杖くんと七歳の魔法使い ~深淵から帰還した少年は、今日もみんなの笑顔を守る~ 作:redhot
岩内の霧はまだ濃く、基地の地下では地図が更新され続けていた。トオルは杖くんを握り、仮面ライダー1号と2号、V3、ストロンガー、グイン、D、マシュ、ニンジャスレイヤー、そしてメフィストを従えて、五十階へ足を踏み入れた。三十階以降の空気は重く、魔力が肌を刺すように濃密だった。
突然、空間が裂けた。
巨大な翼が広がり、青白い鱗に覆われた飛竜が現れた。フルフル――モンスターハンターの飛竜種。体長は二十メートルを超え、頭部は竜のような鋭い角と牙。背中から生えた巨大な翼は膜状で、青みがかった体躯は雷を帯び、口を開けば電撃の息を吐く。尻尾は長く、先端が鞭のようにしなり、地面を叩けば衝撃波が生まれる。空を舞いながら、獲物を狙う姿はまさに悪魔の化身。銃弾など通用せず、戦車ですら一撃で粉砕する怪物。
フルフルは咆哮を上げ、雷の息を吐いた。電撃が空間を焼き、地面が焦げる。
トオルは静かに息を吐き、杖を掲げた。
「ごめんね……」
即死の魔法。痛みなく、安らかに。フルフルの巨体が、雷を吐きかけた瞬間、ふっと力を失った。翼が畳まれ、鱗が震え、地面に崩れ落ちる。苦痛の叫びはなかった。ただ、静かな眠り。
トオルは両手を合わせ、短く祈った。
「ありがとう……無駄にしないよ」
仮面ライダーたちが骸を収納空間へ運び、グインが豹頭を下げ、Dが影のように頷く。ニンジャスレイヤーは無言で拳を握り、マシュが盾を構え直した。
「もし自衛隊の皆さんがここにいたら……言葉通り、全滅だったね」
トオルは小さく呟いた。杖くんが優しく頷く。
『ええ、トオルちゃん。銃火器じゃ、雷の一撃で溶かされるわ。あなたがいてくれて、本当に良かった』
五十階の深層は、そんな脅威の始まりに過ぎなかった。
一方、二十階では新たな発見があった。マッドオックス――ドラゴンクエスト3の狂牛。巨大な牛の姿で、体は黒く、角は鋭く曲がり、赤い目が狂気を宿す。突進力は凄まじく、地面を抉りながら突っ込んでくる。肉質は驚くほど柔らかく、脂の甘みが強い。高級肉として市場に投入され、一流料亭で「マッドオックスステーキ」が即完売。ジューシーで、噛むほどに旨味が広がる。
沼蛇――トリコの沼地に棲む巨大な蛇。体長十メートルを超え、鱗は黒くぬめり、脂の乗った部位はウナギに似た味わい。蒲焼にすると、身がふっくらと弾け、甘辛いタレが絡んで絶品。市場では「沼蛇の蒲焼」が高級食材として人気を博し、シェフたちが争って仕入れる。
ヘビガエル――トリコの沼地に棲む巨大なカエル。体は緑がかった灰色で、舌が長く、毒を持つが、身は珍味として珍重される。皮を剥ぎ、塩焼きや煮込みにすると、鶏肉のような弾力と独特の風味。市場では「ヘビガエルの珍味セット」がプレミア価格で取引され、食通たちが「一度は味わいたい」と列をなす。
基地の食堂では、二十階の新食材が並んだ。マッドオックスのステーキ、沼蛇の蒲焼、ヘビガエルの煮込み。隊員たちが箸を止めず、満足げに頰を緩める。
煉獄杏寿郎が大口を開けて笑う。
「うむ! マッドオックス、最高だ! トオル、よくやったぞ!」
胡蝶しのぶが優雅に微笑み、
「ふふ、沼蛇の蒲焼、甘みが素晴らしいですわ」
胡蝶カナエが穏やかに頷き、
「あらあら、ヘビガエルも意外に美味しいわね」
炭治郎は静かに一口味わい、目を細める。
「家族にも……いつか」
トオルはみんなの笑顔を見て、胸が温かくなった。杖くんが耳元で囁く。
『トオルちゃんの優しさが、五十階の恐怖すら、地上の恵みに変えてるわ』
五十階の飛竜は倒され、二十階の新食材は市場を賑わす。
深淵はさらに深いが、少年の心は変わらず優しい。
人類史上最大の魔法使いは、祈りを捧げながら、地上へ恵みを届け続けていた。
霧の港町は、食と鋼と希望の街として、静かに輝き続けている。