杖くんと七歳の魔法使い ~深淵から帰還した少年は、今日もみんなの笑顔を守る~   作:redhot

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杖くんと空の限界

茨城県・百里飛行場は、秋の澄んだ空の下で静かな緊張に包まれていた。

第7航空団第305飛行隊に所属するF-4EJ ファントムIIが、滑走路に静かに待機している。

コックピットには、パイロットの神田鉄雄二等空尉と、ナビゲーターの栗原宏美二等空尉が乗っていた。

神田は熱血漢で、操縦桿を握る手には力がこもっていた。

栗原は冷静で、計器をチェックしながら的確に指示を出す。

トオルは、地上で杖くんを抱きしめながら、二人の機体を見上げていた。

九歳の少年は、飛行魔法の実験を自ら申し出ていた。

「神田さん、栗原さん……今日は、よろしくお願いします。

僕の飛行速度を、ファントムさんと比べてみますね」

神田の声が、無線を通じて響いた。

「了解だ、トオル君。

お前の魔法飛行、楽しみだぜ。

安全第一でな!」

栗原も、落ち着いた声で続けた。

「計測はこちらでしっかり取ります。

トオル君、無理はしないで」

トオルは頷き、軽く浮かび上がった。

杖くんの魔力が少年の体を包み、風の精霊たちが周囲に集まる。

一瞬で加速し、ファントムIIと並んで滑走路を駆け抜けた。

離陸。

ファントムIIがマッハ1を超えると、トオルも軽やかに追随した。

速度はみるみる上がり、ファントムの限界であるマッハ2を軽く突破した。

地上の観測隊は、計測器を見つめながら絶句した。

「マッハ2.5……3……4……5!

トオル君の速度、ファントムIIを遥かに超えています!」

神田が、無線で興奮した声を上げた。

「マッハ5だと……!?

ガキの魔法が、戦闘機の限界をぶち破ってるぞ!」

栗原も、冷静さを保ちながらも声が震えた。

「信じられない……

トオル君、すごい……」

トオルは、空中で軽く旋回しながら、無線に答えた。

「後、10倍の速度は出せますよ。

次は、大気圏を突破できるか実験したいな……」

地上に戻ったトオルを、胡蝶しのぶと胡蝶カナエが慌てて駆け寄った。

胡蝶しのぶが、優雅ながらも強い口調で注意した。

「ふふ……トオルくん、大気圏突破なんて危険すぎますわ。

絶対にやめてくださいね」

胡蝶カナエも、穏やかだが真剣な目でトオルの頭を撫でた。

「あらあら……トオルくん、無理はしないで。

あなたはまだ子供なんだから……」

トオルは、二人に優しく微笑みかけた。

「ごめんなさい……

でも、みんなを守るために、もっと強くなりたいんだ。

大丈夫、ちゃんと気をつけるよ」

杖くんが、トオルの耳元で優しく囁いた。

『トオルちゃん……胡蝶さんたちの言う通りよ。

あなたはもう、十分にすごいんだから。

無理はしないでね』

百里飛行場の滑走路では、ファントムIIが静かに着陸し、神田と栗原がコックピットから降りてきた。

二人は、トオルの姿を見て、ただただ驚嘆の表情を浮かべていた。

神田が、興奮を抑えきれずに言った。

「マッハ5……

お前は、本当に化け物だな、トオル君」

栗原も、静かに微笑みながら、

「これで、航空自衛隊の常識がまた一つ崩れましたね。

トオル君、ありがとう」

トオルは、みんなの顔を見て、にっこりと笑った。

「僕、みんなの役に立てて嬉しいよ。

これからも、がんばるね」

基地の外では、秋の風が静かに吹いていた。

ガンダムとザクが丘の上に立ち、犬型ゴーレムたちが山を守り、エルフの戦士たちが訓練を続ける。

トオルは、飛行魔法の実験を終え、静かに次の可能性を夢見ていた。

人類史上最大の魔法使いは、九歳の心で、空の限界を超え、

世界を守るための力を、優しく広げ続けていた。

霧の港町は、少年の光と、ファントムの轟音に包まれながら、輝き続けていた。

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