杖くんと七歳の魔法使い ~深淵から帰還した少年は、今日もみんなの笑顔を守る~ 作:redhot
アスラン王国の砂漠の基地は、スタンピードの爪痕がまだ生々しく残る中、静かな緊張に満ちていた。
トオルは、みんなには内緒で、杖くんと二人だけで行動していた。
九歳の少年は、収納魔法から次々とアイテムを取り出し、慎重に並べていく。
大量のポーションと、緊急脱出用の護符。
マクロス世界から召喚した可変機VF-1 バルキリー――航空機型のファイター、鳥型のガウォーク、人型のバトロイドの三形態に変形する機体。
通常の人間にも操作可能で、弾薬は戦闘機の物を使用できる。
その仕様書と整備手順書も完璧に用意されていた。
さらに、マーベル世界から召喚したウォーマシーンスーツとアイアンマンスーツ。各一機。
補助AIとしてジャービスのコピーが搭載されている。
大量のミスリルとアダマンタイト、そしてそれらを錬成するための炉。
トオルが使う魔法を書き示した魔導書一冊。
そして、ミスリル合金糸を使用したパイロットスーツ――エリア88にいるパイロットの人数分。サイズは自動で修正される。
トオルは、すべてを丁寧に並べ終えると、静かに言った。
「これで……アスラン王国を守ってください。
みんなが、笑顔でいられますように」
サキ・ヴァシュタルは、目の前の山のような物資を見て、言葉を失った。
男性のエースパイロットとして、数々の死線をくぐり抜けてきた彼の顔に、初めて本物の驚愕が浮かんだ。
「……これは……」
武器商人のマッコイじいさんは、大量のミスリルとアダマンタイトの山を前に、目を細めて呟いた。
「これだけで、最新型の空母と戦闘機がいくつ買えるかわからん……
トオル、お前は本当に恐ろしいガキだな」
傭兵の一人が、VF-1 バルキリーの機体に手を触れ、震える声で言った。
「可変機……三形態に変形するなんて……
これがあれば、空の戦いが一変する」
別の傭兵は、アイアンマンスーツを見て息を飲んだ。
「鉄の男のスーツ……
AIまで付いている……
これを着れば、俺たちも怪物相手に戦えるのか……」
サキは、トオルの小さな姿をまっすぐに見つめ、静かに頭を下げた。
「トオル……ありがとう。
お前は、俺たちの国を救ってくれた。
これだけのものを、秘密で用意してくれたんだな……
恩は、絶対に忘れない」
トオルは、照れくさそうに笑った。
「みんなが、怖い思いをしないように……
僕、できることをしただけだよ」
マッコイじいさんは、ミスリルの塊を一つ手に取り、重みを確かめながら呟いた。
「兵器産業の連中は、あの子供を殺すかもしれんな……
できるできないは兎も角、一人で世界と戦える存在は恐ろしいだろうから。
もっとも、殺すよりは友好的に商売をした方がもうかるだろうがな」
傭兵たちは、互いに顔を見合わせた。
一人が、苦笑しながら言った。
「確かに……トオルみたいなガキが味方なら心強いが、敵になったら……
世界中が震えるな」
サキは、静かにトオルを見つめ、優しく言った。
「トオル……お前は、ただの子供じゃない。
俺たちは、お前の恩を一生忘れない。
これで、アスランは守れる。
ありがとう」
トオルは、みんなの顔を見て、胸がいっぱいになった。
「うん……みんな、がんばってね。
僕も、いつでも助けに来るよ」
杖くんが、トオルの耳元で優しく囁いた。
『トオルちゃん……あなたの優しさが、遠い国の人たちの心を動かしたわ。
これで、また新しい絆ができたのね』
アスラン王国の人々は、トオルの贈り物を前に、静かに決意を新たにした。
少年の秘密の支援は、砂漠の国に希望の光を灯した。
トオルは、基地に戻る飛行機の中で、窓の外の雲を見つめながら、静かに祈った。
「みんな、無事でいてね……」
人類史上最大の魔法使いは、九歳の心で、遠い国に生まれた友情を、優しく胸に刻み続けていた。
霧の港町は、少年の光と、砂漠の感謝に包まれながら、輝き続けていた。