオルは基地の食堂で、みんなと一緒に食事をしていた。
九歳の少年は、エウレカの二本の剣を膝に置きながら、優しく笑う。
「本部先生、今日もありがとうございました!
愚地先生と渋川先生にも、会えるのかな……」
杖くんが、トオルの耳元で優しく囁いた。
『トオルちゃん……武芸百般の男が、あなたの才能を認めているわ。
これで、また新しい道が開けるのね』
煉獄杏寿郎が、大きな声で笑いながら言った。
「うむ! 愚地独歩と渋川剛気か!
トオル、お前は本当にすごいぞ!」
胡蝶しのぶが、優雅に微笑み、
「ふふ……トオルくん、あなたの剣は、もう伝説になりつつありますわね」
トオルは、少し照れくさそうに笑った。
「僕、ただ……みんなを守りたいだけだよ」
基地の外では、秋の風が静かに吹いていた。
本部以蔵の電話は、遠く離れた二人の武の達人に、
九歳の少年の存在を、確かに伝えていた。
人類史上最大の魔法使いは、九歳の心で、武の深淵をも、優しく吸収し続けていた。
霧の港町は、少年の光と、古き武芸の響きに包まれながら、輝き続けていた。