杖くんと七歳の魔法使い ~深淵から帰還した少年は、今日もみんなの笑顔を守る~ 作:redhot
岩内町の小さな小学校は、いつもより少しだけ賑やかになっていた。
エルフの子供たちが、通うことになったのだ。
世界初の異種族の小学生として、報道陣が遠巻きにカメラを向け、町の人々も好奇の目で眺めていた。
しかし、トオルがかつて通っていた学校だけに、子供たちは驚くほど優しかった。
初登校の日、エルフの少女たちは、長い耳を少し恥ずかしそうに隠しながら教室に入った。
人間の子供たちは、すぐに笑顔で迎え入れた。
「わあ、耳が長いね! かわいい!」
「トオルくんが連れてきてくれたんだよね? よろしく!」
エルフの子供たちは、最初は緊張していたが、すぐに打ち解けた。
休み時間になると、みんなで輪になって座り、トオルの話をした。
「トオルお兄ちゃん、ダンジョンですごい魔法を使うんだって!」
「僕たちも、魔法を教えてほしいって言ったら、笑顔で『うん!』って言ってくれたよ」
「トオルお兄ちゃんの魔法の書、みんなで読んだ? 回復魔法、すごいよね!」
人間の子供たちも目を輝かせて聞き入った。
「トオルくん、僕らの学校にいた時は、優しかったよね。
今は基地にいるけど、時々手紙が来るよ。
『みんな、元気? 僕もがんばってるよ』って」
エルフの少年が、恥ずかしそうに笑った。
「トオルお兄ちゃんは、私たちをダンジョンから連れ出してくれたんだ。
地上に来てから、毎日が楽しいよ。
学校も、みんな優しいし……」
学校の周囲には、自衛隊と警察の合同チームが静かに警備についていた。
一部の過激なマスコミや活動家が、「異種族の子供を学校に通わせるのは危険だ」と騒ぐ可能性があったためだ。
しかし、子供たちはそんな緊張など感じさせず、休み時間には校庭で一緒に遊んだ。
エルフの子供が風の魔法で落ち葉を舞わせ、人間の子供たちが歓声を上げる。
トオルの話や魔法の話で、笑い声が絶えなかった。
放課後、トオルは基地から手紙を書いた。
「お姉ちゃん、みゆき、みんな元気?
エルフの子供たちが学校に通うようになったって聞いたよ。
みんな仲良くなれたら嬉しいな。
僕も、みんなの笑顔を守れるようにがんばるよ」
岩内の小学校では、トオルが通っていた頃の優しい空気が、今も変わらず残っていた。
世界初の異種族の小学生たちは、トオルの存在がもたらした温かな輪の中で、静かに新しい日常を始めていた。
トオルは、基地の食堂でみんなと一緒に食事をしながら、優しく微笑んだ。
「エルフの子供たち、学校で楽しんでるといいな……」
杖くんが、耳元で優しく囁いた。
『トオルちゃん……あなたの優しさが、学校にも広がってるわ。
異種族の子供たちも、人間の子供たちも、みんな笑顔でいられるように……あなたは、ちゃんと道を作ってるのよ』
基地の外では、秋の風が静かに吹いていた。
ガンダムとザクが丘の上に立ち、犬型ゴーレムたちが山を守り、エルフの戦士たちが訓練を続ける。
岩内の小学校は、トオルの思い出と、エルフの子供たちの笑顔に満ち、
世界で初めての「異種族共学」の一ページを、静かに刻み始めていた。
人類史上最大の魔法使いは、九歳の心で、遠く離れた学校の輪を、優しく見守り続けていた。
霧の港町は、少年の光と、子供たちの笑い声に包まれながら、輝き続けていた。