杖くんと七歳の魔法使い ~深淵から帰還した少年は、今日もみんなの笑顔を守る~ 作:redhot
岩内自衛隊基地のメフィスト北海道病院の特別温室は、厳重な警備と魔力結界に守られていた。
その温室の中央に、たった一株だけ存在する花があった。
セラピーチューリップ。
人や動物の傷を「食べる」ように癒す、極めて希少な植物だった。
花弁は淡いピンク色で、中心に金色の輝きを帯び、傷ついた部分に触れると、優しく光を放ちながら痛みと損傷を吸い取り、瞬時に再生させる。
重傷でも、数時間で完治するほどの効果を持つが、トオルが四百階を何度も往復して探しても、見つかったのはこの一株だけだった。
メフィストは、白衣の袖をまくりながら、その花を大切そうに見つめていた。
「セラピーチューリップ……本当に、奇跡の花だ。
これがあれば、難病や重傷者の治療が劇的に変わる。
しかし、希少性が高すぎて、市場に出すことなど到底できない」
トオルは、温室のガラス越しに花を見つめ、静かに言った。
「僕、もっと探してみるよ……
でも、なかなか見つからなくて……」
杖くんが、トオルの肩に手を置き、優しく微笑んだ。
『トオルちゃん……四百階を何度も往復して、やっと一株。
それだけでも、奇跡よ。
この花は、メフィスト病院だけで大切に育てて、本当に必要な人だけに使おうね』
この発見が報道された時、世界中から反応が殺到した。
「重傷者を癒す奇跡の花が、日本に!」
「セラピーチューリップ……トオル君が発見した新種!」
各国から治療を求める患者や家族が、岩内を目指して殺到した。
空港は人で溢れ、ホテルは満室。
メフィスト病院の前には、長蛇の列ができ、希望と切実な想いが交錯した。
トオルは、そんな状況を見て、少し寂しそうに言った。
「みんな、助かりたいんだよね……
でも、一株しかないから……
僕、もっと探すよ」
メフィストは、赤い瞳を細めてトオルの頭を撫でた。
「トオルくん……無理はするな。
この一株でも、多くの命を救える。
君の優しさが、世界に届いているよ」
基地の食堂では、トオルがみんなと一緒に食事をしながら、静かに話した。
「セラピーチューリップ……みんなの役に立てるといいな」
煉獄杏寿郎が、大きな声で笑いながら言った。
「うむ! お前の発見は、また奇跡だぞ!
世界中が、その花を求めている!」
胡蝶しのぶが、優雅に微笑み、
「ふふ……希少すぎて市場に出せないなんて……
トオルくん、あなたの探索は、本当に人々を救っていますわ」
胡蝶カナエが、穏やかに頷き、
「あらあら、世界中から人が集まってるのね。
トオルくんの優しさが、遠くまで届いているわ」
炭治郎が静かに、
「トオルくん……お前は、いつもみんなのことを考えてるな。
ありがとう」
トオルは、みんなの笑顔を見て、胸が温かくなった。
「うん……僕、もっと探してみるよ。
みんなが、笑顔でいられるように……」
杖くんが、トオルの耳元で優しく囁いた。
『トオルちゃん……セラピーチューリップは、君の優しさそのもののような花ね。
一株だけでも、世界を変えていくわ』
基地の外では、秋の風が静かに吹いていた。
ガンダムとザクが丘の上に立ち、犬型ゴーレムたちが山を守り、エルフの戦士たちが訓練を続ける。
メフィスト病院の温室では、たった一株のセラピーチューリップが、
静かに、しかし確かに、希望の光を放ち続けていた。
人類史上最大の魔法使いは、九歳の心で、深淵の奇跡を、ただ「みんなの為に」と探し続けていた。
霧の港町は、少年の優しさと、癒しの花の淡い輝きに包まれながら、輝き続けていた。