杖くんと七歳の魔法使い ~深淵から帰還した少年は、今日もみんなの笑顔を守る~ 作:redhot
世界中の研究機関は、トオルが編集した『精霊魔法入門――人類のためのやさしい魔法』の一冊に翻弄されていた。
本は、無料で各国に配布された直後から、科学者たちの熱いまなざしを集めた。
アメリカのMIT、ドイツのマックス・プランク研究所、フランスのソルボンヌ大学、イギリスのオックスフォード……。
あらゆる国の研究室で、連日徹夜の実験が繰り返された。
「どうして、魔法が使えるようになるのか?」
「資質さえあれば、誰でも使えるというのか?」
「科学全盛の時代に、神話の時代の技術が復活したかのようだ……」
科学者たちは、魔法陣の描き方、精霊への呼びかけ方、魔力の流れを、顕微鏡や粒子加速器、脳波測定器で何度も分析した。
しかし、結果は常に「不明」。
魔法は、科学の枠組みでは説明がつかなかった。
資質のある人間が、ただ「信じて」呼びかけるだけで、実際に風を操り、炎を灯し、傷を癒す。
それは、科学万能を信じてきた者たちにとって、衝撃的な現実だった。
あるアメリカの物理学者は、研究室で徹夜を重ね、血走った目でノートに書き殴っていた。
「これは……科学とは別の側面なのだろうか?
我々が信じてきた法則が、根本から覆される……」
ドイツの生物学者は、魔法で花を咲かせる実験を繰り返しながら、疲れた声で呟いた。
「神話の技術が、現代に蘇った……
我々は、まだ知らない『力』の存在を、認めざるを得ない」
日本国内でも、大学や研究所で同じ光景が広がっていた。
科学者たちは、トオルの本を聖典のように読み込み、魔法の再現を試みた。
しかし、資質のない者は、どれだけ真似をしても何も起きなかった。
トオルは、そんな世界の動きを知らずに、基地の食堂でみんなと一緒に食事をしていた。
九歳の少年は、杖くんを抱きしめながら、優しく笑う。
「みんな、元気だね……
僕、魔法の書を配ったよ。
少しでも、みんなの役に立てたらいいな」
煉獄杏寿郎が、大きな声で笑いながら言った。
「うむ! トオル、お前の本は世界中で研究されているぞ!
科学者たちが、毎晩徹夜で魔法を解明しようと頑張っているらしい!」
胡蝶しのぶが、優雅に微笑み、
「ふふ……科学全盛の時代に、神話の技術が復活したかのよう……
トオルくん、あなたの優しさが、世界の常識を変えていますわね」
胡蝶カナエが、穏やかに頷き、
「あらあら、研究者さんたちが『科学とは別の側面』と言っているそうですわ。
トオルくんは、本当に特別な子ね」
炭治郎が静かに、
「トオルくん……お前のおかげで、魔法が『希望』になり始めている。
本当にありがとう」
トオルは、みんなの笑顔を見て、胸が温かくなった。
「うん……僕、もっとがんばるよ。
みんなが、笑顔でいられるように……」
杖くんが、トオルの耳元で優しく囁いた。
『トオルちゃん……科学者さんたちが、あなたの本に夢中になっているわ。
科学と魔法の狭間で、世界は少しずつ変わり始めているのよ』
基地の外では、秋の風が静かに吹いていた。
ガンダムとザクが丘の上に立ち、犬型ゴーレムたちが山を守り、エルフの戦士たちが訓練を続ける。
世界中の研究所では、科学者たちが徹夜で魔法の謎に挑み続けていた。
科学万能を信じてきた者たちにとって、それは神話の時代の技術が、現代に蘇ったかのような衝撃だった。
人類史上最大の魔法使いは、九歳の心で、世界の科学者たちに、
静かに新たな「可能性」を届け続けていた。
霧の港町は、少年の優しさと、科学と魔法の狭間に包まれながら、輝き続けていた。