杖くんと七歳の魔法使い ~深淵から帰還した少年は、今日もみんなの笑顔を守る~ 作:redhot
岩内自衛隊基地の資材置き場は、霧の朝に再び異様な光景に包まれていた。
トオルは杖くんを握り、創造魔法の陣を地面に描いた。八歳の少年の瞳は、優しさと少しの興奮で輝いていた。
「海で困ってる人たちと、山で遭難しちゃう人たちを……助けたい」
光が凝縮し、空間が歪む。
まず、海難事故用のイルカ型ゴーレムが生まれた。
全長約十メートル。滑らかな銀灰色のボディに、青いラインが走る。背びれは鋭く、尾びれは力強く、目は柔らかな青い光を放つ。どれだけ荒れた海でも平然と泳ぎ、鮫や危険な海洋生物を周囲から排除する特殊な音波を発する。音波は低周波で、人間にはほとんど聞こえないが、海の捕食者たちを遠ざけ、遭難者を守る。体内には簡易的な救命スペースがあり、酸素供給装置と暖房機能が備わっている。
次に、山岳事故用の犬型ゴーレム。
体長約五メートル。大型犬を模した姿で、毛並みは白銀色。目は黄金に輝き、鼻先は鋭く、尻尾はふさふさ。どれだけの高所や猛吹雪でも行動可能。雪崩が起これば、自動的に防御フィールドを発動し、遭難者を包み込む。体内は簡易的な避難所となっており、暖房、酸素、非常食料が備え付けられている。
二種類のゴーレムは、静かに立ち上がった。イルカ型は水面を思わせる滑らかな動きで浮かび上がり、犬型は四肢を踏ん張り、雪を蹴るように構えた。
基地の隊員たちが、再び大騒ぎになった。
「また……!? 今度はイルカと犬!?」
「十八メートルのガンダムに続いて……これはもう、基地の名物だな」
煉獄杏寿郎三佐が大声で笑い、
「うむ! 素晴らしい! これで、海難と山岳遭難の救助が革命的に変わるぞ!」
胡蝶しのぶが優雅に微笑み、
「ふふ……トオルくんったら、なんて優しい発想ですの。海と山の守護神ですわね」
胡蝶カナエが穏やかに頷き、
「あらあら、遭難者の命が、こんなに守られるなんて……」
炭治郎が静かに拳を握った。
「僕たちも、もっと安心して探索できる……ありがとう、トオルくん」
実験配置が即座に決定した。
イルカ型ゴーレム十体は、海上自衛隊に引き渡され、北海道周辺の荒れた海域に配備された。荒波の中を平然と泳ぎ、遭難船の周囲を巡回。鮫の群れが近づけば、低周波音波で追い払い、遭難者を背中に乗せて安全な場所まで運ぶ。海上自衛隊の隊員たちは、最初は呆然としていたが、実際に救助訓練でその性能を見ると、感嘆の声を上げた。
「これ……本当に子供が作ったのか? もう、俺たちの艦艇より頼りになるぞ」
犬型ゴーレム十体は、山岳警備隊に配備された。北海道の山岳地帯――特に吹雪の激しい大雪山系や、遭難多発の知床連山に配置。猛吹雪の中を疾走し、雪崩が起きれば自動防御フィールドを展開。遭難者を体内に収容し、暖房と酸素を供給しながら救助隊を待つ。山岳警備隊の隊員たちは、最初は「犬?」と首を傾げたが、実際に吹雪の中で遭難者を救出する姿を見ると、涙を浮かべた。
「これで……毎年、何人も助けられる」
トオルは広場で、二種類のゴーレムを見上げた。
「みんな、無事に帰ってきてね……」
ガンダムとザクが静かに並び、イルカ型と犬型が新たに加わった。基地は、鋼と魔法の守護者たちに囲まれていた。
エルフの子供たちが、犬型ゴーレムの背中に乗って遊び、イルカ型の背びれに手を触れて歓声を上げる。
トオルは杖くんを抱きしめ、優しく微笑んだ。
「僕、もっと作ろうかな……みんなが、もっと安全になるように」
杖くんが耳元で優しく囁いた。
『トオルちゃん……あなたは、もう世界の守護者よ。海も山も、みんなあなたに感謝してるわ』
海上自衛隊の艦艇が、イルカ型を伴って荒波を切り裂く。山岳警備隊の隊員が、犬型と共に吹雪を進む。
ガンダムとザクは、基地の空を仰ぎ、静かに見守る。
人類史上最大の魔法使いは、八歳の心で、命を救う夢を、現実の奇跡に変え続けていた。
霧の港町は、鋼の守護者たちに囲まれ、静かに、しかし確実に、希望の街へと変わり続けていた。