杖くんと七歳の魔法使い ~深淵から帰還した少年は、今日もみんなの笑顔を守る~ 作:redhot
岩内自衛隊基地は、秋の終わりから冬の気配が漂い始めていた。
石戸霞、葵喜美、浅間智の三人の巫女は、トオルのもとに来てから、基地の生活に溶け込み始めていた。
彼女たちは、自衛隊員の手伝いを積極的に行った。
洗濯、掃除、資材の運搬……そして特に、食堂での食事の手伝いが多かった。
厨房に入った霞は、初めて見た食材の山に目を丸くした。
「これ……ダンジョン産のサーモン?
それに、チーズラビット……?
毎日こんな高級なものが食事に出るなんて……」
喜美も、ネオトマトを手に取りながら驚きの声を上げた。
「本当に……一般には出回らないものが、毎日のように並ぶのですね。
調理する方も大変でしょう」
智は、軍隊ガニの甲羅を前にして、静かに言った。
「新しい食材が毎日入ってくるので、メニューを考えるのも一苦労です。
でも、トオル様のおかげで、基地の皆さんが笑顔で食事をしている……それが嬉しいです」
三人は、手分けして調理を手伝った。
ダンジョンサーモンをさばき、ベーコンの葉を炒め、サーロインキノコをグリルする。
食堂は、彼女たちの手によって、さらに温かな雰囲気に包まれた。
空いた時間には、トオルにそれぞれの技術を教えた。
喜美は、神楽を優しく披露しながら、トオルの小さな手を引いた。
「トオル様……神楽は、心を清める舞です。
一緒に、ゆっくりと動いてみましょう」
智は、弓を手に持ち、静かに構えを見せた。
「弓は、心を集中させる術。
呼吸を整えて……狙うのは、心の中の的です」
霞は、神事に関する知識を、穏やかな声で語った。
「神事は、祈りと感謝の儀式。
トオル様のような優しい心があれば、自然と神様に届きます」
トオルは、水を吸収するが如く、彼女たちの教えを次々と自分のものにした。
神楽のステップをすぐに覚え、弓の引き方を魔法と融合させ、神事の作法を自分の祈りに取り入れた。
数日後、トオルは三人の巫女に、照れくさそうにお願いした。
「あの……みんな、僕のことを『様』って呼ぶの、なんか変だから……
『君』って呼んでほしいな。
石戸霞さん、葵喜美さん、浅間智さん……みんな、僕の友達だよ」
霞は、少し驚いた顔をした後、優しく微笑んだ。
「わかりました……トオル君。
これからは、そう呼ばせてもらいますね」
喜美も、穏やかに頷いた。
「トオル君……素敵なお願いね。
私たちも、友達として、そばにいます」
智は、静かに微笑みながら言った。
「トオル君……よろしくね」
三人の巫女は、トオルの純粋な言葉に、心が温かくなった。
食堂では、彼女たちが手伝う食事の時間になると、基地の隊員たちも自然と笑顔が増えた。
煉獄杏寿郎が、大きな声で笑いながら言った。
「うむ! 巫女さんたちが来てから、食堂がますます明るくなったぞ!」
胡蝶しのぶが、優雅に微笑み、
「ふふ……トオルくん、あなたの周りは、どんどん素敵な人たちで溢れていますわね」
トオルは、みんなの笑顔を見て、胸がいっぱいになった。
「みんな、ありがとう……
僕、もっとがんばるよ」
杖くんが、トオルの耳元で優しく囁いた。
『トオルちゃん……巫女さんたちも、あなたの優しさに惹かれているわ。
これで、また新しい家族が増えたのね』
基地の外では、秋の風が静かに吹いていた。
ガンダムとザクが丘の上に立ち、犬型ゴーレムたちが山を守り、エルフの戦士たちが訓練を続ける。
三人の巫女は、トオルと共に、基地の日常に溶け込みながら、
静かに、しかし確かに、彼の心を守る役割を果たし始めていた。
人類史上最大の魔法使いは、九歳の心で、新たな仲間たちを迎え入れ、
優しい毎日を、静かに紡ぎ続けていた。
霧の港町は、少年の光と、巫女たちの祈りに包まれながら、輝き続けていた。