杖くんと七歳の魔法使い ~深淵から帰還した少年は、今日もみんなの笑顔を守る~   作:redhot

163 / 241
杖くんと須佐之男の巫女

岩内自衛隊基地の正門前に、秋の柔らかな陽が差し込んでいた。

その日、三人の巫女が静かに到着した。

石戸霞、葵喜美、浅間智。

須佐之男命を奉る神社の巫女たちだった。

石戸霞は、黒髪を短く切り揃え、凛とした瞳を持つ一番若い巫女。

葵喜美は穏やかで優しい雰囲気の女性。

浅間智は静かで思慮深い印象の女性。

三人は、トオルの前に進み出て、深く頭を下げた。

石戸霞が、はっきりとした声で言った。

「トオル様……私たち、須佐之男命様の託宣により参りました。

須佐之男命様が、夢の中で私たちに命じられたのです。

トオル様のお心を守り、支えてほしいと。

どうか、よろしくお願いいたします」

トオルは、九歳の瞳を大きく見開き、すぐに嬉しそうな笑顔になった。

「須佐之男命様の……?

わあ、来てくれたんだ!

よろしくお願いします!

みんなで、一緒にがんばろうね!」

孔雀と王仁丸は、少し離れた場所でその様子を見ていた。

孔雀は、いつもの軽薄な笑みを浮かべていたが、目には明らかな驚きが浮かんでいた。

「へえ……須佐之男命が、巫女の夢に直接託宣を?

天照大御神や月読命ならわかるけど……あの荒ぶる神様が、そんなことをするなんて意外だな」

王仁丸も、冷たい視線を細めながら低く言った。

「ふん……須佐之男か。

あの男が動くとはな。

トオルというガキは、本当に特別らしい」

その時、トオルの腰に差した姉妹剣エウレカから、二つの小さな光の精霊が飛び出した。

銀の剣の精霊と金の剣の精霊だった。

二人は、石戸霞たちを気に入ったのか、嬉しそうに巫女たちの周囲をくるくると漂い始めた。

銀の精霊が、石戸霞の髪にちょこんと乗って遊んだり、

金の精霊が、葵喜美の袖を軽く引っ張ったり、イタズラを始めた。

トオルは、慌てて声を上げた。

「エウレカ! だめだよ!

お客さんにイタズラしちゃ!」

しかし、石戸霞は優しく微笑み、銀の精霊をそっと指で受け止めた。

「大丈夫ですよ、トオル様。

可愛い精霊さんたちですね……

私たちも、よろしくね」

エウレカの精霊たちは、霞の優しい声に安心したのか、ますます嬉しそうに巫女たちの周りを漂い、時折小さな光の粒を散らして遊んだ。

トオルは、少し照れくさそうに笑った。

「エウレカ……みんな、優しいんだよ。

これから、よろしくね」

孔雀は、その光景を見て小さく笑った。

「ははっ……神剣の精霊まで懐いてるのか。

トオル、お前は本当に人たらしだな」

王仁丸は、冷たい目で精霊たちを眺めながら、静かに呟いた。

「……面白い。

須佐之男の巫女と、神剣の精霊か。

この基地は、ますます賑やかになりそうだな」

杖くんが、トオルの耳元で優しく囁いた。

『トオルちゃん……須佐之男命様の巫女さんたちも、あなたの元に来てくれたわ。

エウレカの精霊たちも、すっかり懐いている。

あなたは、どんどん大切な人たちを呼び寄せているのね』

トオルは、巫女たちとエウレカの精霊たちを見て、胸がいっぱいになった。

「みんな、ありがとう……

これから、よろしくお願いします!」

基地の外では、秋の風が優しく吹いていた。

ガンダムとザクが丘の上に立ち、犬型ゴーレムたちが山を守り、エルフの戦士たちが訓練を続ける。

須佐之男命の巫女たちは、トオルの優しい笑顔に迎えられ、静かに新たな役割を果たし始めていた。

人類史上最大の魔法使いは、九歳の心で、神の託宣を受けた巫女たちと、神剣の精霊たちを迎え入れ、

静かに、しかし確かに、守るための輪を広げ続けていた。

霧の港町は、少年の光と、古き神の巫女の影に包まれながら、輝き続けていた。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。