杖くんと七歳の魔法使い ~深淵から帰還した少年は、今日もみんなの笑顔を守る~ 作:redhot
アフガニスタン国境近くの隠れ家。砂埃の舞うテントの奥、薄暗いランプの明かりだけが揺れていた。オセロットはいつものようにコルト・シングル・アクション・アーミーを指先で回しながら、静かに報告を始めた。声は冷静で、しかしどこか皮肉めいている。
「ボス……面白い報告が入りましたよ。日本でね。八歳の子供が、魔法で巨大なロボットを作ったそうです。全長十八メートル。ガンダムとザク……という名前らしい。アニメそのままの姿で動いている。しかも、それだけじゃない。海難救助用のイルカ型ゴーレムと、山岳救助用の大型犬型ゴーレムまで数百体創造したとか」
ネイキッド・スネーク――ビッグボスは、葉巻をくわえたまま、片目でオセロットを睨んだ。重い声が、テントの空気を震わせる。
「……子供が、か。続きを言え、オセロット」
オセロットは銃をホルスターに戻し、薄く笑った。
「ええ。問題はそこからです。アメリカ、ソ連、ヨーロッパ……各国がこの技術に目をつけました。特にシャゴホッド計画が、再び動き出したようです。核搭載の移動プラットフォーム。二足歩行の巨体兵器……トオルという少年が作ったものが、きっかけになった。ガンダムやザクの二足歩行技術、イルカ型や犬型の自律行動と防御フィールド……これらを軍事転用されたらどうなると思います?」
ビッグボスは葉巻をゆっくりと灰皿に押しつけ、目を細めた。声は低く、しかし重い。
「冷戦など、子供の遊びになる。核を背負った十八メートルの巨人が、歩いて国境を越える世界だ。XOFとの戦いどころじゃない。ヴェノムが今、アフガニスタンで戦っている最中だというのに……」
オセロットは頷き、指先でリボルバーのシリンダーを回した。
「その通りです。ヴェノム・スネークが率いるダイアモンド・ドッグズは、XOFとSkull Faceを相手に苦戦していますが、この新技術が軍事化されれば……世界の力関係が一気に崩れます。ミスリルに続いて、今度は『魔法の兵器』。ボス、私たちはどう動くべきでしょう?」
ビッグボスは立ち上がり、テントの入り口から暗い夜空を見上げた。葉巻の煙がゆっくりと上がる。
「……子供一人が、世界を変え始めている。オセロット、ヴェノムに伝えておけ。XOFとの戦いに集中しろと。同時に、このトオルという少年の動向も監視しろ。魔法が兵器になる前に……俺たちの『Outer Heaven』が先を行く必要がある」
オセロットは銃をホルスターに戻し、薄く笑った。
「ふふ……了解しました、ボス。八歳の少年が、冷戦を終わらせる鍵になるなんて……面白い時代になりましたね」
テントの外では、風が砂を巻き上げ、ダイアモンド・ドッグズの旗が静かに揺れていた。遠くで、ヴェノム・スネークが率いる部隊がXOFとの戦いを続けている。
二人の会話は、短く、重く、しかし世界の運命を予感させるものだった。
岩内では、トオルがガンダムとザクの足元で、エルフの子供たちと遊んでいる。イルカ型と犬型ゴーレムたちは、海と山で命を救い続けている。
だが、その優しさが、世界の闇にどんな影を落とすのか――まだ、誰も知らなかった。
人類史上最大の魔法使いの物語は、鋼の亡霊が蘇る夜の中で、静かに続いていく。