杖くんと七歳の魔法使い ~深淵から帰還した少年は、今日もみんなの笑顔を守る~ 作:redhot
自衛隊基地の特別資料室は、世界中から届いた未解決事件のファイルで埋め尽くされていた。
厚い封筒、写真、現場の記録、遺留品のリスト――警察機関や国際捜査機関が、トオルの力と知識を求めて持ち込んだものばかりだった。
トオルは、九歳の小さな体でソファに座り、杖くんを抱きしめたまま、一つ一つの資料に目を落としていた。
無限の図書館の力を借りれば、過去の映像を呼び起こすことも、真実しか語れなくする魔法をかけることも可能だった。
科学捜査と魔法捜査が徐々に融合し始め、証拠としての価値も認められつつあった。
「これ……お母さんが殺された事件……
過去映像で見れば、犯人がわかるよね……」
トオルは、静かに呟いた。
その瞳には、優しさと同時に、深い責任の重さが宿っていた。
胡蝶しのぶが、優雅に資料を整理しながら、
「トオルくん……世界中の警察が、あなたの力を頼りにしていますわ。
無限の図書館の知識は、科学では解けない謎を次々と解き明かしています」
胡蝶カナエが、穏やかに微笑みながら、
「あらあら……過去映像の魔法や、真実しか話せなくなる魔法……
どちらも、裁判の証拠として十分通用するようになってきましたね。
トオルくん、あなたは罪には罰を、と考えてくれているのですね」
トオルは、ファイルをそっと閉じ、静かに言った。
「うん……僕は、罪には罰があると思う。
人を傷つけた人は、ちゃんと罰を受けなきゃいけない。
……でも、僕もいつか裁かれる時が来るのかな。
僕の召喚した存在や魔法で、たくさんのモンスターを倒してきた。
人を死地に追いやっているのかもしれない……」
その言葉に、孔雀が静かに近づき、トオルの頭に大きな手を置いた。
生臭坊主の顔が、珍しく真剣だった。
「トオル……お前がしていることは善行だ。
例え世界中の人間が否定しても、俺はお前を認めてやる。
だから、お前は正しいと思う道を歩け。
それがお前の定めだ」
トオルは、孔雀の大きな手に包まれ、わずかに目を細めた。
「孔雀さん……ありがとう。
でも、僕……本当に正しいのかな……」
そこへ、王仁丸が、冷たい笑みを浮かべながらも、静かに言った。
「甘いヤツだな。
だが、お前のその優しさは、少なくとも俺は嫌いじゃない。
罪を裁くのも、お前が守るのも、全部お前の選択だ」
ギムリが、髭を震わせて笑った。
「はっはっは! トオルよ、わしらドワーフは、罪を犯した者はちゃんと罰する。
だが、お前は罪など犯していない。
むしろ、罪を犯そうとする者を止めてくれているんだぞ!」
天上の神々もまた、遠くからトオルを見守っていた。
天照大御神、月読命、須佐之男命、そして他の神々は、静かに手を振った。
「人のために戦い、人の幸福を願うあの子のどこに罪がある?
死後裁判であろうとも、無罪だろう」
トオルは、みんなの言葉を聞きながら、杖くんをぎゅっと抱きしめた。
「僕……罪には罰を、って思う。
でも、みんながこう言ってくれるなら……
これからも、がんばってみるよ。
みんなが笑顔でいられるように」
杖くんが、トオルの耳元で優しく囁いた。
『トオルちゃん……あなたは罪など犯していないわ。
ただ、優しすぎるだけ。
世界中の警察が、あなたの力を必要としている……
それは、あなたが正しい道を歩んでいる証よ』
基地の外では、雪が静かに降り積もり始めていた。
ガンダムとザクは白く染まり、犬型ゴーレムたちが静かに見守る中、
トオルは、今日もまた、みんなの笑顔を守るために、静かに歩み続けていた。
人類史上最大の魔法使いは、九歳の心で、罪と罰と無限の知識を胸に、
ただ、世界を優しく照らし続けていた。
霧の港町は、少年の光と、雪の白さに包まれながら、輝き続けていた。