杖くんと七歳の魔法使い ~深淵から帰還した少年は、今日もみんなの笑顔を守る~   作:redhot

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杖くんと世界の渇望

岩内自衛隊基地の司令室は、連日のように国際電話と電報で埋め尽くされていた。窓の外では雪が静かに降り積もり、ガンダムとザクの巨体が白く染まる中、煉獄杏寿郎三佐は机の上の書類の山を睨みつけていた。

「うむ……またアメリカのGMからだ。ミスリルとマカライト鉱石を研究したいと。自動車のボディに使えば、重量を十分の一にしながら強度を五十倍にできるらしい。金ならいくらでも出す。本社を日本に移してもいい、とまで」

隣の胡蝶しのぶ一尉が、蝶のような微笑みを浮かべながら報告書をめくった。

「ふふ、ヨーロッパのエアバスも同じですわ。ドラグライト鉱石で航空機の翼を作りたいそうです。ランポスやギアノスの革と鱗は、既存の素材を遥かに超えている……空想上の軽量装甲が、現実に作れるかもしれない、と」

胡蝶カナエ二尉が穏やかに頷き、

「あらあら、兵器産業も同じね。軍隊ガニの甲羅やダイミョウザザミの素材で、戦車の装甲を薄く強くしたいって。プロテクターや迷彩服一つだけでも、彼らの技術の何倍も上を行ってるんですもの」

炭治郎が静かに書類をまとめながら、

「医療界も大変です。血虫、ドクターアロエ、クスリバチ……研究用だけでも輸入できないかと、嘆願が殺到しています。難病治療や輸血の革命になると」

世界中の企業が、日本政府に直接、または大使館を通じて要求をぶつけていた。

アメリカのフォード、ボーイング。ドイツのメルセデス、シーメンス。フランスのエアバス、イタリアのフィアット。ソ連の軍需企業、中国の新興企業……。金銭に糸目はつけない。むしろ「日本に本社を移す」「工場を丸ごと建設する」とまで言い出した。トオルが開発した装備の数々――ミスリル製の刀や盾、プロテクター、ガンダムやザクの存在――が、彼らの野心に火を点けたのだ。

「同じ物を、いやそれ以上の物を作りたい」

「空想上の物が、本当に現実に現れるかもしれない」

そんな声が、各国首脳の耳にも届いていた。

日本政府は、極秘会議を重ねた。中曽根総理は、官房長官に苦い顔で言った。

「トオルくんは、ただ『みんなの為に』と採ってきているだけだ。売る気もない。だが、世界がこれほど欲しがるとは……」

トオルは基地の休憩室で、その話を聞かされていた。ガンダムとザクの足元で、エルフの子供たちと遊んでいた少年は、杖くんをぎゅっと抱きしめ、少し困った顔で微笑んだ。

「みんな、そんなに困ってるの? だったら……もっと採ってくるよ。ミスリルも、軍隊ガニも、血虫も……みんなが、困らないように」

煉獄が大声で笑った。

「うむ! トオル、優しすぎるぞ!」

しのぶが優雅に微笑み、

「ふふ……世界中があなたに頭を下げてるんですのよ」

カナエが穏やかに頷き、

「あらあら、あなたの心が、世界を変えてるわ」

炭治郎が静かに、

「トオルくん……ありがとう」

杖くんが耳元で優しく囁いた。

『トオルちゃん……あなたは、もう世界の中心にいる。でも、あなたの優しさが変わらない限り……大丈夫よ』

基地の外では、雪が静かに降り続いていた。ガンダムとザクが白く染まり、イルカ型と犬型ゴーレムたちが海と山で命を救い続ける。

世界中の企業と首脳たちは、八歳の少年の心にすがるしかなかった。

人類史上最大の魔法使いは、ただ笑顔で、深淵の宝物を「みんなの為に」と持ち帰り続けていた。

霧の港町は、世界の渇望に包まれながらも、トオルの優しさに守られ、静かに輝き続けていた。

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