杖くんと七歳の魔法使い ~深淵から帰還した少年は、今日もみんなの笑顔を守る~   作:redhot

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杖くんと影と血と無限の領域

自衛隊基地の広大な訓練場は、雪の降る白い空の下で静かに息づいていた。

トオルは、九歳の小さな体を中央に置き、杖くんを抱きしめたまま、静かに目を閉じていた。

無限の図書館で得た膨大な知識が、今、少年の内で新たな形に結実しようとしていた。

「これ……呪術廻戦の力。

十種影法術、赤血操術、無下限呪術、不義遊戯……領域展開……

みんなの役に立つように、ちゃんと最適化してみるね」

トオルは、優しい声で呟きながら、手をゆっくりと動かした。

まず、十種影法術。

影が地面から盛り上がり、二匹の神犬が現れる。

白と黒の毛並みが雪のように輝き、トオルの指示に従って訓練場の端を駆け回った。

次に赤血操術。

掌から鮮やかな血の糸が伸び、訓練用の標的を正確に貫く。

無下限呪術では、周囲の空間がわずかに歪み、飛んできた訓練弾がゆっくりと止まり、地面に落ちた。

不義遊戯は、手を叩くだけで空間を入れ替え、遠くの標的を瞬時に自分の前に引き寄せた。

そして――領域展開。

トオルは小さく息を吸い、

「領域展開――」

しかし、そこまでで止めた。

まだ、基地内で本気で展開するのは危険すぎる。

胡蝶しのぶが、訓練場の端から優雅に近づきながら、

「ふふ……トオルくん、すごいわね。

でも、領域展開は……もう少し外で、ね?」

カナエも、穏やかに微笑みながら頷いた。

「あらあら……本当に、知識を吸収するのが早いですわ。

でも、基地が壊れたら困りますから」

トオルは、照れたように頰を赤らめ、

「うん……ごめんなさい。

みんなが安全に訓練できるように、調整してるんだけど……」

その時、トオルはさらに一歩踏み出した。

無限の図書館にあった最強の式神――八握剣異戒神将魔虚羅を、調伏しようとしたのだ。

影が深く渦を巻き、巨大な影がゆっくりと形を成し始め――

「待て、トオル!」

煉獄杏寿郎が、雷のような声で叫んだ。

炭治郎、善逸、伊之助が一斉に駆け寄り、胡蝶姉妹も素早くトオルの両脇に立った。

「トオルくん……魔虚羅は、調伏の余波だけで基地が半壊しますわよ?」

「ええ……今の私たちでは、受け止めきれません。

もう少し、トオルくんが強くなってからにしましょうね」

トオルは、影をすぐに収め、申し訳なさそうに頭を下げた。

「ごめんなさい……

みんなを守るための力なのに、逆に壊しちゃうなんて……

僕、もっと慎重にやるね」

煉獄が、豪快に笑いながらも、額の汗を拭った。

「うむ! トオルの気持ちはわかるが、基地がなくなっては元も子もない!

わしらも、もっと強くなるぞ!」

孔雀と王仁丸、ギムリたちは、遠くからその光景を見て、揃って胸をなでおろした。

「はは……俺たちがいたら、絶対に止めに入ってたな……」

「神父……あの式神の調伏、余波だけで基地半壊とは……

トオルは本当に規格外だ」

ギムリが、髭を震わせて笑った。

「はっはっは! わしらも、あの場にいなくて正解だった!」

トオルは、訓練場の端で杖くんを抱きしめ、静かに息を吐いた。

「みんな……ありがとう。

僕、もっと上手く使えるようにがんばるよ」

杖くんが、トオルの耳元で優しく囁いた。

『トオルちゃん……あなたは本当に、優しすぎるわ。

新しい力を手に入れても、みんなの安全を一番に考える……

それが、あなたの魔法よ』

基地の外では、雪が静かに降り積もり始めていた。

ガンダムとザクは白く染まり、犬型ゴーレムたちが静かに見守る中、

トオルは、今日もまた、みんなの笑顔を守るために、静かに歩み続けていた。

人類史上最大の魔法使いは、九歳の心で、影と血と無限の領域を胸に、

ただ、世界を優しく照らし続けていた。

霧の港町は、少年の光と、雪の白さに包まれながら、輝き続けていた。

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