杖くんと七歳の魔法使い ~深淵から帰還した少年は、今日もみんなの笑顔を守る~   作:redhot

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杖くんと封神の宝貝

岩内自衛隊基地のトオルの部屋は、積み上げられた古い小説の山で溢れていた。

トオルはベッドに寝転び、夢中になってページをめくっていた。

封神演義、西遊記、三国志、項羽と劉邦……。

特に封神演義と西遊記に登場する仙人たちや宝貝、斉天大聖孫悟空は、トオルの心を強く惹きつけた。

「すごい……

仙人たちが、宝貝を使って戦うなんて……

孫悟空も、雲に乗って空を飛んで、どんな敵も倒しちゃうんだ……」

トオルは目を輝かせ、杖くんに言った。

「僕も、みんなが簡単に使える宝貝を作りたいな。

例えば、振れば風の刃を放つ打神鞭とか……」

杖くんは、銀髪を優しく揺らし、微笑んだ。

『ふふ、トオルちゃんったら。

また新しいアイデアが浮かんだのね。

あなたなら、きっと素敵な宝貝を作れるわ』

トオルはすぐに実験を始めた。

封神演義の打神鞭を参考に、魔力を込めた短い棒を開発した。

一般人でも振るだけで風の刃を放てるように調整し、制御を簡単にした。

完成した打神鞭を試しに振ってみると、部屋の中に柔らかな風の刃が舞った。

「できた……!

これなら、みんなが守れるかも」

しかし、その数日後、トオルの部屋に突然、異様な気配が現れた。

空間が歪み、三人の仙人が現れた。

太公望は、白い道服に身を包み、長い黒髪を後ろでまとめ、冷静で皮肉めいた視線をトオルに向けた。

楊戩は、鋭い目つきで三つ目を開き、哮天犬を連れて静かに立っていた。

黄天化は、力強い体躯に黄金の鎧をまとい、熱血的な表情で腕を組んでいた。

太公望が、静かな声で言った。

「我は太公望。

封神演義に記された者だ。

トオルよ……お前の作った宝貝は、人々に渡すな。

世界のバランスが崩れる」

楊戩が、冷静に続けた。

「神話の時代ならともかく、人類が独り立ちした現代に、仙人が直接干渉すれば、均衡が乱れる。

今回は特例として現れた。

宝貝を人に配るのはやめてほしい」

黄天化は、熱く言い募った。

「俺も同意だ!

お前の才能は素晴らしいが、宝貝を量産すれば、争いの種になる!

神々の掟を破るわけにはいかん!」

トオルは、三人の仙人を驚いた顔で見つめ、静かに答えた。

「ごめんなさい……

僕、ただ、みんなが守れるようにって思っただけなんです……

でも、バランスが崩れるなら……やめます」

太公望は、わずかに微笑んだ。

「ふむ……素直な子だな。

まあ、本来は規則を無視して助けたいが、上にいる仙人がうるさくて無理だった」

後ろの方では、別の気配が小さく動いていた。

斉天大聖孫悟空が、雲の上に腰掛け、ぼやいていた。

「掟、掟ってうるせえよな。

世界の一大事なのに、宝貝ぐらいどうって事ねえだろうに」

沙悟浄が、静かに諫めた。

「悟空……我慢しろ。

天界の掟だ」

猪八戒が、腹をさすりながら言った。

「そうだぞ、悟空。

俺たちも、勝手に動くわけにはいかんよ」

トオルは、仙人たちの言葉を聞き、静かに頷いた。

「わかりました……

みんなのバランスが大事なら、僕、控えます。

でも、みんなが困ってる時は、直接助けに行きます」

杖くんが、トオルの耳元で優しく囁いた。

『トオルちゃん……神話の仙人たちが、あなたの行動を気にかけてくれているわ。

あなたは、本当に特別な存在になったのね』

三人の仙人は、トオルの純粋な心を感じ取り、静かに消えていった。

太公望の最後の言葉が、部屋に残った。

「トオルよ……お前の道は、正しい。

ただ、バランスを忘れるな」

トオルは、打神鞭をそっと机に置き、微笑んだ。

「うん……みんなが幸せになれるように、僕、がんばるよ」

基地の外では、秋の風が静かに吹いていた。

ガンダムとザクが丘の上に立ち、犬型ゴーレムたちが山を守り、エルフの戦士たちが訓練を続ける。

トオルは、神話の宝貝を胸に、静かに自分の道を歩み続けていた。

人類史上最大の魔法使いは、九歳の心で、仙人たちの警告を優しく受け止め、

世界のバランスと人々の笑顔を、静かに守り続けていた。

霧の港町は、少年の光と、古き神話の響きに包まれながら、輝き続けていた。

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