杖くんと七歳の魔法使い ~深淵から帰還した少年は、今日もみんなの笑顔を守る~ 作:redhot
北海道の自衛隊基地は深い雪に覆われていた。
白い大地にガンダムとザクの巨体が静かに佇み、犬型ゴーレムたちがゆっくりと巡回を続け、基地全体が冬の静寂に包まれている。
そんな朝、特別滑走路では政府専用機が静かに待機していた。
機体は白と青の塗装に輝き、雪の光を反射して幻想的に見えた。
トオルは、九歳の小さな体を厚いコートに包み、杖くんを抱きしめながら、基地の入り口に立っていた。
隣にはコッコロが寄り添い、エルフの少女らしい優しい笑顔を浮かべている。
召喚獣の面々――ニンジャスレイヤー、グイン、D、メフィスト、ガンダルフ、アラゴルン、レゴラス、ボロミア、ギムリ、そしてデスナイトやエルダーリッチたち――は、ダンジョンで間引きや依頼をこなすため、すでに深層へと向かっていた。
彼らはトオルに「安心して行ってこい」と言い残し、影のように消えていた。
胡蝶しのぶと胡蝶カナエ、そして須佐之男命の巫女である石戸霞、葵喜美、浅間智の面々が、トオルの周りを囲んでいた。
彼女たちは最後までついて行きたがったが、煉獄杏寿郎、炭治郎、善逸、伊之助、そして孔雀や王仁丸、ギムリたちの説得で、ようやく基地で帰りを待つことに納得していた。
それでも、出発直前まで、彼女たちの心配は止まなかった。
胡蝶しのぶが、優雅にトオルのコートの襟を直しながら、柔らかい声で繰り返した。
「トオルくん……絶対に、変な女の人について行っては駄目ですわよ?
イギリスは遠い国ですもの。
知らない人に声をかけられても、すぐに自衛隊の人やコッコロちゃんに相談なさいね」
胡蝶カナエが、穏やかな笑顔のまま、しかし瞳に強い光を宿して、
「あらあら……トオルくんは優しいから、つい甘えてしまいがちですけれど、
お姉さんたちが心配していますのよ。
変な女の人に誘われたら、すぐに『いけません』って言って、逃げてくださいね」
石戸霞が、巫女服の袖をぎゅっと握り、頰を赤らめながら、
「トオル様……私たちも本当は一緒に行きたいんです。
でも、煉獄さんたちが説得してくださったので……
変な人に近づかれたら、すぐに教えてくださいね」
葵喜美と浅間智も、揃ってトオルの手を握り、
「トオル様、絶対に大丈夫ですよ。でも、気をつけて……」
トオルは、みんなの心配を優しく受け止め、小さく頷いた。
「うん……みんな、ありがとう。
僕、変な人にはついていかないよ。
コッコロちゃんと杖くんがいるから、大丈夫」
煉獄杏寿郎が、豪快に笑いながら胡蝶姉妹の肩を叩いた。
「はっはっは! 胡蝶の二人よ、もう十分に言っただろう!
トオルは賢い子だ。
俺たちが基地でしっかり待っているから、安心して行ってこい!」
炭治郎が、静かに微笑みながら、
「トオルくん……君の優しさが、イギリスでもみんなを救うよ。
無事に帰ってくるのを待っている」
孔雀が、煙草をくわえたまま、
「ははっ、トオル……変な女に引っかかるなよ。
お前はまだ子供だぞ」
王仁丸が、冷たい笑みを浮かべながら、
「甘いヤツ……だが、気をつけろ。
俺たちも基地で待ってる」
ギムリが、髭を震わせて、
「はっはっは! トオルよ、英国の酒を土産に持って帰ってこい!」
トオルは、みんなの言葉に包まれ、胸が温かくなった。
コッコロが、トオルの手をそっと握り、
「トオル様……私も一緒にいますから。
安心してください」
杖くんが、トオルの耳元で優しく囁いた。
『トオルちゃん……みんなの愛情が、こんなに溢れているわ。
イギリスに行っても、あなたの優しさがきっと道を開くのよ』
政府専用機のタラップが下り、トオル、コッコロ、杖くん(人の姿で)が乗り込んだ。
機内は広々とし、窓から雪景色が見渡せた。
離陸の瞬間、トオルは窓に顔を寄せ、基地に残るみんなに小さく手を振った。
機内では、静かな時間が流れた。
コッコロが、トオルの隣で紅茶を淹れながら、
「トオル様、イギリスはどんなところでしょうか。
エクスカリバーのお話、ちゃんと伝えられるといいですね」
トオルは、窓の外の雲海を見つめながら、
「うん……エクスカリバーは、アーサー王と共に眠っている。
それを、ちゃんと伝えてくるよ。
みんなが、笑顔になれるように……」
杖くんが、トオルの肩に寄りかかり、
「トオルちゃん……あなたはいつも、優しいわ。
イギリスでも、きっと素敵な出会いがあるはずよ」
飛行中、トオルは無限の図書館の知識を振り返りながら、
エクスカリバーの詳細を思い浮かべていた。
湖の貴婦人モーガン・ル・フェイやアーサー、モードレッドの存在も、静かに心に留めていた。
コッコロは、トオルの手を握り、時折エルフの古い歌を小さな声で歌ってくれた。
数時間後、専用機はイギリスの空港に着陸した。
滑走路には、イギリス政府と王室の関係者が出迎えに立っていた。
彼らは、トオルが幼い少年であることを知りながらも、深く敬意を払った態度で迎えた。
「トオル少年、ようこそイギリスへ。
王室と政府を代表して、心より歓迎いたします。
エクスカリバーの件について、じっくりお話ししたいと思います」
トオルは、丁寧に頭を下げ、
「よろしくお願いします。
僕、知っていることを、ちゃんと話します」
イギリス滞在の初日は、ホテルでゆっくり休む予定だった。
トオルは、窓から見えるロンドンの街並みを眺めながら、静かに思った。
「ここがイギリス……
みんなの国を守るために、ちゃんと役に立ちたい」
杖くんが、トオルの隣で優しく微笑んだ。
『トオルちゃん……あなたはすでに、世界を変えているわ。
イギリスでも、あなたの優しさが光るはずよ』
遠く北海道では、胡蝶姉妹が基地の窓から空を見つめ、
煉獄たちが静かに見守っていた。
トオルの旅は、こうして始まった。