杖くんと七歳の魔法使い ~深淵から帰還した少年は、今日もみんなの笑顔を守る~   作:redhot

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杖くんと胡蝶姉妹の冷たい視線

自衛隊基地の休憩室は、雪の降る窓から入る淡い光に照らされ、いつもより少し緊張した空気が漂っていた。

トオルは、小さな体をソファの端に縮こまらせ、杖くんを抱きしめたまま、うつむいていた。

九歳の少年の頰は、ほんのり赤く染まっている。

胡蝶しのぶが、優雅に腕を組み、いつもの微笑みを浮かべながらも、声は静かに冷ややかだった。

「トオルくん……また、あのような刺激的な女性キャラクターを召喚なさったのですわね?

あなたはまだ九歳ですのよ? いくら魔法でも、限度というものがありますわ」

胡蝶カナエも、穏やかな笑顔のまま、しかし瞳は氷のように澄んでいた。

「あらあら……トオルくん、男の子だからって、なんでも許されるわけではありません。

あの召喚は、ちょっと早すぎますわ。

私たち姉妹が、しっかりお説教しないといけませんね」

トオルは、ますます小さくなって、

「ごめんなさい……

僕、ただ、ゲームのキャラクターがどんな人か知りたくて……

でも、すぐ解除したよ……」

そこへ、煉獄杏寿郎が、豪快に笑いながら割って入った。

「はっはっは! 胡蝶の二人よ、少々待て!

トオルも男の子だ! 少しぐらいの好奇心は、許してやれ!

わしも若い頃は――」

炭治郎が、慌てて煉獄の袖を引いた。

「煉獄さん……それは、ちょっと……」

善逸と伊之助も、冷や汗を浮かべながら、

「え、えっと……煉獄さん、今日は静かに……」

しかし、胡蝶姉妹は同時に、ゆっくりと煉獄の方へ顔を向けた。

二人の視線は、穏やかだが、底冷えするほど冷たい。

熟練の自衛隊員である煉獄杏寿郎でさえ、その視線を受け止めた瞬間、言葉を失った。

「……」

煉獄の笑顔が、ぴたりと凍りつく。

炭治郎、我妻善逸、嘴平伊之助も、揃って冷や汗を流し、息を潜めた。

しのぶが、優しい声で、しかし有無を言わせぬ調子で言った。

「煉獄さん……トオルくんは、まだ守られるべき子供ですのよ?

男の子だから、で済ませる話ではありませんわ」

カナエが、穏やかに微笑みながら、

「あらあら……煉獄さん、炭治郎さんたちも、ご自分の立場をわきまえてくださいね。

トオルくんのお世話は、私たち姉妹が責任を持っております」

煉獄は、珍しく額に汗を浮かべ、

「……わ、わかった。

すまん、胡蝶の二人」

炭治郎たちが、揃って深く息を吐いた。

その日の夜、基地の奥の部屋で、後日談を聞いた孔雀と王仁丸、ギムリたちは、揃って胸をなでおろした。

孔雀が、煙草をくわえながら、

「ふう……あの場にいなくて、本当に助かったぜ。

胡蝶姉妹のあの視線……俺でも凍りつきそうだ」

王仁丸が、冷たい笑みを浮かべながら、

「神父……お前があそこで『トオルも男なんだから』なんて言ったら、即座に呪禁をかけられていたな」

ギムリが、髭を震わせて、

「はっはっは! わしも酒を飲んでいてよかった!

あの姉妹の冷たい目……ドワーフの誇りでも、正面から受け止めたくはないぞ!」

トオルは、そんな騒ぎを知らずに、休憩室の隅で杖くんを抱きしめていた。

九歳の少年は、しょんぼりとしながらも、優しく微笑んだ。

「僕……みんなに迷惑かけちゃったね……

でも、胡蝶さんたち、怒ってるけど、優しいよね」

杖くんが、トオルの頰にそっとキスをして、いたずらっぽく囁いた。

『トオルちゃん……あなたは本当に、優しすぎるわ。

胡蝶姉妹の説教も、みんなの心配も、全部、あなたを想ってのことよ。

少しの欲も、ちゃんと受け止めてあげてね』

基地の外では、雪が静かに降り積もり始めていた。

ガンダムとザクは白く染まり、犬型ゴーレムたちが静かに見守る中、

トオルは、今日もまた、みんなの笑顔を守るために、静かに歩み続けていた。

人類史上最大の魔法使いは、九歳の心で、優しいお説教と仲間たちの温かさを胸に、

ただ、世界を優しく照らし続けていた。

霧の港町は、少年の光と、雪の白さに包まれながら、輝き続けていた。

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