杖くんと七歳の魔法使い ~深淵から帰還した少年は、今日もみんなの笑顔を守る~ 作:redhot
アメリカ・カリフォルニア州の軍事企業ロッキードの極秘研究施設は、異様な熱気に包まれていた。
トオルが精錬したミスリルと、老竜の鱗・骨が大量に運び込まれていた。
アメリカ軍は、日本政府との極秘契約により、これらの素材を優先的に入手し、軍人用の武器と防具の開発を急ピッチで進めていた。
完成したミスリル製プロテクターを、試着した軍人が、呆然と立ち尽くした。
彼は、目の前の戦車砲を真正面から受けた。
轟音とともに爆炎が上がり、衝撃波が施設全体を震わせた。
しかし、プロテクターを着た軍人の体は、微動だにしなかった。
衝撃は一切伝わらず、着用者の体は守られていた。
軍人は、ヘルメットを外し、震える声で言った。
「……信じられない。
戦車砲を食らって……無傷。
衝撃すら、感じない……」
周囲の科学者や技術者たちは、言葉を失っていた。
日本でのミスリルの強度実験の映像は、すでに何度も見ていた。
しかし、実際に目の前で戦車砲が直撃する光景を目撃すると、驚愕は想像を遥かに超えた。
首席科学者が、汗を拭いながら断言した。
「地球上の物質で、同じ物は作れない。
分子構造自体が、既知の元素とは根本的に違う。
これは……神の領域だ」
老竜の鱗と骨についても、実験が繰り返されていた。
鱗はミスリルに匹敵する強度と軽量性を示し、骨はさらに硬く、加工性にも優れていた。
地球には存在しない生物や鉱石の分析結果は、論文がいくつも書けるほどの価値があった。
一人の研究者が、興奮を抑えきれずに言った。
「これだけの素材があれば、戦車も戦闘機も、根本から生まれ変わる。
トオルという少年がもたらした発見は、軍事産業全体を塗り替えるだろう」
アメリカ軍の将校は、プロテクターを着たままの軍人を見つめ、静かに呟いた。
「日本に、こんな子供がいる……
我々は、まだ現実を理解できていないのかもしれない」
一方、岩内基地では、トオルがそんな動きを知らずに、みんなと一緒に食事をしていた。
九歳の少年は、杖くんを抱きしめながら、優しく笑う。
「みんな、元気だね……
僕、今日もがんばってきたよ」
煉獄杏寿郎が、大きな声で笑いながら言った。
「うむ! トオル、お前のミスリルが、アメリカでも大騒ぎらしいぞ!
また、世界が変わるな!」
胡蝶しのぶが、優雅に微笑み、
「ふふ……ミスリル製のプロテクターが、戦車砲に耐えられるなんて……
トオルくん、あなたの素材が、世界の軍事を変えていますわね」
胡蝶カナエが、穏やかに頷き、
「あらあら、地球上に存在しない物質だなんて……
科学者さんたちも、論文がいくつも書けそうね」
炭治郎が静かに、
「トオルくん……お前のおかげで、みんなが少しでも安全になる。
本当にありがとう」
トオルは、みんなの笑顔を見て、胸が温かくなった。
「うん……僕、もっと採ってくるよ。
みんなが、安心して暮らせるように……」
杖くんが、トオルの耳元で優しく囁いた。
『トオルちゃん……あなたのミスリルが、遠いアメリカでも希望を生んでいるわ。
あなたは、ただ優しいだけ。それが、世界を変える力なのよ』
基地の外では、秋の風が静かに吹いていた。
ガンダムとザクが丘の上に立ち、犬型ゴーレムたちが山を守り、エルフの戦士たちが訓練を続ける。
アメリカの軍事企業は、トオルがもたらした素材を前に、夜を徹して開発を進めていた。
ミスリルと老竜の遺産は、静かに、しかし確実に、世界の軍事バランスを変えようとしていた。
人類史上最大の魔法使いは、九歳の心で、深淵の宝物を、ただ「みんなの為に」と届け続けていた。
霧の港町は、少年の優しさと、新たな鉱石の輝きに包まれながら、輝き続けていた。