杖くんと七歳の魔法使い ~深淵から帰還した少年は、今日もみんなの笑顔を守る~   作:redhot

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杖くんと失われた文明の光

東京の国際会議場は、熱気と静かな緊張に満ちていた。

トオルが一部の知識を学会で発表すると決めた時、会場はいつも満員になった。

世界各地から高名な学者たちが足を運び、席は埋め尽くされ、廊下にまで人が溢れた。

九歳の少年は、壇上に立ち、杖くんを抱きしめながら、静かに話し始めた。

「今日は、人類の害にならないと判断した知識をお話しします。

アトランティス、ムー、レムリア……

人類の歴史から失われた文明と、古代に存在した言語についてです。

今の人類にはまだ早い知識は、除外して話します」

会場が息を飲んだ。

トオルは、淡い光の魔法で空中に映像を映し出した。

アトランティスの始まり――輝く水晶の都市と、調和した人々の生活。

ムーの繁栄――緑豊かな大地と、神秘的な技術。

レムリアの静かな智慧――自然と共生する穏やかな文化。

そして、終わり。

アトランティスの崩壊――驕りと争いが招いた大洪水。

ムーの滅び――大地の裂け目と、忘れられた警告。

レムリアの消滅――静かな別れと、遺された教訓。

トオルは、映像を消し、優しい声で言った。

「今の人類が、誤った選択をしないように……

これらの文明は、繁栄の果てに自らを滅ぼしました。

僕が知っているのは、始まりと終わりだけです。

でも、その教訓は、今の僕たちにも生きています」

会場は、静まり返った後、大きな拍手に包まれた。

考古学者、歴史学者、言語学者……誰もが、トオルの言葉と映像に心を奪われていた。

一人の老考古学者が、立ち上がって言った。

「アトランティスの文字……我々が解読できなかったものが、すべて読めるとは……

トオル君、あなたは人類の失われた歴史を、生きている証人です」

別の言語学者が、震える声で続けた。

「失われた言語を、すべて読み書きできる……

しかも、精神を汚染する文字の存在まで知っている。

これは、革命です」

トオルは、壇上で小さく頭を下げた。

「僕、ただ……みんなが、幸せになれるようにって思っただけです。

これらの知識が、少しでも役に立てば嬉しいです」

学会の後、トオルは基地に戻り、みんなと一緒に食事をした。

九歳の少年は、杖くんを抱きしめながら、優しく笑う。

「みんな、今日はいろんな話をしたよ。

アトランティスやムーのこと……

みんなが、誤った道を選ばないようにって思ったんだ」

胡蝶しのぶが、優雅に微笑みながら、

「ふふ……トオルくん、あなたの発表は、世界中の学者さんたちを驚かせていますわ。

失われた文明の始まりと終わりを、映像で見せたなんて……」

胡蝶カナエが、穏やかに頷き、

「あらあら、精神を汚染する文字の存在まで……

トオルくんは、本当に人類の歴史を守っているのね」

炭治郎が静かに、

「トオルくん……お前のおかげで、人類は過去の過ちを、学べるようになる。

本当にありがとう」

トオルは、みんなの笑顔を見て、胸が温かくなった。

「うん……僕、もっとがんばるよ。

みんなが、笑顔でいられるように……」

杖くんが、トオルの耳元で優しく囁いた。

『トオルちゃん……あなたが発表した知識が、世界の学者さんたちの心を動かしているわ。

失われた文明の教訓が、今の人類に届いているのよ』

基地の外では、秋の風が静かに吹いていた。

ガンダムとザクが丘の上に立ち、犬型ゴーレムたちが山を守り、エルフの戦士たちが訓練を続ける。

トオルは、無限の図書室で得た知識を、人類の役に立つ形で少しずつ公開し続けていた。

九歳の少年の優しさは、失われた文明の影を、静かに照らし続けていた。

人類史上最大の魔法使いは、九歳の心で、世界の過去と未来を、優しく繋ぎ続けていた。

霧の港町は、少年の光と、古代の叡智の響きに包まれながら、輝き続けていた。

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