杖くんと七歳の魔法使い ~深淵から帰還した少年は、今日もみんなの笑顔を守る~   作:redhot

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杖くんと陛下の怒り

ニューヨークの国連本部総会議場は、異様な緊張に包まれていた。

韓国代表が立ち上がり、マイクを握りしめ、声を荒げた。

「トオルという子供は、ただの運が良かっただけだ!

九歳のガキが、世界の知識を独占するなど許されない!

日本はトオルを道具にし、国際社会を欺いている!

あのような幼児が、深淵を探索できるはずがない!

すべては日本の陰謀だ!

トオルは、ただの偽物に過ぎん!」

会場がざわつき、各国代表が驚きの視線を向けた。

日本代表は、静かに立ち上がり、冷静に反論した。

「トオル君は、自力で850階まで到達し、無限の図書室の所有権を得ました。

その事実は、科学的にも、魔法の観点からも確認済みです。

韓国代表の主張には、一切の根拠がありません」

しかし、韓国代表の罵倒は続き、トオルを「幼児」「偽物」「日本の道具」と繰り返した。

その様子は、即座に世界中にニュースとして報道された。

日本国内では、大きな波紋が広がった。

皇居では、昭和天皇が、報道を見ながら静かに立ち上がった。

側近たちが慌てて集まる中、天皇は、穏やかだが明らかに怒りを帯びた声で声明を発表した。

「九歳の子供がした偉業を、なぜ称えられないのか?

あの子に、何の咎がある?

あの子が子供の身で、どれだけの苦労を重ねてきたと思う?

そこを、まずは理解しろ」

その言葉は、戦後初めて、天皇が公に強い不快感を示した瞬間だった。

温厚で知られる陛下の怒りに、政府関係者と政治家は全員、背筋に冷たい汗が流れた。

中曽根康弘総理大臣は、官邸で側近たちと顔を見合わせ、声を低くした。

「陛下が……あそこまでお怒りになるなんて……

これは、ただ事ではない」

安倍晋太郎外務大臣も、青ざめた顔で言った。

「トオル君の功績を、子供の身でどれだけ苦労したかを、まず理解しろ……

陛下のお言葉は、重い。

我々は、即座に対応しなければ」

国会では、与野党問わず、韓国代表の発言を非難する声が上がった。

テレビや新聞は、連日この話題で埋め尽くされた。

昭和の日本では、ネットなど存在しない時代。

人々は、ラジオやテレビ、新聞を通じて、天皇の声明を知り、静かに胸を痛めた。

岩内基地では、トオルがそんな騒動を知らずに、みんなと一緒に食事をしていた。

九歳の少年は、杖くんを抱きしめながら、優しく笑う。

「みんな、元気だね……

僕、今日もがんばってきたよ」

胡蝶しのぶが、優雅に微笑みながら、

「ふふ……陛下が、トオルくんのために声明を出されたそうですわ。

あなたのことを、とても心配してくださっているのよ」

胡蝶カナエが、穏やかに頷き、

「あらあら、陛下のお言葉は重いわ。

トオルくん、あなたは本当に、日本の宝です」

トオルは、少し驚いた顔で、

「陛下が……僕のために?

僕、何か悪いことしたのかな……」

煉獄杏寿郎が、大きな声で励ました。

「うむ! トオル、お前は何も悪くない!

陛下は、お前の苦労をちゃんとわかっておられる!

あのガキを罵倒した連中の方が、恥を知るべきだ!」

炭治郎が静かに、

「トオルくん……お前は、ただみんなの役に立ちたいだけだ。

陛下も、それを認めてくださっているよ」

トオルは、みんなの言葉に、胸が温かくなった。

「うん……僕、みんなの役に立ちたいだけだよ。

これからも、がんばるね」

杖くんが、トオルの耳元で優しく囁いた。

『トオルちゃん……天皇陛下が、あなたのことを想って怒ってくださったわ。

あなたの優しさが、陛下の心にも届いているのよ』

皇居では、天皇が静かに窓の外を見つめ、祈りを捧げていた。

「トオル君……どうか、無事で……

君の純粋な心が、傷つかぬように」

世界は、天皇の声明によって、トオルという少年の苦労と功績を、再び見つめ直すことになった。

人類史上最大の魔法使いは、九歳の心で、世界の声と、陛下の温かな想いを、静かに受け止め続けていた。

霧の港町は、少年の光と、天皇の祈りに包まれながら、輝き続けていた。

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