杖くんと七歳の魔法使い ~深淵から帰還した少年は、今日もみんなの笑顔を守る~ 作:redhot
岩内町の佐藤家は、夕暮れの柔らかな光に包まれていた。
夕食の支度をする母・美恵子の横で、姉のあかりと妹のみゆきが、テーブルを囲んで話し込んでいた。
トオルがダンジョンを探索し始めてから二年以上が経ち、二人は学校で「有名人」になっていた。
あかりは高校生になり、クラスメートからよくトオルの話を聞かれる。
彼女は弟のことを「トオル」と呼び、友人たちも自然と「トオルくん」と呼ぶようになっていた。
「今日もクラスでトオルくんの話が出たよ。
魔法の書が世界中に配られて、みんなで魔法が使えたらいいよね、って。
私も、トオルが作った回復魔法が学校で使えたら、怪我した友達をすぐに治せそう」
みゆきは、小学校に通うようになり、幼いながらも元気いっぱいに頷いた。
彼女は兄のことを「お兄ちゃん」と呼び、友達の前でも誇らしげに話す。
「お兄ちゃんの魔法の書、すごいんだよ!
私も早く魔法が使いたい!
みんなで魔法を使ったら、もっと楽しい学校になるよね!」
美恵子は、鍋をかき混ぜながら優しく微笑んだ。
「二人とも、トオルの話ばっかりね。
でも、本当に……トオルのおかげで、世界が変わり始めているわ。
魔法の書が無料で配られて、回復魔法が医療の現場でも使われ始めたって……
お母さん、毎日ニュースを見て胸がいっぱいよ」
あかりは、フォークを手にしながら少し寂しげに言った。
「トオル……今頃、基地でみんなと食べてるのかな。
私たちも、もっとトオルに会いたいよ。
でも、ダンジョンがあるから仕方ないよね」
みゆきは、ぬいぐるみをぎゅっと抱きしめながら、
「お兄ちゃん、早く帰ってきてね。
みんなで魔法の話、したい!」
家族の会話は、トオルの話題で自然と弾んだ。
昭和の小さな港町の家では、ネットなど存在しない時代に、テレビや新聞、そして家族の口からトオルの活躍が伝わっていた。
トオルは、そんな家族の想いを知らずに、基地の食堂でみんなと一緒に食事をしていた。
九歳の少年は、杖くんを抱きしめながら、優しく笑う。
「みんな、元気だね……
僕、今日もがんばってきたよ」
胡蝶しのぶが、優雅に微笑みながら、
「ふふ……トオルくん、あなたの魔法の書が、世界中で話題になっていますわ。
回復魔法が医療の現場で使われ始めたそうですよ」
胡蝶カナエが、穏やかに頷き、
「あらあら、家族のみなさんも、きっとトオルくんのことを話しているわね」
炭治郎が静かに、
「トオルくん……お前のおかげで、みんなが少しずつ希望を持てるようになった。
本当にありがとう」
トオルは、みんなの笑顔を見て、胸が温かくなった。
「うん……僕、もっとがんばるよ。
みんなが、笑顔でいられるように……」
杖くんが、トオルの耳元で優しく囁いた。
『トオルちゃん……あなたの家族も、学校であなたのことを自慢しているわ。
あなたは、遠く離れていても、みんなの心を繋いでいるのよ』
基地の外では、秋の風が静かに吹いていた。
ガンダムとザクが丘の上に立ち、犬型ゴーレムたちが山を守り、エルフの戦士たちが訓練を続ける。
岩内の佐藤家では、夕食のテーブルで、トオルの話題が尽きることなく続いていた。
姉と妹は、兄の活躍を胸に、明日も学校で自慢話を続けるだろう。
人類史上最大の魔法使いは、九歳の心で、世界の希望を、静かに紡ぎ続けていた。
霧の港町は、少年の光と、家族の温かな会話に包まれながら、輝き続けていた。