杖くんと七歳の魔法使い ~深淵から帰還した少年は、今日もみんなの笑顔を守る~ 作:redhot
基地の地下施設は、相変わらず鉄の匂いが濃く、蛍光灯の白い光が冷たく照らす。トオルは毎日、30階から150階までのダンジョンを往復していた。探索はもはや遊びではなく、使命に近くなっていた。
ダンジョンは不思議な場所だった。物理法則など、ただの飾り。重力は気まぐれに変わり、壁は時折脈を打つように動く。地球の生き物に似た怪物がうじゃうじゃいて、どれも凶暴で、どれも――美味しかった。
「杖くん、今日もたくさん持って帰れるかな」
杖の姿をしたレディ・アヴァロンは、トオルの隣で優雅に微笑む。銀髪が揺れ、緑の瞳がいたずらっぽく光る。
『もちろんよ、トオルちゃん。あなたが望むなら、何だって手に入るわ』
今日の獲物は、ダンジョンサーモン。海や湖の階層に群れる巨大な魚で、体長二メートルを超える。鱗は虹色に輝き、身はホンマグロに劣らない脂の乗り。トオルは鮭が大好物で、探索のたびにこれを狙って持ち帰る。仮面ライダー1号が静かに持ち上げ、2号が警戒しながら運ぶ。
「これ、お母さんに食べさせてあげたいな」
トオルは優しく呟く。家族とはまだ再会していない。国はトオルを秘匿し、研究対象として守っている。だが、心の中ではいつも両親と姉と妹の顔が浮かぶ。
次に現れたのは、ダンジョンボア。猪に似た魔物で、体長五メートル前後。肉は柔らかく、ジューシーで、大量に採れる。だが、畜産との兼ね合いで市場に出回るのはごくわずか。トオルはエルダーリッチに指示を出し、静かに屠る。エルダーリッチは青白い眼窩を輝かせ、落ち着いた声で応じる。
「主よ。肉は新鮮に保ちましょう」
デスナイトは無言で頷き、巨大な斧で正確に解体する。妖精たちは周囲を舞い、傷を癒す光を放つ。
市場で特に高値がつくのは、あばれうしどり。牛と鳥の良いところ取りをした魔物だ。体は牛のように頑丈で、翼を生やし、短い手羽のような前肢を持つ。二足歩行で、突進が猛烈。だが、肉質は極上。一流料亭が争って買い取る。トオルは召喚したストロンガーが一撃で仕留め、持ち帰る。
「これ、美味しいんだろうなあ」
松茸の代わりになるダンジョン茸も人気だ。姿も匂いも味も本物そっくり。トオルは丁寧に採取し、袋に詰める。
おばけキノコもまた、意外な食材。強烈な顔と短い手足がついたキノコの怪物。大きいながら、出汁にしても焼いても美味。胞子を撒いて眠らせる攻撃をするが、トオルの結界で防がれ、V3が蹴り飛ばす。
「へえ、キノコなのにこんなに大きいんだ」
何より頭を傾げるのは、空飛ぶキャベツ。文字通り、葉を羽のように広げて浮遊するキャベツ型の魔物。味は普通のキャベツそのもの。トオルは笑いながら一つ摘まむ。
「なんで飛ぶんだろう……でも、普通に美味しいよ」
食材だけではない。装備に使える怪物も多い。
ランポスは森の小型鳥竜。青みがかった鱗と鋭い爪。群れで襲ってくるが、革は軽く丈夫。加工すれば軽量防具になる。ギアノスは白い鱗の寒冷地適応種。氷属性の息を吐く。鱗は防寒効果が高く、雪山探索に最適。
ブランゴは雪山の牙獣。白い体毛に大きな牙。マンドリルのような姿で、バックステップを多用する。毛皮は暖かく、革は頑丈。
ポポは巨大な草食獣。反り返った牙と長い体毛。マンモスに似た巨体で、家畜にできそうだ。トオルはこれを観察しながら思う。
「これ、牧場で飼えたら……みんなお腹いっぱい食べられるのに」
そして、最大の騒ぎを起こしたのは鉱石だ。
マカライト鉱石。青みがかった輝きを持つ、地球に存在しない金属。精製すればマカライト鋼になる。ドラグライト鉱石はさらに希少。輝竜石とも呼ばれ、良質な武器や防具の素材。
自衛隊の科学者たちは大興奮。分析室は徹夜続き。杏寿郎が大声で笑う。
「うむ! これで新しい兵器が作れるぞ! トオル、よくやった!」
炭治郎が穏やかに頷く。
「すごいですね、トオルくん。僕たちじゃ到底行けない場所から……」
善逸は冷静に、だが興奮を抑えきれず。
「これ、革命ですよ。素材の質が全然違う」
伊之助は腕を組んで。
「よし! もっと狩ってこい! 俺も手伝うぞ!」
しのぶは微笑みながら、トオルの頭を撫でる。
「ふふ、トオルくん。疲れてない? 無理はしないでね」
カナエがお茶を差し出す。
「そうよ。あなたはもう、みんなの希望なんだから」
トオルは杖くんを抱きしめるように握る。
「うん……僕、もっと強くなるよ。みんなを守るために。家族にも、早く会いたい」
杖くんが優しく囁く。
『ええ、トオルちゃん。私がついてるわ。どんな深淵も、どんな恵みも、あなたのものよ』
仮面ライダーたちが並ぶ。1号、2号、V3、ライダーマン、アマゾン、X、ストロンガー。デスナイトが無言で頷き、エルダーリッチが静かに語る。
「主よ。我らは永遠に」
妖精たちが光を散らし、微笑む。
トオルは深呼吸した。
「行こう。次はもっと深い階層へ」
少年と超魔導兵器の杖と、ヒーローたちと軍勢。
深淵の恵みを携え、地上へ還る道は、まだ続く。
人類史上最大の魔法使いの、恵みと戦いの物語は、終わらない。