杖くんと七歳の魔法使い ~深淵から帰還した少年は、今日もみんなの笑顔を守る~ 作:redhot
自衛隊基地の開発工房は、炉の赤い炎と魔力の淡い光が交差し、夜を徹して熱気を孕んでいた。
トオルは、九歳の小さな体を作業台の前に座らせ、杖くんを抱きしめたまま、静かに手を動かしていた。
50階前後で倒した強力なモンスターの素材を、丁寧に並べながら、新しい装備を生み出そうとしていた。
「みんなが……もう少し深くまで、安全に行けるように。
これで、少しでも力になれたらいいな」
まず取りかかったのは、ショウグンギザミの素材だった。
巨大な甲殻と、鎌のような鋭い爪、硬質の殻から生まれる装備は、
「ショウグンギザミシリーズ」と名付けられた。
胸当ては深紅の甲殻を重ね、肩当ては巨大な鎌を模した形状で、攻撃を受け流す性質を持っていた。
兜はギザミの頭部を思わせる威容を湛え、全体に「斬撃耐性」と「雷属性強化」のエンチャントを施した。
軽量でありながら、並の刀では傷一つつかない強度を誇る。
次に、ディアブロスの素材を使った装備。
角と骨、厚い鱗から生まれた「ディアブロスシリーズ」は、重厚で攻撃的なデザインだった。
胸当てはディアブロスの頭骨を思わせる形状で、突進攻撃を大幅に軽減する。
兜の角は本物のディアブロスの角を加工したもので、突撃時の威力が増す。
「地属性耐性」と「物理攻撃力強化」が強く、50階の角竜たちと渡り合うための、まさに「王者の鎧」だった。
これらの装備は、極めて高い性能を誇っていたが、
装着に必要な魔力と身体能力が桁違いだったため、
煉獄杏寿郎をはじめとする自衛隊の精鋭の一部しか身に着けられなかった。
それでも、50階という階層は人類にとって依然として脅威の魔境だった。
ミスリルや各種モンスター素材で作られた最先端の装備をもってしても、
50階以降は「人間が踏み入るべき場所ではない」と評されるほど過酷だった。
モンスターの強さもさることながら、環境自体が人類を苦しめていた。
漂う空気は毒素と濃密な魔力に満ち、呼吸するだけで体力を削り、
長時間いると幻覚や魔力中毒に陥る者も出ていた。
地面は不安定で、突然の地形変化や毒の霧、極端な温度差が探索者を襲う。
煉獄杏寿郎は、新たなショウグンギザミの胸当てを身に着け、
訓練場で軽く体を動かしながら、満足げに笑った。
「うむ! この鎧……素晴らしいぞ、トオル!
ギザミの鎌を思わせる肩当てが、攻撃を美しく受け流す!
これがあれば、50階でももう少し長く戦える!」
炭治郎が、ディアブロスの角兜を手に取りながら、静かに言った。
「重いけれど……この守りは確かだ。
でも、環境の変化が激しい……
空気自体が毒になる階層もある。
トオルくんがいてくれなければ、僕たちはとっくに撤退を繰り返していたよ」
トオルは、作業台の上で小さな手を休め、みんなの顔を見て優しく微笑んだ。
「みんな……無事に帰ってこれてよかった。
僕、もっとみんなが長く戦える装備を作りたい。
50階がまだ魔境みたいだから……
少しでも、楽になるように」
胡蝶しのぶが、優雅に近づきながら、
「ふふ……トオルくん、あなたの作ったショウグンギザミとディアブロスの装備は、
すでに精鋭たちの命を何度も救っていますわ。
それでも、まだ先がある……それがダンジョンの恐ろしさですものね」
胡蝶カナエが、穏やかに頷いた。
「あらあら……環境の毒や魔力の濃さは、装備だけでは防ぎきれない部分もあります。
トオルくんの優しさが、みんなの支えになっていますわ」
トオルは、みんなの言葉に照れながらも、静かに言った。
「うん……僕、がんばるよ。
みんなが、家族のところに帰れるように」
杖くんが、トオルの耳元で優しく囁いた。
『トオルちゃん……ショウグンギザミの鎧、ディアブロスの角兜……
あなたが作る武具は、どれも「守りたい」という気持ちから生まれている。
50階がまだ魔境でも、あなたがいる限り、希望は消えないわ』
基地の外では、雪が静かに降り積もり始めていた。
ガンダムとザクは白く染まり、犬型ゴーレムたちが静かに見守る中、
トオルは、今日もまた、みんなの笑顔を守るために、静かに歩み続けていた。
人類史上最大の魔法使いは、九歳の心で、深淵の新たなる素材と過酷な環境を胸に、
ただ、世界を優しく照らし続けていた。
霧の港町は、少年の光と、雪の白さに包まれながら、輝き続けていた。