杖くんと七歳の魔法使い ~深淵から帰還した少年は、今日もみんなの笑顔を守る~ 作:redhot
イギリスの湖の底、霧に包まれた古の神殿で、湖の貴婦人モーガン・ル・フェイは静かに佇んでいた。
彼女の姿は、黒と銀の衣を纏い、長い銀髪が水のように流れ、冷たい青い瞳に、妖精の王としての威厳と、深い孤独を宿していた。
モーガンは、湖の底に眠る聖剣エクスカリバーを優しく見つめ、静かに呟いた。
「今の人類では、エクスカリバーを扱える資格はない。
王を選定するこの剣は、ただの象徴ではなく、運命を定める力。
安易に地上に現れれば、世界は混乱する」
彼女の横に、静かに現れたのは、アーサー王――アルトリア・ペンドラゴンだった。
金色の髪を短く整え、青い瞳に王としての責任と優しさを湛えた彼女は、聖剣を見つめながら穏やかに言った。
「モーガン……トオルという子が来たなら、別ではあるが。
あの子は、世界を混乱させたくないと考えるだろう。
全ては、人々が幸せに笑えるように、と考えている子なのだから」
モーガンは、わずかに唇を緩め、冷たい笑みを浮かべた。
「ええ……あの子の純粋さは、知っている。
だからこそ、待つしかない。
いつか、私とアーサーが、トオルの元に馳せ参じるかもしれないな」
その時、影から現れたのは、モードレッドだった。
赤い髪を短く切り、緑の瞳に熱い反骨心を宿した彼女は、聖剣を睨みながら、静かに呟いた。
「あの子は……私の半身。
いつの日か、想いを遂げる。
待っていてくれ、トオル……」
モーガンは、モードレッドの言葉に、わずかに目を細めた。
「モードレッド……お前の想いは、強いな。
しかし、今はまだ時ではない。
トオルが、自らの道を歩むのを、見守ろう」
湖の底は、再び静寂に包まれた。
エクスカリバーは、静かに輝き続け、
アーサー、モーガン、モードレッドの三人は、遠い日本の少年を想いながら、
それぞれの決意を胸に、眠るように佇んでいた。
トオルは、そんな遠い湖の想いを知らずに、基地の食堂でみんなと一緒に食事をしていた。
九歳の少年は、杖くんを抱きしめながら、優しく笑う。
「みんな、元気だね……
僕、今日もがんばってきたよ」
胡蝶しのぶが、優雅に微笑みながら、
「ふふ……トオルくん、あなたの存在は、遠い国にも影響を与えていますわ。
聖剣の話も、世界を動かしています」
トオルは、少し首を傾げた。
「エクスカリバー……?
僕、ただ本当のことを話しただけだよ……」
杖くんが、トオルの耳元で優しく囁いた。
『トオルちゃん……湖の貴婦人たちも、あなたのことを想っているわ。
いつか、きっと出会う日が来るのよ』
基地の外では、秋の風が静かに吹いていた。
ガンダムとザクが丘の上に立ち、犬型ゴーレムたちが山を守り、エルフの戦士たちが訓練を続ける。
湖の底では、モーガンが静かに微笑み、
アーサーが穏やかに目を閉じ、
モードレッドが、熱い瞳で遠くを見つめていた。
「トオル……
私の半身よ。
待っていてくれ……」
人類史上最大の魔法使いは、九歳の心で、伝説の剣と守護者たちの想いを、
知らぬ間に、静かに受け止め続けていた。
霧の港町は、少年の光と、湖の底の祈りに包まれながら、輝き続けていた。