杖くんと七歳の魔法使い ~深淵から帰還した少年は、今日もみんなの笑顔を守る~ 作:redhot
トオルがダンジョンから持ち帰る素材と食材、そして魔法の武具やポーションによる莫大な資産は、日本全国――いや、世界中に知れ渡っていた。
九歳の少年が、銀行口座に積み上がる金額は、もはや想像を絶する額に達していた。
普通なら、そこに群がるように寄付を求める団体が押し寄せるはずだった。
人権団体、障碍者支援団体、NPO、環境保護団体……。
「世界の子どもたちのために」「弱者を救うために」「未来のために」と、様々な名目で手を差し伸べるはずだった。
しかし、トオルにはそれがなかった。
自衛隊基地に常駐しているという物理的な壁もあるが、それ以上に、政府が強硬に動いていた。
「本当に困っている団体や個人であれば、トオル君は喜んで協力するだろう。
しかし、一度門戸を開ければ、蟻のように群がってくるのは目に見えている。
だから、全て排除する」
この政府の方針に対し、障碍者支援団体や一部のNPOから激しい批判が上がった。
「弱者排除ではないか!」
「九歳の子どもが持つ資産を、なぜ政府が独占するのか!」
「トオル君の善意を、官僚が踏みにじっている!」
記者会見で、障碍者支援団体の代表者が声を震わせて訴えた。
しかし、政府の回答は冷ややかで、かつ明確だった。
中曽根康弘総理大臣は、静かに答えた。
「子供に寄付を頼むのが、大人の姿か?
彼がどれだけ稼ごうとも、トオル君はまだ九歳の子供だ。
そんな子どもにたかるのが、本当に『支援』と言えるのか?
本当に困っている人や団体があれば、トオル君は自ら協力するだろう。
しかし、ただ『持っているから』という理由で群がるのは、到底容認できない」
この言葉に、批判する側も一瞬、言葉を失った。
岩内基地の食堂では、トオルがそんな騒動など知らずに、みんなと一緒に食事をしていた。
九歳の少年は、杖くんを抱きしめながら、優しく笑う。
「みんな、今日も美味しいね……
僕、もっと採ってくるよ」
胡蝶しのぶが、優雅に微笑みながら言った。
「ふふ……トオルくん、あなたの資産の話が、政府で話題になっているそうですわ。
でも、政府はしっかり守ってくれているみたいですのよ」
胡蝶カナエが、穏やかに頷き、
「あらあら、九歳の子どもに寄付を求めるなんて……
大人がそんなことをするのは、恥ずかしいことよね」
炭治郎が静かに、
「トオルくん……お前は、ただみんなの役に立ちたいだけだもんな。
政府が守ってくれてる。安心していいよ」
トオルは、少し首を傾げた。
「え? 何かあったの?」
煉獄杏寿郎が、大きな声で笑いながら言った。
「うむ! 何も心配するな!
お前はただ、笑顔でいればいい!
政府も、ちゃんとわかってるぞ!」
杖くんが、トオルの耳元で優しく囁いた。
『トオルちゃん……大人の欲が、あなたの周りに群がろうとしているわ。
でも、政府がしっかり守ってくれている。
あなたの優しさを、ちゃんと理解してくれているのよ』
トオルは、みんなの笑顔を見て、胸が温かくなった。
「うん……僕、みんなの役に立ちたいだけだよ。
本当に困ってる人がいたら、喜んで助けるよ」
基地の外では、秋の風が静かに吹いていた。
ガンダムとザクが丘の上に立ち、犬型ゴーレムたちが山を守り、エルフの戦士たちが訓練を続ける。
九歳の少年は、莫大な資産を持ちながらも、
欲に群がる大人たちの影を、政府の強硬策によって遠ざけられていた。
人類史上最大の魔法使いは、九歳の心で、純粋な優しさを、静かに守られ続けていた。
霧の港町は、少年の光と、政府の決意に包まれながら、輝き続けていた。