杖くんと七歳の魔法使い ~深淵から帰還した少年は、今日もみんなの笑顔を守る~   作:redhot

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杖くんと因果を斬る剣と優しき世界の願い

自衛隊基地の最深部にある特別実験室は、雪の降る外の静けさと対照的に、魔力の淡い光と静かな緊張に満ちていた。

トオルは、九歳の小さな体を中央の円形台に座らせ、杖くんを抱きしめたまま、静かに目を閉じていた。

無限の図書館から得た膨大な知識を基に、ミスリル刀を新たな次元へと昇華させる実験が、今、始まろうとしていた。

「杖くん……僕、みんなを守るために、もっと強くなりたい。

ミスリル刀を、魂と一つにする。

斬魄刀のように、始解と卍解ができるように……

人類が、少しでも生きて帰ってこれるように」

トオルは、優しい声で呟きながら、手に持ったミスリル刀「エウレカ」に魔力を注ぎ込んだ。

刀身は銀色の輝きを増し、少年の魂の精髄をゆっくりと写し取っていく。

これは第一段階――特殊能力を持たないまま、寝食を共にし、刀に自身の本質を刻み込む作業だった。

杖くんは、人の姿でトオルの隣に座り、銀髪を優しく撫でながら見守った。

「トオルちゃん……あなたは本当に、優しすぎるわ。

エウレカは、あなたの願いそのもの。

魂が写し取られていく……ゆっくりでいいのよ」

数日後、トオルはエウレカを手に、静かに解号を唱えた。

これは第二段階――始解。

「I wish. For all existence to smile. For a kind world. A power that does not yield to unreasonableness.

エウレカ!」

刀身が淡い光を放ち、始解が発動した。

エウレカの能力は「斬る」ではなく、「斬ったという因果を逆転させる」ものだった。

トオルが視認した対象を、物理的・霊的・魔法的防御を完全に無視して切断する。

他の因果逆転能力のカウンターすら可能で、攻撃の意志がなくても、トオルやエウレカが「攻撃」と認めた瞬間、無効化できる。

トオルは、実験用の標的を前に、静かに刀を振るった。

標的は、斬られた痕跡すら残さず、ただ「すでに斬られていた」状態になった。

少年は、穏やかな瞳で刀を見つめ、

「これで……みんなの敵を、もっと優しく倒せるよね」

さらに最終段階――卍解。

トオルは、深く息を吸い、静かに言葉を紡いだ。

「卍解。

A kind world is here now. Wrapped in gentle light, evil existence begone.」

エウレカが輝き、世界と一つとなった。

トオルを中心とした半径数百キロの領域が展開され、あらゆる攻撃を無効化する。

因果逆転であろうとも、時間停止であろうとも、トオルとエウレカが「攻撃」と認めた瞬間、全てを無力化する。

ただし、今のトオルの力では、展開できる限界時間は十秒だった。

トオルは、領域が消えた後、軽く息を吐き、微笑んだ。

「十秒……まだ短いけど、みんなを守る時間にはなるよね。

もっと長くできるように、がんばるよ」

胡蝶しのぶが、訓練場の端から優雅に近づきながら、

「ふふ……トオルくん、始解も卍解も、本当に素晴らしいですわ。

因果を逆転させるなんて……あなたらしい、優しい力ですもの」

胡蝶カナエが、穏やかに頷いた。

「あらあら……十秒でも、命を救う時間には十分ですわ。

トオルくんの願いが、刀にちゃんと宿っています」

煉獄杏寿郎が、豪快に笑いながら、

「うむ! トオルの剣は、まさに優しき世界を守る剣だ!

50階以上の魔境でも、これがあれば希望が見えるぞ!」

トオルは、みんなの言葉に照れながらも、静かに言った。

「うん……僕、みんなが笑顔でいられるように、

この力をちゃんと使いたい。

死ぬ人が、一人でも減るように」

杖くんが、トオルの耳元で優しく囁いた。

『トオルちゃん……エウレカは、あなたの魂そのもの。

始解も卍解も、全部「優しき世界」のための力。

あなたは本当に、素晴らしい魔法使いよ』

基地の外では、雪が静かに降り積もり始めていた。

ガンダムとザクは白く染まり、犬型ゴーレムたちが静かに見守る中、

トオルは、今日もまた、みんなの笑顔を守るために、静かに歩み続けていた。

人類史上最大の魔法使いは、九歳の心で、因果を斬る剣と優しき世界の願いを胸に、

ただ、世界を優しく照らし続けていた。

霧の港町は、少年の光と、雪の白さに包まれながら、輝き続けていた。

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