杖くんと七歳の魔法使い ~深淵から帰還した少年は、今日もみんなの笑顔を守る~   作:redhot

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杖くんと英国の空と幼き精霊の歓声

イギリスの空港は、雪混じりの冷たい風が滑走路を吹き抜け、灰色の空の下で厳重な警備に包まれていた。

政府専用機が滑らかに着陸し、タラップがゆっくりと下りる。

まず降り立ったのは、コッコロだった。

エルフの少女は、トオルの手を引くように優しく微笑みながら、周囲の景色を静かに見回した。

次に、杖くんが人の姿で現れ、銀髪を風に揺らしながらトオルの肩に寄り添った。

そして、トオル本人が、厚いコートに包まれた小さな体で現れた。

九歳の少年は、雪の匂いがする英国の空気を深く吸い込み、穏やかな笑みを浮かべた。

その時、トオルの傍らに浮かぶ二つの光が、輝きを増した。

エウレカの姉妹精霊――生まれたてで、まだ幼い双子の精霊たちだった。

彼女たちは、初めて見る異国の空港に興奮し、キラキラと光る小さな姿で周囲を飛び回り始めた。

「わあ! これが空を飛ぶ鉄の鳥! 大きい! すごい!」

一人の精霊が、滑走路に停まる航空機を見てはしゃぎ、もう一人が大勢の人間を見て目を輝かせた。

「人間がいっぱい! みんな違う服着てる! あの人、黒いコートでかっこいい!」

精霊たちは、警備の警察官や政治関係者たちの間を、蝶のように舞いながら飛び回った。

特に、アーカードの姿を見つけると、興味深げに近づき、赤い瞳の周りをくるくる回った。

アーカードは、赤い瞳を細め、興味深くその光を見つめ返した。

「ふふ……可愛いな、小さな精霊たち。

トオル、お前の剣の精霊か?」

トオルは、少し慌てて手を伸ばし、

「エウレカ……ちょっと、みんなの迷惑にならないようにね」

精霊たちは、くすくすと笑いながら今度はインテグラルとウォルターの近くへ飛んでいった。

インテグラルは、葉巻をくわえたまま、眼鏡の奥でわずかに目を細めた。

ウォルターは、穏やかな笑みを浮かべながら、

「これは……大変に活発な精霊さんたちですね」

セラスは、太陽の光を避けるため、今回は警備には参加していなかった。

アーカードは、太陽が嫌いなだけで、平然と外に立っていた。

政府高官の一人が、トオルに近づき、深く頭を下げた。

「トオル少年、ようこそイギリスへ。

王室と政府を代表して、心より歓迎いたします。

エウレカの件については、後ほどゆっくりと……」

トオルは、丁寧に頭を下げ、

「よろしくお願いします。

僕、知っていることを、ちゃんと話します」

エウレカの姉妹精霊は、まだ興奮冷めやらぬ様子で、空港の天井を飛び回り、

「ここ、広い!」「人間の匂いがする!」「あの黒い人が、なんかすごい!」と、楽しげに囁き合っていた。

アーカードは、そんな精霊たちを、珍しい玩具を見つけた子供のように興味深く観察し続けていた。

トオルは、そんな光景を見て、優しく微笑んだ。

「エウレカ……みんな、落ち着いてね。

イギリスに来たんだよ。

エクスカリバーのこと、ちゃんと伝えよう」

杖くんが、トオルの耳元で優しく囁いた。

『トオルちゃん……エウレカの姉妹たち、初めての外国で大はしゃぎね。

あなたが連れてきたことで、イギリスも少し賑やかになったわ』

コッコロが、トオルの手をそっと握り、

「トオル様……私も、一緒にがんばります」

政府の車列が、厳重な警備のもと空港を離れた。

トオルは、窓から見えるイギリスの街並みを眺めながら、静かに思った。

ここで、エクスカリバーの真実を伝え、みんなが笑顔になれるように――

イギリス全土が、九歳の魔法使いの到着に沸き立っていた。

企業は資源の交渉を、学者は知識を、王室は聖剣の真実を、それぞれ胸に秘めて。

トオルの旅は、こうして本格的に始まった。

基地に残った胡蝶姉妹は、遠い空を見つめ、

煉獄たちは静かに祈るように見守っていた。

遠く離れた日本とイギリスの空を、一人の少年の優しさが繋いでいた。

人類史上最大の魔法使いは、九歳の心で、英国の地に足を踏み入れ、

ただ、世界を優しく照らし続けていた。

霧の港町は、少年の光と、雪の白さに包まれながら、輝き続けていた。

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