杖くんと七歳の魔法使い ~深淵から帰還した少年は、今日もみんなの笑顔を守る~ 作:redhot
アスラン王国の砂漠の基地は、スタンピードの爪痕がまだ生々しく残る中、静かに日常を取り戻しつつあった。
武器商人のマッコイじいさんは、いつものように埃っぽい作業小屋で、部品を磨きながら独り言のように呟いた。
周囲には、数人の傭兵たちが集まり、トオルが残した贈り物の話に耳を傾けていた。
「あの坊やは……人類の悲願の一つである不老長寿の薬を作れるらしいぞ。
しかも、人類の叡智以上の知識が詰まった図書館も所有しているって噂だ。
作る武具も、今の人類では装備できないから死蔵しているって言われている」
マッコイは、工具を置いて、遠くの空を見つめた。
「ダンジョンができたから坊やがいるのか、坊やがいるからダンジョンがあるのか……わからんらしい。
魔法って不思議な力があるんだから、あながち間違いではないのかもな」
傭兵の一人が、煙草をくわえたまま、低く笑った。
「マッコイじいさん……お前、随分と哲学的だな。
あのガキが、ただの子供だと思ってたが……
俺たち全員の命を救ったんだ。
不老長寿の薬まで作れるって本当なら、未来が変わるぜ」
別の傭兵が、ミスリル合金糸のパイロットスーツを手に取りながら言った。
「サイズが自動で調整されるってのも、信じられねえ。
あの坊やの魔法は、俺たちの常識を全部ぶっ壊してる。
図書館の噂も本当なら……人類の歴史が一気に進むかもな」
マッコイじいさんは、ゆっくりと頷いた。
「そうだ。
トオルって坊やは、ただの子供じゃない。
あいつがいる限り、世界は変わり続ける。
俺たちみたいな傭兵は、ただその波に乗るだけだ。
……それにしても、あの笑顔は忘れられねえな」
サキ・ヴァシュタルは、少し離れた場所でその会話を聞き、静かに目を細めた。
彼は、トオルが去った後の空を見つめながら、心の中で呟いた。
「トオル……お前は、俺たちの国を救ってくれた。
不老長寿の薬も、図書館も……本当なら、信じられない力だ。
だが、お前はただ『みんなを守りたい』と言っていた。
その純粋さが、俺たちを動かした」
基地の風が、砂を軽く巻き上げながら過ぎていった。
マッコイじいさんは、工具を再び手に取り、静かに作業を再開した。
「魔法ってのは、不思議な力だ。
坊やがいるからダンジョンがあるのか……
それとも、ダンジョンが坊やを呼んだのか……
いずれにせよ、あのガキは、世界を変える存在だ」
トオルは、そんな遠い国の人々の想いを知らずに、岩内の基地でみんなと一緒に食事をしていた。
九歳の少年は、杖くんを抱きしめながら、優しく笑う。
「みんな、元気だね……
僕、今日もがんばってきたよ」
胡蝶しのぶが、優雅に微笑みながら、
「ふふ……アスラン王国の人たちも、トオルくんのことを大切に思っているそうですわ。
あなたは、もう世界中の希望ですのよ」
トオルは、少し照れくさそうに笑った。
「うん……みんなが、笑顔でいられるように……」
杖くんが、トオルの耳元で優しく囁いた。
『トオルちゃん……あなたが残した贈り物が、遠い国で希望になっているわ。
不老長寿の薬や図書館の噂も……あなたの優しさが、世界を動かしているのよ』
基地の外では、秋の風が静かに吹いていた。
ガンダムとザクが丘の上に立ち、犬型ゴーレムたちが山を守り、エルフの戦士たちが訓練を続ける。
アスラン王国では、マッコイじいさんの言葉が、静かに傭兵たちの胸に残っていた。
「ダンジョンができたから坊やがいるのか、坊やがいるからダンジョンがあるのか……
いずれにせよ、あのガキは、世界を変える存在だ」
人類史上最大の魔法使いは、九歳の心で、遠い国に生まれた謎と感謝を、静かに受け止め続けていた。
霧の港町は、少年の優しさと、世界の不思議な因果に包まれながら、輝き続けていた。