杖くんと七歳の魔法使い ~深淵から帰還した少年は、今日もみんなの笑顔を守る~   作:redhot

45 / 241
杖くんとミスリルの刃

岩内自衛隊基地の奥深く、特別に設けられた鍛冶場は、昼夜を問わず熱気に満ちていた。外は雪が降り積もり、霧が濃く立ち込める中、鍛冶場の炉だけが赤々と燃え、鉄槌の音が響き渡る。

通常の炉では、ミスリルは溶けない。融点が異常なまでに高く、現代の科学では再現不可能な金属。それを溶かすのは、トオルの創造魔法で生み出した「特性の炉」だけだった。

炉は直径二メートルを超える円形の窯。青白い魔力の炎が渦を巻き、内部の温度は数千度を超えるが、周囲にはほとんど熱が漏れない。トオルが掌を翳すだけで炎が踊り、ミスリルの塊を柔らかく、しかし溶かさずに鍛えられる状態に変える。

刀鍛冶の名人たちが、そこに集まっていた。

日本刀の伝統を継ぐ老練の鍛冶師たち。岩内近郊から、そして東京や京都から駆けつけた一流の職人たち。皆、最初は信じられないという顔でミスリルを見たが、一度トオルの炉で鍛え始めた瞬間、誰もが目を輝かせた。

「こいつは……神の金属だ」

一人の老鍛冶師が、槌を握りしめながら呟いた。

トオルは炉の前に立ち、杖くんを握って魔力を注ぎ続ける。八歳の少年の額に汗が浮かぶが、目は真剣そのもの。

「みんな、ゆっくりでいいよ。僕、ずっと魔力を保つから……」

名人たちは頷き、交互に槌を振るう。ミスリルの塊が、赤熱した状態で叩かれ、延ばされ、折り畳まれる。普通の鋼なら何百回も繰り返す折り込みが、ミスリルでは数十回で済む。金属の内部構造が、魔法の力で均一に整うからだ。

出来上がる刀は、どれもが伝説の域に達していた。

刃文は銀色の奔流のように流れ、切れ味は紙を切るどころか、空気すら裂く。柄と鞘はドラグライト鉱石で補強され、軽く、しかし折れない。自衛隊の剣術有段者たちが試し斬りをするたび、太い鉄柱が一刀両断にされる。

「これで……三十階の怪物も、怖くない」

煉獄杏寿郎三佐が、一振りの刀を手に取り、大きく笑った。

「うむ! トオル、名人諸君、よくやった! これでエルフの戦士たちと、もっと深く進めるぞ!」

胡蝶しのぶが優雅に微笑み、

「ふふ……ミスリルの刀ですって。トオルくんったら、なんて粋な贈り物ですの」

胡蝶カナエが穏やかに頷き、

「あらあら、刀鍛冶の皆さんも、目を輝かせてらっしゃるわね」

炭治郎が静かに刀を握り、

「僕も……これで、トオルくんを守れる」

トオルは炉の熱気に頰を赤らめながら、みんなの笑顔を見て微笑んだ。

「僕、みんなが傷つかないように……って思って。刀、喜んでくれると嬉しいよ」

杖くんが耳元で優しく囁いた。

『トオルちゃん……あなたの優しさが、刃に宿ってるわ。ミスリルの刀は、守るための剣よ』

鍛冶場の外では、雪が静かに降り積もっていた。ガンダムとザクが広場に立ち、イルカ型と犬型ゴーレムたちが海と山で命を救い、エルフの戦士たちが新しい刀を手に訓練を始める。

ミスリルの刀は、自衛隊の新たな象徴となった。

人類史上最大の魔法使いは、八歳の心で、守るための刃を、現実の奇跡に変え続けていた。

霧の港町は、鋼と魔法の守護に囲まれ、静かに未来へと歩み続けていた。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。