杖くんと七歳の魔法使い ~深淵から帰還した少年は、今日もみんなの笑顔を守る~ 作:redhot
世界中の学会や研究機関では、トオルの講演が大きな話題となっていた。
特にアトランティス、ムー、レムリアの話は、学者たちの間で繰り返し議論された。
存在そのものも、どのように終焉を迎えたかも、もはや疑いようがなかった。
トオルが実際にその知識を持っているからだ。
十歳の子供でありながら、彼が所有する知識の量は、世界中の学問を合わせても何倍も上回ると言われた。
失われた言語の話になると、言語学者たちは必死にノートに書き留め、次の講演を心待ちにするほどだった。
ある国際学会の懇親会では、学者たちがワイングラスを手に、熱く語り合っていた。
「トオル君の言う『人類の誤った選択』……
戦争以上に、ダンジョンのことを指しているのだろう。
アスラン王国の惨劇を見れば、あれがどれほど恐ろしいかは理解できる。
もしかして、それ以上に恐ろしい事が待っているのか?
ダンジョンとは、何なのか……」
インド人の学者が、目を輝かせて言った。
「次の講演では、ブラフマーストラとは何かを教えてほしいな。
古代の核兵器なのか、それとも本当に神の力なのか……
ラーマーヤナなどで書かれている物なのか?
早く知りたい」
別の学者が、グラスを回しながら続けた。
「それよりも、世界各地にあるとされる聖遺物のことが聞きたい。
神話の遺物が、今も実際に存在するのかを。
宗教学が一夜で変わる可能性もある」
イギリスの老学者が、声を潜めて言った。
「イギリスで言えば、エクスカリバーが発見されたら大変だぞ。
王を選定する剣だ。
大変な事になるだろう」
その時、イギリス人学者が、トオルに直接質問した場面が思い出された。
学会の質疑応答で、彼は真剣な顔で尋ねた。
「トオル君……エクスカリバーは、本当に存在するのか?」
トオルは、静かに頷いた。
「あります。
アーサー王と共に眠っています。
人々のために十分頑張ったんだから、眠らせてあげよう。
それくらいは、許されるはずだから」
会場は、静まり返った後、大きなざわめきに包まれた。
学者たちは、興奮と驚嘆の声を上げた。
「本当に……存在するのか」
「アーサー王と共に……
これは、歴史が変わる」
トオルは、そんな世界の動きを知らずに、基地の食堂でみんなと一緒に食事をしていた。
九歳の少年は、杖くんを抱きしめながら、優しく笑う。
「みんな、元気だね……
僕、今日もがんばってきたよ」
胡蝶しのぶが、優雅に微笑みながら、
「ふふ……トオルくん、あなたの講演は、世界中の学者さんたちを夢中にさせていますわ。
アトランティスやムー、レムリアの話……
失われた文明の秘密を、十歳のあなたが知っているなんて」
胡蝶カナエが、穏やかに頷き、
「あらあら、言語学者さんたちは、失われた言語の話に夢中だそうですわ。
次の講演を心待ちにしているとか」
炭治郎が静かに、
「トオルくん……お前のおかげで、人類の過去が、少しずつ明らかになっていく。
本当にすごいよ」
トオルは、みんなの笑顔を見て、胸が温かくなった。
「うん……僕、みんなの役に立ちたいだけだよ。
これからも、がんばるね」
杖くんが、トオルの耳元で優しく囁いた。
『トオルちゃん……学者さんたちが、あなたの知識に夢中になっているわ。
失われた文明の教訓が、今の人類に届いているのよ』
基地の外では、秋の風が静かに吹いていた。
ガンダムとザクが丘の上に立ち、犬型ゴーレムたちが山を守り、エルフの戦士たちが訓練を続ける。
トオルは、失われた文明の知識を、慎重に選びながら、
静かに世界に届け続けていた。
人類史上最大の魔法使いは、九歳の心で、過去の叡智と未来の希望を、優しく繋ぎ続けていた。
霧の港町は、少年の光と、世界の好奇心に包まれながら、輝き続けていた。