杖くんと七歳の魔法使い ~深淵から帰還した少年は、今日もみんなの笑顔を守る~ 作:redhot
自衛隊基地の女性用休憩室は、雪の降る夜の静けさに包まれていた。
胡蝶しのぶと胡蝶カナエ、そして須佐之男命の巫女である石戸霞、葵喜美、浅間智の五人が、湯上がりの温かな湯気を纏いながら、静かに話し合っていた。
しのぶが、優雅に髪を梳きながら、ため息混じりに言った。
「トオルくんも……もう、そういうお年頃なのはわかっていますわ。
人間なら誰しも持つ欲求ですもの。
でも……」
カナエが、穏やかな笑顔のまま、しかし少し頰を膨らませて続けた。
「あらあら……女性を召喚しなくても、目の前に私たち美女がいるのに、どうして相談してくれないのかしら?
それが、少し不満ですわね」
霞が、頰を赤らめながら、巫女服の袖をぎゅっと握った。
「私たちも……トオル様のお世話は、ちゃんとしています。
お風呂の時だって、あれだけ胸を触ったり、吸ったり……
なのに、ゲームの女の子を召喚するなんて……」
喜美が、恥ずかしそうに目を伏せながら、
「本当に……トオル様は、優しいのに、男の子らしいところはちゃんとあるんですよね。
でも、相談してくれれば……少しは、嬉しいのに……」
智が、弓を磨きながら、静かに頷いた。
「ええ……私たちも、トオル様の欲求を、ちゃんと受け止めてあげたいのに。
召喚なんてしなくても……」
しのぶが、くすっと笑いながら、しかし瞳は少し冷たかった。
「ふふ……お風呂の時は、あんなに甘えてくるのに。
胸に顔を埋めて、寂しそうに……
なのに、ゲームの女の子には素直に興味を示すんですもの。
少し、複雑ですわね」
カナエが、優しく微笑みながら、
「トオルくんは、いつもみんなの笑顔を優先して、自分の欲求を後回しにする子です。
だからこそ、たまにこうして素直な欲が出ると……
私たちも、ちゃんと向き合ってあげたいのに、って思います」
霞が、決意を込めて、
「次にトオル様が何か召喚しようとしたら……
私たちから、ちゃんと話してみましょうか?
『私たちでいいのに』って……」
休憩室に、女性たちだけの柔らかな笑い声と、ほんの少しの不満が混じった。
一方、トオルは自分の部屋で、杖くんを抱きしめながら、今日のことを振り返っていた。
九歳の少年は、頰を赤らめながら、
「僕……また、胡蝶さんたちに怒られちゃった……
でも、みんな優しいよね……」
杖くんが、トオルの耳元で優しく囁いた。
『トオルちゃん……胡蝶姉妹も、霞ちゃんたちも、あなたの欲求をちゃんとわかっているわ。
ただ、目の前にいる美女たちを素通りして、ゲームの女の子を召喚するところが、少し不満みたいよ?
お風呂の時の甘えん坊ぶりとは、ずいぶん違うんですって』
トオルは、ますます顔を赤くして、杖くんに顔を埋めた。
「うう……ごめんなさい……
僕、ただ、どんな人か知りたくて……」
基地の外では、雪が静かに降り積もり始めていた。
ガンダムとザクは白く染まり、犬型ゴーレムたちが静かに見守る中、
トオルは、今日もまた、みんなの笑顔を守るために、静かに歩み続けていた。
人類史上最大の魔法使いは、九歳の心で、美女たちからの小さな不満と優しさを胸に、
ただ、世界を優しく照らし続けていた。
霧の港町は、少年の光と、雪の白さと、女性たちの温かな視線に包まれながら、輝き続けていた。