杖くんと七歳の魔法使い ~深淵から帰還した少年は、今日もみんなの笑顔を守る~ 作:redhot
岩内自衛隊基地のトオルの研究室は、静かな興奮に満ちていた。
トオルは、無限の図書室で得た膨大な知識と、自身の魔法を融合させながら、一冊の本を丁寧にまとめていた。
タイトルは『精霊魔法入門――人類のためのやさしい魔法』。
精霊魔法を中心とし、誰でも扱えるように調整された内容だった。
攻撃魔法の類は、ダンジョン内でしか発動しないよう厳密に制限をかけ、回復魔法と防御魔法はダンジョン外でも使えるように設計した。
トオルは、最後のページを書き終えると、杖くんに微笑みかけた。
「これで……みんなが、少しでも守れるようになるかな。
回復魔法は、医療の現場でも使えるようにしたよ」
杖くんは、銀髪を優しく揺らし、満足げに頷いた。
『トオルちゃん……素晴らしいわ。
あなたが編集したこの本は、人類の希望になる。
攻撃魔法を制限したのも正しい選択よ。
これなら、争いの道具にはならない』
完成した本は、すぐにダンジョンのある国々に無料で配布された。
日本政府が主導し、国際的な協力のもとで、迅速に各国へ送られた。
裏高野でも、阿闍梨たちが本を囲み、回復魔法や移動魔法の習得に励んでいた。
一方、アメリカ東海岸の小さな町。
トオルが魔法で花を渡した少女エマは、父親に本を読みたがって駄々をこねていた。
「パパ! 魔法の書、読みたい!
私も魔法使いになりたいの!」
父親は、困った顔で新聞を折りたたんだ。
「エマ……あの本は、国で厳重に管理されているんだ。
まずは軍人で、特別な訓練を受けた人だけが使えるようになる。
お前はまだ小さいから……」
エマは、目を潤ませて床に座り込んだ。
「うう……読みたいよぉ……
トオルお兄ちゃんが作った魔法なんだよ……」
母親が、慌ててエマを抱き寄せ、優しく頭を撫でた。
「まあまあ、エマ。
パパの言う通りよ。
いつか、みんなが使える日が来るかもしれないから……今は我慢しましょうね」
エマは、母親の胸に顔を埋めながら、涙をこぼした。
「でも……魔法で、お花がいっぱい咲かせたい……」
トオルは、そんな遠い国の少女の想いを知らずに、基地の食堂でみんなと一緒に食事をしていた。
九歳の少年は、杖くんを抱きしめながら、優しく笑う。
「みんな、元気だね……
僕、魔法の書を配ったよ。
少しでも、みんなの役に立てたらいいな」
煉獄杏寿郎が、大きな声で笑いながら言った。
「うむ! トオル、お前の本は世界中に広がっているぞ!
回復魔法が医療の現場で使われ始めたという報告も来ている!」
胡蝶しのぶが、優雅に微笑み、
「ふふ……攻撃魔法を制限したのも賢明ですわ。
トオルくん、あなたの優しさが、世界を少しずつ変えていますのよ」
胡蝶カナエが、穏やかに頷き、
「あらあら、裏高野のお坊さんたちも、回復魔法の習得に励んでいるそうですわ。
トオルくんは、本当にすごい子ね」
炭治郎が静かに、
「トオルくん……お前のおかげで、みんなが少しでも希望を持てるようになった。
ありがとう」
トオルは、みんなの笑顔を見て、胸がいっぱいになった。
「うん……僕、もっとがんばるよ。
みんなが、笑顔でいられるように……」
杖くんが、トオルの耳元で優しく囁いた。
『トオルちゃん……あなたが編集した魔法の書が、世界中の人々の心に届いているわ。
これで、魔法は『異端』ではなく、『希望』になり始めているのよ』
基地の外では、秋の風が静かに吹いていた。
ガンダムとザクが丘の上に立ち、犬型ゴーレムたちが山を守り、エルフの戦士たちが訓練を続ける。
トオルは、精霊魔法を中心とした本を、世界に贈った。
九歳の少年の優しさは、遠い国々の人々の心に、静かに灯をともし続けていた。
人類史上最大の魔法使いは、九歳の心で、世界の未来を、優しく照らし続けていた。
霧の港町は、少年の光と、魔法の書の響きに包まれながら、輝き続けていた。