杖くんと七歳の魔法使い ~深淵から帰還した少年は、今日もみんなの笑顔を守る~ 作:redhot
自衛隊基地の厨房は、いつにも増して活気に満ちていた。
雪の降る窓の外では、ガンダムとザクが白く染まり、犬型ゴーレムたちが静かに見守る中、トオルは収納魔法から次々と新たな食材を取り出していた。
「みんな……これ、今日見つけたんだ。
きっと美味しいと思うよ」
トオルは、九歳の笑顔でそう言いながら、大きなバスケットに並べていく。
まず現れたのは、クリーム松茸。
見た目は普通の松茸そっくりなのに、切った瞬間に濃厚なクリームの香りがふわりと広がる。
次にアーモンドキャベツ。
葉のひとつひとつがアーモンドの風味を帯び、しゃきしゃきとした食感のあと、優しい甘みが残る。
にんにく鳥は、まるで鶏の体全体がにんにくの香りをまとった魔物で、焼くだけで食欲をそそる匂いが基地中に広がった。
そして、ザリガニフィッシュ。
全長七・五メートルの巨大な魚で、頭部にザリガニのような強靭なハサミを生やしている。
鱗は銀色に輝き、身は締まった白身ながら、独特の甘みと旨味が凝縮されていた。
最後に、ガララワニ――三十階のFOE(強力な個体)として知られる、滅多に現れない希少な巨大鰐だった。
体長は十メートルを超え、鋼のような鱗に覆われた凶暴な外見ながら、肉はあばれうしどりに匹敵する極上の味わいを持つ。
トオルは、即死魔法で苦痛を与えずに仕留め、短く黙禱を捧げてから収納した。
「ガララワニは……本当に珍しいよね。
三十階でしか出会わないのに、今日は運が良かったみたい」
トオルは、杖くんを抱きしめながら嬉しそうに言った。
基地の市場は、即座に大騒ぎになった。
仲買人たちが雪を蹴散らして駆けつけ、一流シェフたちが基地近くのレストランから飛んでくる。
特にガララワニの肉は、わずかな量でも即完売。
あばれうしどりに負けない極上肉として、海外のバイヤーからも緊急の問い合わせが殺到した。
厨房では、胡蝶しのぶが優雅に包丁を動かしながら、
「ふふ……トオルくん、また素晴らしい食材を。
このガララワニ、焼くだけでこんなに香ばしいなんて……
今夜はみんなで味わいましょうね」
胡蝶カナエが、穏やかに微笑みながら、
「あらあら、ザリガニフィッシュのハサミ部分も、茹でると最高ですわ。
クリーム松茸はスープに、アーモンドキャベツはサラダに……
トオルくんのおかげで、基地の食卓が世界一贅沢です」
煉獄杏寿郎が、豪快に笑いながら、
「うむ! このにんにく鳥の香りだけで飯が十杯はいけるぞ!
トオルよ、よくぞ持ち帰った!」
炭治郎は、静かに肉を切り分けながら、
「トオルくん……いつもありがとう。
家族にも、また美味しいものを送れるな」
トオルは、みんなの笑顔を見て、胸がいっぱいになった。
お酒の匂いと同じく、強い食材の香りも少し苦手だったけれど、
それ以上に、みんなが喜んでくれることが、何よりも嬉しかった。
杖くんが、トオルの耳元で優しく囁いた。
『トオルちゃん……あなたは本当に、優しすぎるわ。
新しい食材を見つけるたび、みんなの笑顔が増えるのね』
トオルは、杖くんをぎゅっと抱きしめ、
「うん……みんなが、美味しいって言ってくれるのが、一番嬉しいんだ。
僕、もっとがんばって、いい食材持って帰ってくるよ」
基地の外では、雪が静かに降り積もり始めていた。
ガンダムとザクは白く染まり、犬型ゴーレムたちが静かに見守る中、
トオルは、今日もまた、みんなの笑顔を守るために、静かに歩み続けていた。
人類史上最大の魔法使いは、九歳の心で、新たな極上食材を胸に、
ただ、世界を優しく照らし続けていた。
霧の港町は、少年の光と、雪の白さと、極上の香りに包まれながら、輝き続けていた。