杖くんと七歳の魔法使い ~深淵から帰還した少年は、今日もみんなの笑顔を守る~   作:redhot

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杖くんと神代を超える創造

岩内自衛隊基地の地下錬金室は、淡い魔力の光と金属の輝きに満ちていた。

トオルは、机の上に広げた古いゲームの攻略本や設定資料を眺めながら、両手を動かしていた。

九歳の少年の指先から、青白い魔力が流れ出し、錬金術と創造魔法が融合する。

「ロトの剣……

ロトの鎧……

ウィザードリィの聖なる鎧に、村正……

手裏剣も……」

次々と、ゲーム内に登場する装備品が形になっていく。

回復アイテムから防具、武器まで、多種多彩に生成された。

しかし、完成したそれらは、どれもが強力すぎた。

ロトの剣は、振るだけで空間を裂くほどの切れ味を持ち、

聖なる鎧は、ミスリルをも凌駕する防御力を発揮する。

村正は、妖刀の名に恥じぬ呪いと力を併せ持ち、手裏剣は自動追尾する。

トオルは、少し残念そうに呟いた。

「人間が装備するには、実力(レベル)が足りないんだ……

死蔵しちゃうね。

僕、みんなの役に立ちたかったのに……」

杖くんが、トオルの肩に手を置き、優しく微笑んだ。

『トオルちゃん……あなたの才能が、人類の実力を追い越してしまっているのよ。

でも、それは悪いことじゃないわ。

いつか、みんなが追いつく日が来るはず』

この光景は、仙人界からも見られていた。

金鰲列島の奥深く、封神演義の時代を生きる仙人たちが、遠くトオルの姿を観察していた。

申公豹は、豹の耳をピクピクさせながら、大笑いした。

「はははっ! あれは凄い!

仙人ですらできないことを、九歳の人間の子供がやっている!

元始天尊や通天教主、太上老君でさえも、こんな創造はできんだろう。

神話の時代よりも、よほど神秘に溢れているじゃないか!」

聞仲は、雷を思わせる厳つい顔をしかめ、腕を組んだ。

「ふむ……もしかしたら、あの子の創造力なら、自身の宝貝さえも複製できるのではないか?

あれで仙人ではないとは……信じがたい」

趙公明は、黒い髭を撫でながら、静かに頷いた。

「確かに……あの創造は、宝貝の領域を超えている。

神の領域に足を踏み入れていると言っても過言ではないな」

元始天尊は、白い髭を優しく撫で、穏やかな声で言った。

「トオルという少年は、今の段階で仙人の範疇を超え、神の領域に入っている。

斉天大聖孫悟空よりも、無茶なことをしているな。

今の時代は神代ではないのに……今の方が、よほど神秘に溢れている。何故だろう?」

通天教主は、鋭い目でトオルを見つめ、静かに呟いた。

「人間の可能性……恐ろしいものだ。

神話の時代よりも、現代の方が神秘に満ちているとは……」

太上老君は、穏やかな笑みを浮かべ、面白そうにトオルを見守っていた。

「人の可能性は、本当に凄いね……

あの子は、ただの人間でありながら、神話の領域を軽々と超えている」

その少し離れた場所では、斉天大聖孫悟空が、雲の上に腰掛け、豪快に笑っていた。

「見てみろよ!

あいつは宝貝を超える物を作れるじゃないか!

やっぱり凄いな!

師匠――三蔵法師と同じで、人間は可能性に満ちているぜ!」

沙悟浄が、静かに諫めた。

「悟空……あまり騒ぐな。

天界の掟に触れるぞ」

猪八戒が、腹をさすりながら言った。

「そうだぞ、悟空。

俺たちも、勝手に動くわけにはいかんよ」

トオルは、そんな神話の存在たちの視線を知らずに、生成した装備を眺めながら、静かに微笑んだ。

「みんなの役に立てる日が、来るといいな……」

杖くんが、トオルの耳元で優しく囁いた。

『トオルちゃん……あなたは、もう神話の領域に足を踏み入れているわ。

仙人たちも、神々も、あなたの才能に驚いている。

でも、あなたはただ、みんなの笑顔を守りたいだけ……それが一番素晴らしいことよ』

基地の外では、秋の風が静かに吹いていた。

ガンダムとザクが丘の上に立ち、犬型ゴーレムたちが山を守り、エルフの戦士たちが訓練を続ける。

トオルは、強力すぎて死蔵される装備たちを前に、

静かに、しかし確実に、人類が追いつく未来を夢見ていた。

人類史上最大の魔法使いは、九歳の心で、神話の領域を超える創造を、

優しい想いで続けていた。

霧の港町は、少年の光と、神話の視線に包まれながら、輝き続けていた。

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