杖くんと七歳の魔法使い ~深淵から帰還した少年は、今日もみんなの笑顔を守る~   作:redhot

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杖くんと異国の深淵

中東の架空の国家、アスラン王国にダンジョンが出現したという報せは、世界を震撼させた。

アスラン王国は、長い内戦の最中にあった。

石油資源を巡る紛争で、周辺諸国と激しく対立し、傭兵パイロットたちが空を埋め尽くす戦場となっていた。

そんな国に突然現れたダンジョンは、最初は軽視された。

「日本の子供がどうにかできるものなのだから、我々にも対処できるはずだ」

政府高官や軍部は、そう高をくくっていた。

トオルの名はすでに世界中に知れ渡っていたが、彼らは「九歳の少年が四百階を攻略している」という事実を、ただの誇張と受け取っていた。

しかし、ダンジョンは放置すれば放置するほど危険だった。

一定期間モンスターを駆除しないと、スタンピード――モンスターの大量発生――が誘発される。

ダンジョン外には出ないはずの怪物たちが、外界に溢れ出し、大暴れを始めた。

アスラン王国の軍隊は、瞬く間に壊滅した。

戦車も戦闘機も、深淵の怪物たちには歯が立たなかった。

首都は炎に包まれ、王族や国民は絶望の底に突き落とされた。

日本政府は、即座にトオルに協力を要請した。

トオルは、杖くんと共に二つ返事で了承した。

「みんなが困ってるなら、僕、行きます!」

アスラン王国への飛行機の中で、トオルは静かに窓の外を見つめていた。

杖くんが、優しく耳元で囁いた。

『トオルちゃん……また、遠い国で戦うのね。

でも、あなたなら大丈夫。

みんなが待ってるわ』

到着した早々、トオルは圧倒的な力を見せつけた。

スタンピードの怪物たちが、砂漠を埋め尽くすように押し寄せてくる。

トオルは、静かに息を吸い、両手を広げた。

「来て……みんな!」

空間が歪み、ドラゴンクエスト、ウィザードリィ、ウルティマのモンスターの軍勢が召喚された。

さらに、習得したばかりの呪禁道による大量の式鬼と、十二天将が加わる。

先陣を切ったのは、ニンジャスレイヤー、マシュ、バーゲスト、グイン、D、そしてミスリル製の武具を身に着け、ご機嫌なアラゴルン、レゴラス、ギムリ、ボロミアたちだった。

ガンダルフは後方で魔法を支援し、リンク、ドラゴンクエスト1の勇者、ウィザードリィやウルティマの主人公たちが、剣を振りかざして突撃した。

怪物たちは、圧倒的な実力差で蹴散らされていった。

アスラン王国の軍人や民衆は、呆然とその光景を見つめていた。

サキ・ヴァシュタル――アスラン空軍のエースパイロットで、男性――も、戦闘機から地上の戦いを眺めながら、言葉を失った。

「九歳の子供が……軍隊など相手にならない存在を、たった一人で……」

戦闘後、負傷者が続出した。

メフィストが即座に動き、魔界の医術とトオルのポーションで、傷ついた人々を次々と癒していった。

中東の勢力は、完全に驚愕した。

「日本の子供一人で……これほどの力……」

トオルは、戦いの後、砂漠の風に吹かれながら、静かに祈りを捧げた。

「みんな……無事でよかった」

杖くんが、トオルの耳元で優しく囁いた。

『トオルちゃん……あなたがまた、世界を救ったわ。

遠い国でも、あなたの優しさが届いたのね』

アスラン王国は、トオルの力によって、スタンピードの危機から救われた。

しかし、その代償として、彼らは「九歳の少年」が持つ力の恐ろしさを、骨の髄まで思い知ることになった。

人類史上最大の魔法使いは、九歳の心で、遠い異国の空の下でも、

静かに、しかし確かに、光を灯し続けていた。

霧の港町は、少年の優しさと、世界の叫びに包まれながら、輝き続けていた。

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