杖くんと七歳の魔法使い ~深淵から帰還した少年は、今日もみんなの笑顔を守る~ 作:redhot
岩内自衛隊基地の奥深く、特別に設けられた鍛冶場は、昼夜を問わず熱気に満ちていた。外は雪が降り積もり、霧が濃く立ち込める中、鍛冶場の炉だけが赤々と燃え、鉄槌の音が響き渡る。
通常の炉では、ミスリルは溶けない。融点が異常なまでに高く、現代の科学では再現不可能な金属。それを溶かすのは、トオルの創造魔法で生み出した「特性の炉」だけだった。
炉は直径二メートルを超える円形の窯。青白い魔力の炎が渦を巻き、内部の温度は数千度を超えるが、周囲にはほとんど熱が漏れない。トオルが掌を翳すだけで炎が踊り、ミスリルの塊を柔らかく、しかし溶かさずに鍛えられる状態に変える。
刀鍛冶の名人たちが、そこに集まっていた。
日本刀の伝統を継ぐ老練の鍛冶師たち。岩内近郊から、そして東京や京都から駆けつけた一流の職人たち。皆、最初は信じられないという顔でミスリルを見たが、一度トオルの炉で鍛え始めた瞬間、誰もが目を輝かせた。
「こいつは……神の金属だ」
一人の老鍛冶師が、槌を握りしめながら呟いた。
トオルは炉の前に立ち、杖くんを握って魔力を注ぎ続ける。八歳の少年の額に汗が浮かぶが、目は真剣そのもの。
「みんな、ゆっくりでいいよ。僕、ずっと魔力を保つから……」
名人たちは頷き、交互に槌を振るう。ミスリルの塊が、赤熱した状態で叩かれ、延ばされ、折り畳まれる。普通の鋼なら何百回も繰り返す折り込みが、ミスリルでは数十回で済む。金属の内部構造が、魔法の力で均一に整うからだ。
出来上がる刀は、どれもが伝説の域に達していた。
刃文は銀色の奔流のように流れ、切れ味は紙を切るどころか、空気すら裂く。柄と鞘はドラグライト鉱石で補強され、軽く、しかし折れない。自衛隊の剣術有段者たちが試し斬りをするたび、太い鉄柱が一刀両断にされる。
「これで……三十階の怪物も、怖くない」
煉獄杏寿郎三佐が、一振りの刀を手に取り、大きく笑った。
「うむ! トオル、名人諸君、よくやった! これでエルフの戦士たちと、もっと深く進めるぞ!」
胡蝶しのぶが優雅に微笑み、
「ふふ……ミスリルの刀ですって。トオルくんったら、なんて粋な贈り物ですの」
胡蝶カナエが穏やかに頷き、
「あらあら、刀鍛冶の皆さんも、目を輝かせてらっしゃるわね」
炭治郎が静かに刀を握り、
「僕も……これで、トオルくんを守れる」
トオルは炉の熱気に頰を赤らめながら、みんなの笑顔を見て微笑んだ。
「僕、みんなが傷つかないように……って思って。刀、喜んでくれると嬉しいよ」
杖くんが耳元で優しく囁いた。
『トオルちゃん……あなたの優しさが、刃に宿ってるわ。ミスリルの刀は、守るための剣よ』
鍛冶場の外では、雪が静かに降り積もっていた。ガンダムとザクが広場に立ち、イルカ型と犬型ゴーレムたちが海と山で命を救い、エルフの戦士たちが新しい刀を手に訓練を始める。
ミスリルの刀は、自衛隊の新たな象徴となった。
人類史上最大の魔法使いは、八歳の心で、守るための刃を、現実の奇跡に変え続けていた。
霧の港町は、鋼と魔法の守護に囲まれ、静かに未来へと歩み続けていた。